竹鶴の概要
ジャパニーズウイスキーの父と呼ばれ、ニッカウヰスキーの創業者である竹鶴政孝の名を冠している「竹鶴」。
初めてリリースされたのは2000年で、竹鶴政孝が亡くなった後に開発された商品となります。
ニッカウヰスキーで製造され、アサヒビールが販売しています。
「竹鶴」はヴァッテッドモルトウイスキーという珍しい製法をとっています。(但し竹鶴35年を除く)
ヴァッテッドモルト(vatted-malt)とは複数の蒸溜所で作られたモルト原酒同士のみを掛け合わせて作られたウイスキーのこと。
つまり原材料はモルト100%ということです。
ブレンデッドウイスキーはトウモロコシなどの穀類を原材料とする「グレーンウイスキー」を混ぜ合わせるのですが、竹鶴はグレーンを使っていないんですね。
ブレンデッドウイスキーのような柔らかさを追求しつつも、リッチなモルト100%のウイスキーを…というコンセプトのもと作られたのがこの竹鶴シリーズでした。
ニッカウヰスキーではこのモルト100%のヴァッテッドモルトウイスキーを「PURE MALT(ピュアモルト)」という独自の表現で呼んでおり、竹鶴、竹鶴17年、竹鶴21年には漏れ無くPURE MALTの文字が記されています。
なお、2020年3月末にラベルに熟成年数が入った高級な「17年」「21年」「25年」の3種類の販売を終了することを発表しました。
マッサンブームから約5年。まだまだ原酒が足りないための苦肉の策でしょう。
年数の入っていない「竹鶴 ピュアモルト」は同時期にリニューアルして販売を続けるようです。
竹鶴の発祥と製造場所の紹介
上記にも書きましたが、竹鶴はヴァッテッドモルトウイスキーですので、複数の蒸溜所で作られたモルト原酒を掛け合わせて作られています。
ではどこの蒸溜所か。
ニッカウヰスキーといえば…ウイスキーファンの皆さんはすぐわかることでしょう。
ご察しの通り余市蒸溜所と宮城峡蒸溜所です。
この2箇所蒸溜所で作られたモルト原酒をヴァッティングし、竹鶴は作られています。
石炭の直火焼きの熱で初溜を行い、力強い素材の味わいを持つ「余市」。
軽やかかつ華やかな香りと味わいの「宮城峡」。
単式蒸溜器を用いて作られたモルト原酒を絶妙なバランスで配合し、竹鶴の味わいが決められています。
多くのブレンデッドウイスキーは複数の蒸溜所で作られたモルト原酒とグレーン原酒とがブレンドされています。グレーン原酒はモルト原酒の個性を生かしつつ柔らかな飲みやすさをウイスキーに与えること。
ニッカウヰスキーではグレーンを用いず、ブレンデッドウイスキーのような柔らかさを生み出せないかと様々な試行錯誤を繰り返しました。
そして生まれたのが『ピュアモルト』という独自の表現をもつ「竹鶴」でした。
竹鶴は新しいジャンルのジャパニーズモルトウイスキーだったのです。
竹鶴の歴史
ニッカウヰスキーの代表的な商品である「ブラックニッカ クリアブレンド」が販売されたのが1997年。
これが大ヒットした後、ニッカウヰスキーのマーケティング部門から「ブレンデッドウイスキーのような飲みやすいモルトウイスキーを作ってみては?」という声が上がり、それをコンセプトに作られたのが竹鶴でした。
時は2000年。最初にリリースされたのが余市・宮城峡蒸溜所で作られた酒齢12年以上のモルト原酒を掛け合わせた「竹鶴12年モルト」でした。
当時からニッカウヰスキー最大のライバル企業だったサントリーからリリースされていた山崎が約6000円だったのに対し、竹鶴12年の販売価格は660ml入りでなんと2450円!という破格のお値段でした。
そもそも12年もののモルトウイスキーが3千円以下で買えること自体が奇跡のようなもの。
当時にタイムスリップして買い付けしたくなるような話です。
また「商品を謳わず歴史を謳う」という営業戦略も成功しました。
あくまで商品名となった創業者竹鶴政孝を前面に出す「歴史を味わっていただく」という姿勢で、竹鶴は大人気の商品となりました。
現在ノンエイジの竹鶴のラベルにはウイスキーグラスを持った竹鶴政孝の写真が掲載されています。
