トミントールの種類と味わい
トミントール 10年
トミントールの10年もの。
フラッグシップは14年、そのワンランク下の若い原酒が使われているボトルとなります。
香りはアルコールのエステリーさがあり、ブドウやバナナ、フローラル洗練されたフルーティさも感じます。
味わいはバナナ、カラメル、クローブ、などを感じますが、これらを水で溶いたような薄味で、飲み終わった後も余韻は短く実にスッキリ飲めるボトルです。
強炭酸のハイボールなどでサラっといただくのが通。
トミントール 14年 アンチルフィルタード
こちらはトミントールの14年もの。フラッグシップボトルといって良いでしょう。
10年に引き続き軽さも感じられながらその風味は確実に深まっています。
香りは青りんご、洋梨、グレープフルーツの柑橘系、キャラメル、ライム、若干の牧草。
味わいは香り同様、青りんごや洋梨の爽やかなフルーティさとキャメルの甘、クリーミー、クロワッサンの香ばしさ、後半にかけてシナモンスパイス、木酢など。
10年に比べると余韻も大分長くなり、ストレートでゆっくりと楽しめ内容になっています。
トミントール 16年
こちらは16年もののトミントール。
熟成にはバーボン樽とシェリー樽が使われており、10年、14年と比較するとよりシェリー酒の影響がより現れています。
香りは上質で明確に構成されたアロマ、フローラルでフルーティでありながら、美しく一貫して強烈なスパイス、若干アルコールの刺激が感じられます。
味わいも青リンゴ系の酸味とシェリー由来のドライプラムやカシスなどがしっかりと感じられバランス良く仕上がっています。
もちろんバーボン樽由来のバニラ感やクリーミーさも健在です。
アルコール度数も46%と飲み答えも充分。
充実したデザートモルトといった印象です。
トミントール ピーテッド(ピーティータン)
ピートを炊いた麦芽を使ってつくられたトミントール。
トミントールは通常ノンピートの麦芽が使われますが、敢えてピーテッドの麦芽を使い、違った風味を前面に押し出した変化球的なボトルです。
香りらフローラルでライトピート、ややスパイシー、煙がさった後はバニラ、フレッシュフルーツなどが訪れます。
味わいは燻したコンポート、洋梨の缶詰、ほんの少しだけオイリー、ヘザー、バニラ、シリアル、バナナ、木酢。
ピーテッドの麦芽を使っただけでこんなに違うものかと、比較を楽しめるボトル。
トミントールらしからぬ、やや重めな印象が感じられる面白い1本です。
トミントール 12年 オロロソシェリーフィニッシュ
こちらはバーボン樽で熟成したトミントールをオロロソシェリーカスクにてフィニッシュしたボトル。
現在は終売していると思います。後継品はSEIRIDHになるのかな?
香りは柔らかく、熟した洋ナシとチェリーなどのフルーティさ、その後にキャラメルやバタークリームなどの甘味、奥には牧草、クローブなども感じます。
口に含むと柔らかなボディでチェリーや洋梨のフルーツタルト、カシスジュース、ビターチョコ、レーズン、ベイクドオレンジ。
後半はシリアルなどの香ばしさと、ウッドスパイスの程よい長さの余韻。
若さもありますが、複雑な風味に仕上がっているバランスのとれたボトルです。
トミントール 25年
こちらは25年もののトミントール。
ハイエンドのラインナップとなります。
長期熟成からくる深い風味と長い余韻を楽しめる充実した内容のボトルです。
香りはフローラルでやわらか。
熟した洋梨、枝付きレーズン、プラム、白桃、トーストしたパン、蜂蜜。
口に含むとサラリとした口当たりで味わいはアプリコットの強い甘み、洋梨タルト、ハニートースト、奥にミント系のハーブ、ウッドスパイス、後半にかけてタンニンの渋みも現れ、長い余韻へと続きます。
トミントールらしい爽やかさや軽やかさを残しつつ、グッと風味を濃縮させた感のある素晴らしき1本です。
おすすめの飲み方・飲み進め方
スペイサイドのいぶし銀。
やわらかい口当たりとすっきり軽やか、少しの草っぽさが特徴です。
10年はロースト香と清涼感があり少し渋い。なんかメスカルみたい。個人的にはハイボールにするとハーブっぽさがあって好きです。
10年が微妙って感じた方にはぜひ14年を飲んでもらいたいです。少量の加水が好印象。そこから気に入れば徐々に長期熟成タイプを飲んでみましょう。
トミントールで抑えておきたいのが、特徴的なオールドボトル「トミントール・グレンリベット」。
今はデザインが一新されトール型となりましたが、1980年代後半のトミントールは化粧品容器を大きくしたような洒落た形をしており、一見ウイスキーのボトルには見えないような外観をしていました。花瓶としても使えそうな面白いビジュアルを成しています。
味わいも素朴でまろやか、ちょっとパフューミー。どこかで見かけたらぜひ飲んでみてください。
ボトラーズでもちょいちょいリリースされており、60年代、70年代のトミントールもまだ飲めます。ウイスキーエージェンシーやエクスクルーシヴ・モルツには40年オーバーの長熟品もありました。
トミントールの発祥と歴史
どこで作られているのか?
