春先から初夏にかけて『いちごウイスキー』が流行っていますね。
以前からこの手の漬け込み酒はたくさん存在しており、ニッカウヰスキーも2014年あたりからレシピを公開しました。
そして2016年、TwitterやInstagramで突如のブレイク!
見栄えがよく(インスタ映えする)、男女問わず好まれる味だったので主婦や若い層を中心にバズったようです。
これがいわゆるフォトジェニックってやつですか、そうですか。
これはウイスキー業界も考えさせられますね。ウイスキー業界はまだまだSNSをうまく活用して、若年層、女性層にアピールする戦略は手薄です。
今後、必ず必要になってくるマーケティング戦略ですので、僕もこのウイスキー専門メディアBARRELで協力できるよう頑張ります。
ちょっと脱線しましたが、今回BARRELではこの『いちごウイスキー』を取り上げます。
『いちごウイスキー』は流行っていても、“いちごウイスキーに使うウイスキー銘柄”に対しては誰も言及していないようなので、今回はどんな銘柄が『いちごウイスキー』に合うのか確かめていきたいと思います。
他にも色々な果実酒・漬け込み酒の記事も書いてますので気になる方はぜひどうぞ。
いちごウイスキーの作り方・基本レシピ
ブラックニッカのページには色々な漬け込み酒が掲載されています。
2018年以降はいちごだけでなくりんごやみかん、プチトマトなんかも漬けています。
クックパッドや個人ブログでもたくさんレシピは紹介されていますね。
みかんやリンゴ、パイナップルなど果物の種類で糖度が違うため、若干分量に差はありますが、おおよそウイスキー:砂糖を3:1の割合で入れるイメージです。
ウイスキー:150ml
いちご:120g
砂糖(もしくは氷砂糖):50g
お好みでレモンスライス:一枚
保存瓶は300mlくらいのガラスボトルを使います。
- いちごを洗って水気を切る。ヘタ部分をとって、ウイスキーに味が染みやすいよう半分にカット。個人的には4分の1くらいにしてもいいと思います。
- 瓶やボトルにいちご(お好みでレモンスライス)を入れる。砂糖を入れて、ウイスキーを注ぐ。最初は砂糖が下に沈みますが、問題ないです。ゆっくり溶けます。
- 直射日光の当たらない冷暗所で保管(夏は冷蔵庫)。4日目くらいから飲めます。
これ、レシピには4日後からは飲めると書いてありますが、正直4日では漬け込み時間が足りません。
漬け込み酒は1カ月以上寝かしてからが本番です。
いざ、いちごウイスキーに合う銘柄探し!
まず『いちごウイスキー』を作る材料の準備からです。
今回はおすすめの銘柄を見つけるということなので、いちごの量よりウイスキーの量が必要ですね。
ウイスキーどどーん!
いちごは1パック~。
ウイスキーは200種類程度用意してみましたが、当然すべては使えません。
代表的な銘柄、個性の強い銘柄を試してみたいと思います。
瓶は100均で買ってきましたが、これを作り終わった後は一体何に使えばいいんだろう…。
とりあえず、一粒のいちごに対し、使うウイスキーはシングル(30ml)で、お砂糖は15g程度を使います。
いちごを丁寧に半分ずつにカットし、
色々な銘柄のウイスキーに浸していきます。瓶が足りない…。
そして20日の時が経過します…
ウイスキー銘柄ごとにイチゴウイスキーを紹介
さぁ!実飲です。
本来であれば1カ月以上は待つべきでしょうが、今回はどんな銘柄が合いそうか確かめるためなので20日程度で済ませました。
そしてドシドシ飲んでいきます。
ピート系スモークいちごウイスキー
あまり試したことがない方も多いのではないでしょうか?