このボトルを眺めながら飲むと、竹鶴氏と向かい合って飲んでいるような気持ちになり、なんとも嬉しさが込み上げます。
2001年には「竹鶴17年ピュアモルト」がリリースされこの味わい、そして価格も話題を呼びます。
同年「竹鶴21年」、「竹鶴25年」が立て続けにリリースされ世界中のモルトファンから注目を集めます。
しかし売れ行きに反して原酒が不足してしまい、2014年の2月に「竹鶴12年」が終売となり、同年3月から現在のスタンダードボトルとなるノンエイジの「竹鶴」がリリースされ現在に至ります。
2016年5月26日〜27日にかけて開催された第42回先進国首脳会議別名「伊勢志摩サミット」では、「竹鶴21年ピュアモルト」と「竹鶴25年ピュアモルト」が首脳陣に提供され、大きな話題を呼びました。
朝の連続ドラマ「マッサン」の影響もありウイスキーブームとなった今、原酒の補充が待たれています。
なお、現在も竹鶴17年、21年、25年は数量限定で販売されています。
竹鶴の製法(作り方)
竹鶴は35年を除き、全て余市・宮城峡蒸溜所で作られたモルト原酒のみを掛け合わせて作られています。
ヴァッティングは現在のチーフブレンダーである佐久間正の監修により行われます。
掛け合わせの比率は公表されていませんが、宮城峡の原酒がベースとなり余市のシェリー樽を香りづけに使用しているとの見解が多いようです。
確かに飲んでみると余市の力強いスモーキーさ、ピーティさは影を潜め、どちらかと言えば宮城峡に感じられる果実感、華やかさが前に出ています。
しかしながら余韻の僅かなピートとコクの深さに縁の下で支える余市の重要性を感じます。
ピーティでスモーキー、キャンベルタウンを意識した力強い味わいの余市。
軽やかで華やか、万人受けするスペイサイド風の宮城峡。
タイプの異なる2つの原酒を絶妙なバランスで掛け合わせることにより、飲みやすさと複雑さを同時に楽しめる竹鶴が誕生するのです。
「竹鶴」のラインナップ
竹鶴ピュアモルト
こちらは現在スタンダードとなるボトル。
年数表記のないノンエイジなので、ストレートで飲むとアルコールの刺激がやや感じられます。
しかしその後、宮城峡由来の洋ナシ、パッションフルーツ、メロン、青リンゴの甘やかさが訪れ、中間にレーズン、プラムを感じることができます。
余韻は余市由来のうっすらとしたピート感。
余韻は控えめで長くはありませんがオークの香りも楽しめ、値段も3000円程度とコストパフォーマンスの高い1本です。
2014年、2016年にISCにて金賞に輝いたボトル。
竹鶴12年ピュアモルト
2000年にリリースされた、発売当初のスタンダードボトルです。
2014年に2月に終売となってしまったため現在では希少価値が増し、ネット上などで高値で取引されるボトルとなってしまいました。
現在のノンエイジと比較すると、やはり濃縮された味がします。
メロン、リンゴ、桃、ハチミツのトップノートに、中間は麦芽ビスケット、続いてチョコレートのビター、かなりストーリーを感じます。
若干の酸味を挟み、余韻は深めのオーク。
ノンエイジよりもボディが厚く、全体的に深みがあることが感じ取れます。ここは12年以上の原酒を使っているだけはありますね。
バーなどで見かけたら是非飲んでおきたいボトルです。
2008年、2014年にはISC(インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ)にて金賞に輝いています。
竹鶴17年ピュアモルト
こちらは酒齢17年以上の原酒同士を掛け合わせたボトル。
2020年3月で終売が決定しています。
まず香りはバニラ、そしてオーク、柔らかく松の香り。そしてイチゴジャム。
口に含むとハチミツ、バニラが広がります。乾燥した麦芽の味もしっかり捉えられピートも感じます。
全体的に宮城峡のシェリー樽熟成由来の甘みが支配しますが、僅かな酸味があり後半の味わいを引き締めてくれます。
これを昔はハイボールで気軽に飲んでいたと思うと信じられません。
現状のボトルは発売当初のものに比べて味気なくなったと評す人もいますが、十分リッチな味わいのボトルだと思います。