トミントールとはゲール語で「納屋の形をした丘」という意味を持っており、蒸溜所が建てられているトミントール村が由来しています。
蒸溜所はスペイ川の支流、エイボン川の山深い谷間に建てられています。
ちなみにエイボン川の支流にリベット川があり、ザ・グレンリベット蒸溜所はその谷間にあります。
蒸溜所があるトミントール村はハイランドでもっとも標高が高く(約350メートル) 、冬季になると積雪で交通が遮断され、陸の孤島になることも珍しくありません。ただし蒸溜所は村から9キロほど下った所にあるため、標高ではブレイズ・オブ・グレンリベットやダルウィニーよりも低い場所にあります。
トミントールの歴史
創業は1964年と新しく、比較的、近代的な設備を持っています。
当時のウイスキー需要の急増に対応するため、グラスゴーのW&S ストロング社とハヤンド・マクラウド社が合併して建てられました。
1971年にはスペイサイドのフェッターケアン蒸溜所を買収しています。
1973年にホワイト&マッカイグループがトミントールを買収。
同社のブレンデッドスウイスキーや同社の代表的ブランドな「ホワイト&マッカイ」のキーモルトとして使われてきました。
長きに渡り同社が運営してきましたが2000年にロンドンのブレンダー、アンガス・ダンディ社が買収して、現在は同社の傘下となっています(アンガス・ダンディ社はグレンカダムも所有しています)。
2005年には新たにピーテッドタイプのボトル「オールドバランデュラン」という新ブランドをリリースしました。
以前は化粧品のような風変わりな形をしたボトルを使用していましたが現在はトール瓶のものが使われています。
規格外のボトル!
2009年に地元のウイスキーショップの発案でトミントールは規格外となる容量105.3ℓのボトルを作り、それに14年もののトミントールを入れ発表しました。
通常ボトル150本分となるこの巨大ボトルはギネスブックにも登録され「小さな村(トミントール村)が世界一大きなボトルを作った」として世界的ニュースとなりました。
特注でつくられた巨大なラベルは手作業で張られ、規格外の大きさのコルクは衝撃を緩和するため打楽器用の大きなマレットを使用して埋め込まれたそうです。
この巨大ボトルは現在、トミントール村の広場にある時計台に飾られています。
トミントールの製法
トミントールに使われる麦芽はノンピートのもののみ。
現在は主にオプティック種が使われています。
仕込みはワンバッチ116tで、週に15回の仕込みが行われます。
マッシュタンはセミロイター式のものを使用。
ウォッシュバックはステンレス製で合計6基。
1基あたり約6万ℓの麦汁を投入し、そこにマウリ社製のイースト菌180㎏を加え発酵させています。
発酵時間 は60時間で、アルコール度数約9%のモロミがつくられます。
ポットスチルはスワンネックのボール型で、1974年に2基から4基に増設されました。
仕込水は蒸溜所の背後にあるバランテュランの山に湧き出る泉水を利用しています。
ちなみに、2005年にリリースされた新ブランドはこの水源の名前を冠したブランドもので、フェノール値88ppmのヘビリーピーテッドの麦芽を使った、かなりスモーキーな味わいとなっています。
熟成に使用されるのはアメリカンホワイトオークのバーボン樽がメインで、その他にオロロソシェリーやポートワイン樽も使用されます。
敷地内には6つの熟成庫があり、最大116,000個の樽を収容できます。
年間にして330万ℓのウイスキーが生産されています。
ざっくり概要と味の特徴
トミントールはスコットランドのスペイサイド地方でつくられるシングルモルトウイスキー。
日本ではかなりマイナーなブランドですが、1970年代にホワイト&マッカイ社がオーナーとなり、ホワイトマッカイやフィンドレイター、ハロッズなどのキーモルトとして使用されていました。現在のオーナーはアンガス・ダンディ社となり運営が行われています。
すっきりとした味わいが多いスペイサイドモルトの中でもひときわ軽やかなウイスキーで、 食前酒にもよき。後味は結構ビターです。