ピートの効いたウイスキーでつくる『スモーキーないちごウイスキー』や如何に。
今回はアイラモルトを代表してフェノール値の高い方々をお呼びしました。
ラフロイグ選手とアードベッグ選手。
他にもアイランズモルトからは、タリスカー選手やレダイグ選手などピーティーな方々ですね。
お味のほうはというと、はっきり言って5日目くらいまでは吐き気がするほどまずいです(笑)
ラフロイグは電子たばこに使うリキッドを直に飲んだような味がします。
薬品のような苦み、ペンキのような甘い香り、飲み口ドッロドロ。
アードベッグはいちごの炭火焼きといった感じでしょうか。
ハイボールにするとこれがまた更にキツイ。幼き頃に駄菓子屋で飲んだ粉末のソーダジュースに墨汁を入れたような味がします。
ですが、20日目にはまったく違ったきらめきを見せます。
スモーキーな感覚は薄れ、甘みが一気に増し、ややビターなイチゴジャムに変化します。
特にアードベッグの甘さの増し方は半端じゃないですね。
オクトモア、マクリムーアも元々甘い麦芽の後味を感じさせるウイスキーなので、月日が経つほどピーティーさが緩和され、飲みやすくなりました。
(レダイグのだし汁感、アードモアの土っぽさは少し微妙でした)
スモーキーなウイスキーは馴染むまでがキツイですが、決して漬け込み酒に向いてないわけではないです。
このほろ苦さ、クセになる人はいるでしょう。
オイリーで軽やかなアイリッシュいちごウイスキー
続いて日本ではあまり話題に上がらないアイリッシュウイスキー。
オイリーと言われる油っぽいフレーバーと穏やかな酒質が特徴的です。
今回はタラモア・デュー選手、ブッシュミルズ選手、グリーンスポット選手などにお越しいただきました。
お味のほうは、うーん、軽い。
そして予想通りオイリーですね。
香りには青りんごのようなハーブのような、少し青臭さが加わります。
とてもフレッシュで良い香りですが、味に関してはちょっと物足りない感じもします。
長期間漬け込むほど個性はなくなっていき、いちごリキュールになります。
ハイボールはいちごとユーカリのような香りが楽しめ美味しいです。
しかし値段の割に無難すぎる気もしますね。
ライターズティアーズ(WRITER’S TEARS)、ティーリング、レッドブレストあたりは美味しかったです。
特にレッドブレストは15年ものを使ったのでボディの厚みが感じられてよかったですね。
アイリッシュウイスキーを使う場合は長熟でトロピカルを感じるものを使うのが面白いかもしれません。贅沢ではありますが(笑)
樽感タップリバーボンいちごウイスキー
お次に、アメリカンウイスキーでいちごを漬けたらどんなもんでしょうということで、エライジャクレイグ、ノブクリーク、ブレットバーボン、ワイルドターキーなどバーボンを代表する各選手にご協力いただきました。
バーボンは内側を焦がした新樽で熟成させるので、バニラやメープルシロップのようなフレーバーを持つ特徴があります。
今回用意したウイスキーがかなりボディが分厚いので、砂糖入れたら濃すぎるかなぁとも思っています。
さて実飲…。
うん、木だ。
むせかえるような樽の香り。
日数が経過すると香りはまろやかになりますが、木材の味はあまり抜けません。
木樽から引き出されたバニラやカラメルの風味、力強いコクを感じますが、タンニン分が強いのでしょうか。
糖度の高いいちごと混ざると少し渋みや苦みが出ます。
エライジャクレイグやオールドグランダッドあたりはこのタンニンや焦げた木材のニュアンスが強く出て、味が浮いちゃってます。いちごには合わない。
これはもっとボディが軽いジムビームやフォアローゼズで作ったほうが良かったような気がします。
バーボンを使用する場合はアルコール度数が40~46度くらいのもので、比較的樽感がないものが良いかもしれません。
大本命華やかシェリーないちごウイスキー
お次は大本命のシェリー樽を用いたスペイサイドのモルトですね。
マッカラン選手はもちろん、グレンドロナック選手やロングモーン選手、アベラワー選手などが参戦です。
上品でフルーティー、華やかな香りをまとうこのウイスキーラインナップ、当然フルーツに合わないわけがない。
金額もブラックニッカの数倍しているんだ、うまくないわけがない!
やっぱうまーい!
うほー。やはり美味しいですね。
4日目くらいから既に美味しいです。
別に寝かせなくてもこんなに美味しいんだから、と思っていましたが、20日目に飲んで驚きました。
滑らかにスルスルと喉を通過し、食道と胃がジワリと暖まる、透明感のあるイチゴジャム!