2008年にISC(インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ)金賞、2015年、2018年にはWWA(ワールド・ウイスキー・アワード)にも選ばれた世界的にも評価の高いボトルです。
竹鶴21年ピュアモルト
熟成年数21年の原酒同士を掛け合わせたボトル。
21年という長期熟成原酒からなる重厚感を味わえる1本。
当時はお歳暮や贈り物などに非常に重宝されたボトルです。
残念ながら2020年3月で終売が決定しています。
宮城峡からの香りは濃厚さを極め、ピーチやメロン、いちぢく、ネクターのようなとろみ。
味わいはバニラ、キャラメル、ウエハース、チョコチップマフィンのような甘みと香り。
余韻は奥行きのあるオーク、バニラ、乾燥したイチゴ。
非常に充足感ある飲み心地で、一つの完成形を感じられる、味わい深いボトルです。
2007年、2009年、2010年、2011年にWWAに選ばれ、ISCでも金賞の常連となる評価の高いボトルでもあります。
竹鶴25年ピュアモルト
25年という超熟の原酒を掛け合わせて出来た珠玉の1本。
香り・味・ボディの厚さ・余韻、どれをとっても円熟味を帯びており、これぞ熟成の極み!と思えるボトルです。
味わいはピーチネクター、生キャラメル、完熟マンゴー、夕張メロン、ブラウンシュガーの甘み。
口にすると非常にマイルドでミルクチョコレートのようなまろやかさが放射状に広がります。
但し甘みが引くに連れビターが顔を出し、プラムや甘さを控えたイチゴジャムが訪れ、余韻はほろ苦く長い。香木のようなオリエンタルな返りもあります。
スイートとフルーティ、そしてビターがバランス良く訪れるジャパニーズモルト最高峰の味わいです。
2013年にISC銀賞、2015年にはISC金賞を受賞しています。
残念ながら2020年3月で終売が決定しています。
竹鶴 35年
こちらは2007年に1200本という少量限定でリリースされた希少価値の高いボトル。
前述してきましたが、竹鶴35年のみこちらブレンデッドウイスキーとなり、余市・宮城峡で作られたモルト原酒の他に西宮蒸溜所で作られたカフェ・グレーン原酒が含まれています。
モルトウイスキーとグレーンウイスキーの比率はほぼ1:1の割合という大胆なブレンディング!
ピュアモルトではありませんが、他のラインナップとは異なるタイプの次元の超え方をしてきます。
香りは甘く複雑。煮詰めたアプリコット、イチゴジャム、ココアを先頭にオレンジリキュール、シナモン、アニスのようなスパイスも感じます。
味わいは一瞬アイリッシュを思わせるトロピカルフレーバー。完熟マンゴー、熟した白桃、ブランデーをかけた夕張メロンのような若干のエステリーをともなう強い甘み。
中間にラズベリー、トロピカルフルーツ、塩キャラメル、チョコビスケット、ラスクを挟み余韻は新調した家具のような香り(オーク)が中くらいに続きます。
加水するとややグレープフルーツやパイナップルのような酸、ハーバルなミントが顔を出します。
贅沢この上ない味わいのボトルです。
竹鶴のおすすめの飲み方
竹鶴は宮城峡のシェリー甘さ、スパイシーさ、余市のボディの重さが渾然一体となり、「甘・酸・充」を実現しているウイスキー。
粘性があり、マイルドな口当たり。プラムのような核果、ブラックベリーやラズベリーのような赤いベリー系のイメージがあります。
飲み方はストレート、ロックはもちろん、伸びが良いので水割り、ハーフロックとどれでも美味しく飲めます。
ソーダで割ると華やかさとピート香が開き、やめられないとまらないハイボールが出来上がります。
名だたるスコッチブランドを抑え、世界にその存在感を見せつけている竹鶴ですが、オールドボトルと現行品で味の方向性に差があります。
どの年代も素晴らしい出来というのは受賞歴を見ても明らかですが、バーで飲み比べするのも面白いと思います。
ちなみに竹鶴35年は竹鶴12年と共に発表され、当時50000円と高価でしたが1ヵ月ちょっとで売り切れたそうです。
もう見ることはほとんどなくなり、オンラインショップでもかなり高額(定価の20倍近く)で販売されています。