トップノート(最初の香り)はイチゴのビニールハウスの中にいるようです。その後様々な花や蜜のような香りが現れ複雑なうねりを感じますね。
飲み口も滑らかで幾らでも飲めちゃいます。
ハイボールももちろん美味しいですが、飲める方はストレートかロックで楽しむことをおすすめします。
使っているウイスキーの種類が違うので当たり前なのですが、一般的に使われるブラックニッカとは一線を画しました。
良いところを出すとキリがないほど全部違うのですが、やはり香りと飲みごたえですね。
マッカランのいちごウイスキーを飲んだ後にブラックニッカのいちごウイスキーを飲むとなんだか人口的な味がします。
マッカランはいちごを引き立て、超絶フルーティーなジャムを飲んでいるような感覚でした。
いちごウイスキーのおすすめ銘柄と気づき
というわけでおすすめの銘柄と気づいた点をまとめると
①シェリー樽スペイサイドモルトは間違いない
シェリー樽を使った華やかなウイスキーは万能選手といってよいでしょう。
100%シェリー樽とはいいません、カスクフィニッシュでもシェリー樽を用いていて、甘みが強く出ているものを選ぶのが良いと思います。多少サルファリー(硫黄)でも大丈夫!
グレンドロナック、グレンファークラス、グレンリベット(ナデューラオロロソ)、宮城峡などは間違いなく美味しくなると思います。
いちごをより引き立て、何倍にも美味しくする効果を秘めていました。
②アイリッシュウイスキーは無難
アイリッシュウイスキーも良かったです。
試してはいませんがカナディアンウイスキーもいけるでしょう。
アイリッシュは引き立てるというよりも邪魔をしないといった印象でしょうか。
前述したライターズティアーズは美味しかったですよ。
③玄人はカスクストレングスという選択
これは月日が経過して思ったのですが、ウイスキーを飲みなれている方はアルコール度数の高いカスクストレングスのものを選んだほうが良いと思います。
アベラワーアブーナ(約60度)を使ったいちごウイスキーはこってりとしたコクを感じ、「ウイスキーを飲んでいる」という感覚をより楽しめました。
40度程度のウイスキーはどうしても”いちごリキュール”になるので、あまり飲みなれない方、甘いお酒が好きな方向けです。
④バーボンはあまりおすすめしません
軽めのバーボンを用意しなかったのが仇になりましたが、樽香が強すぎると失敗します。
フォアローゼズとか、ちょっと試してみたかったですね。
⑤アイラ系、スモーキー系は変化の時を待て
これはもっと数を試さないと解明できそうにありませんが、一番面白いと思います。
ラフロイグは月日が経過してアーモンドの香りを放つようになりましたし、アードベッグはマンゴーのような甘みを感じさせました。
そのウイスキーが元来秘めている旨みの根幹みたいなものがあらわになります。
スモーキーな膜が年月により取り払われ、内包していた核のようなものが姿を現します。
場合によってはみなさんのお口に合わないものも出てきそうなので、胸を張っておすすめはできませんけど、変化を楽しむ意味ではアリですね。
マクリムーアは文句なく美味しいです。
アイランズウイスキーはアイラほどのピート香がないので、失敗しにくいでしょう。
⑥価格帯を抑えたウイスキー銘柄
流石に漬け込み酒にそんなに高いウイスキーは使えないよ~という方は、富士山麓、カティサーク、バランタインファイネスト、ブラックブッシュあたりがリーズナブルいいんじゃないかと思います。
でもウイスキービギナーにはいちご一粒分だけでもいいからマッカランやグレンドロナックで作ってみて欲しいな~。
『ウイスキーは苦手』と思っていた方でも、世界がパッと明るくなるような体験ができることでしょう。
この後は研究を重ね、作りながら気づいた点を書き記していきたいと思います。
いちごウイスキーに冷凍いちごを使う技
この実験では生のいちごを使用しましたが、「冷凍したいちご」を使ったほうがいちごウイスキーが美味しくなるという説もあります。
これは美味しくなるというよりは「冷凍することによって、果実の水分が抜けるので早く漬かる可能性がある」ということですね。
漬かる時間を短縮したいと思っている方にはいいのではないでしょうか。
いちごはよく洗ってからヘタを取り、風味が落ちないうちに冷凍庫に入れて急速冷凍。すると旨みが逃げません。
冷凍庫に入れる容器をアルミホイルなどでくるくる巻くと急速冷凍できますよ。
白砂糖ではなく「氷砂糖」を使う
果実酒や漬け込み酒をよく作っているバーテンダーさんにお聞きしたところ、「氷砂糖」を使ったほうがいちごのエキスがゆっくりにじみ出て美味しくなるとのこと。
氷砂糖は普通の白砂糖と比べると大型の結晶なのでゆっくりと溶けだします。そして浸透圧の関係で先にアルコールが果実に沁み込んでいきます。
果実のエキスがゆっくりと染み出てくるので、じっくり果実が熟成しまろやかな味わいに仕上がるようです。
次回は是非「氷砂糖でいちごウイスキー!」。
いちごウイスキーの保存・保管方法について
いちごウイスキーの保存法についてです。
実は最初冷蔵庫に入れて保管していたものもあるのですが、これは失敗でした。
なかなかエキスが出てこない。
作る時期にもよるのですが、2月~3月は台所下などの冷暗所で熟成させるべきですね。温度が低すぎてもダメ。
逆に5月以降は温かくなってきますので、冷蔵庫や野菜室などで保管しましょう。
いちごをいつ取り出すか
これは諸説あります。
正直香りだけは10日前後でも十分移りますし、いちごの色は数日で抜けきります。軽い風味を楽しみたい方はこの辺りで抜く方もいますね。
あまり長く漬け込むといちごの果肉がボロボロと崩れますので、お酒が濁るのが嫌というのもあるでしょう。
ただきらめく飲み頃は1ヶ月以上(2ヶ月くらい?)経ってからなので、入れっぱなしでも大丈夫です。
2ヶ月くらいは搾り取ってやりましょう!
取り出したウイスキー漬けのいちごはジャムで再利用
ちなみに真っ白に変色したいちごはそのまま食べるとめっちゃまずいので、ジャムにして再利用するのをおすすめします。
- いちごを瓶から取り出して、鍋に移してつぶす。
- 砂糖を加えて、弱火で煮詰める。
- 最後にレモン汁を少々加える。
- 消毒した瓶に移して自然に冷ます。
とまぁこんな感じで簡単に作れます。
砂糖はだいたいいちごの量の40%くらい使いました。
いちごウイスキーのもうひとつの発見
今回『いちごウイスキー』をつくり、記事を書いてて感じたのは、普段ウイスキーを飲まない人とも距離が縮まるな、ということでした。
普段はお父さんのお酒、男のお酒と思われがちだったウイスキーも『いちごウイスキー』にすることで、飲みやすく見た目も華やかな『おしゃれなお酒』に変化します。
みんなで作ればなんだかとても楽しいですし、ホームパーティ用に持っていくのも良いでしょう。
一緒にいちごウイスキーを漬け込み、熟成後の味を想像し、出来上がったウイスキーを共に飲み、ゆっくりと語り合えば、今まで遠かったウイスキーとの距離、そして大切な人との心の距離も縮まることでしょう。
『いちごウイスキー』があなたと誰かを繋ぐキッカケになるといいですね。
世の中の漬け込み酒では砂糖を入れるようですが、サントリーのVOのレシピは入れません。どちらがいいのでしょうねえ。
なお、わたしはブランデーに入れません。もともと砂糖が入ってるから、梅酒みたいに甘ったるくなったら困るからです。
ウィスキーもストレートで飲んだら凄く甘い酒ですから、どうでしょうねえ。
あと、利用するクラスです。
ブランデーの場合は、ウィスキーよりクセが弱く、香り成分が多いという特徴がありますから、どれを使っても同じ。高いのを使うのはもったいないのが正直なところ。しかしVOの苦みやエグミはいただけません。漬け込み酒を作ってもまずかった。フレンチブランデーやサントリーVSOPみたいな、そのまま飲んだらマズイブランデーを使っています。コニャックやアルマニャックのナポレオンやXOクラスはもったいなくて使えません。
高級ウィスキーは漬け込む価値があるのですね。でもマッカランに砂糖を入れるなんてちょっとね。
ぜひ、いちごウイスキーにぴったりなウイスキーセットをBARRELで販売して欲しいです!
ご意見ありがとうございます!
結構ウイスキーの量を使うので、お値段的に微妙かもしれませんが、ひとくちウイスキー側で検討してみますね。