サントリーローヤルの概要
サントリーローヤルはその名の通り日本企業サントリーが製造・販売を手がけるブレンデッドウイスキーです。
同社から販売されている「ダルマ」の愛称で知られるサントリーオールドの上位モデルのブレンデッドウイスキーとなります。
初リリースは1960年。
それ以来プレミアムウイスキーとして販売されてきたローヤル。
60〜70年代にかけては銀座の高級クラブなどに置かれ、社長や役員クラスの重役がこぞってボトルを入れていた…という昭和のサラリーマンのステータスにもなったボトルでもあります。
現在は3,500円程度で、ちょっと頑張れば誰でも購入できるブランドになりましたが、ドライフルーツやチョコソースのような濃厚フレーバーと上品な甘み、心地の良い余韻は発売当初の時代のクオリティをしっかりとキープしているプレミアムウイスキーと言えるでしょう。
サントリーローヤルの発祥と歴史
サントリーの創業者である鳥井信治郎氏は大阪の米穀屋の次男として生まれ、市場分析や宣伝戦術に長けた、現在でいうマーケティング能力の高い人物でした。
更に優秀なウイスキーのブレンダーとしての一面があり、日本人の繊細な味覚に合うウイスキーを次々に生み出しました。
サントリーローヤルは、鳥井氏が立ち上げた寿屋(現サントリー)の60周年記念にリリースされた記念すべきウイスキーでした。
また創業者鳥井信次郎氏の遺作ブランドでもありました。
独特の角ばった形状をしたボトルは酒という文字の右側「酉(とり)」という漢字を模して作られたもので、この漢字は干支の“とり”のほか、酒の壺や酒器といった意味もあるそうです。
両端に向かって曲線を描く栓は山崎蒸溜所の奥にひっそりと佇む「椎尾神社の鳥居」の風景からヒントを得てデザインされたもの。
ここは晩年の鳥井氏がこよなく愛した場所だったそうです。
さらにローヤルのブレンド技法は桜吹雪がかかった椎尾神社の風景をイメージしながら行ったのだとか。
鳥井氏はローヤルの最後のテストブレンドを飲みながら「このアロマは桜の花びらが舞い散るのを思わせる」と語ったと言われています。
日本の風情、そしてサントリーの創業鳥井氏の大切な場所への想いが込められたブランドなのです。
サントリーローヤルリリース、そして鳥井氏の他界
サントリーローヤルがリリースされたのは1960年。
ローヤル開発時、鳥井信治郎氏は80歳という高齢であったため、ブレンド開発には後継者であった鳥井氏の次男の佐治敬三氏や、初代チーフブレンダーである佐藤乾氏に託し進められました。
佐治氏と佐藤氏は山崎蒸溜所で熟成されたモルト原酒をもとに日本人の繊細な感覚に合うブレンディングを追求。
サンプルの試作を重ねては鳥井氏に師事を仰ぎ、まさに日本人の繊細な味覚にふさわしい黄金比をつくりあげたのです。
鳥井氏はローヤルのリリースを見守るが如く、2年後の1962年に他界。享年83歳。
サントリーローヤルはウイスキーに捧げた彼の渾身の遺作ともいえるブランドとなりました。
サントリーローヤルの製法
実はローヤルがリリースされた1960年には、まだサントリー白州蒸溜所、そして知多蒸溜所が存在しませんでした(白州蒸溜所1973年、知多蒸溜所1972年設立)。
従って発売当初のローヤルには白州モルト、知多グレーンが使われておらず、山崎蒸溜所のモルト原酒のみが使われていたことになります。
さらに山崎蒸溜所の「シングルモルト山崎」も発売前ということで、ブレンド用の原酒しか製造していなかった時期になります。
もちろん現在は山崎蒸溜所をキーモルト、白州蒸溜所のモルト、そして知多蒸溜所で造られたグレーン原酒をブレンドして造られていると察しがつきます。(サントリー側は原酒の公開はしていませんが…)
ラベルデザインの変遷
ローヤルは発売当初、創業60周年と発売年の1960年を引っ掛けた「’60」という数字をラベルに記していました。
その後、1980年代中期に「’60」ラベルから、英語表記の“SUNTORY ROYAL”の頭文字をそれぞれ取った「SR」ラベルに変更。
1995年になると12年ものの青ラベルが登場。
1997年のリニューアルで青ラベルは廃止、酒齢12年(プレミアムは15年)以上の原酒が中心となったため2008年8月まで「AGED 12 YEARS」という記載がラベルに記載されました。
ボトルの形状は1990年頃にスリムボトルが登場しましたが、2007年に曲線を描いたボトルにリニューアルした以外は基本的に変わっていません。
サントリーローヤルのラインナップ
サントリーローヤル
こちらは現在販売されているローヤル唯一のボトルとなります。
今年で販売からなんと60年!(2020年現在)
日本人の繊細な味覚に合わせて造られたサントリーブレンデッドウイスキーの上位ラインナップです。
山崎パンチョン樽原酒と白州竹炭ろ過原酒がキーモルト。甘く華やかな香り。やわらかくなめらかな口あたり。すっきりと心地よい余韻が特長です。
香りは熟したフルーツ。巨峰。ミルクチョコレート、タバコ、カフェオレ、ドライプラム。
味わいは砂糖漬けしたドライプラム、ココア、濃厚なラムレーズンなどの強い甘みと中盤〜後半にプラムの皮のようなタンニンの酸味を感じます。
僅かなスモーク香を纏いますがヨード感は皆無。ナッツのフレーバーが残ります。
深みがありますが、スイスイ飲めてしまう甘く危険なブレンデッドウイスキー。
サントリーローヤル スリムボトル
1990年頃に発売を開始したスリムタイプのローヤルです。
重厚なデキャンタータイプのローヤルのレギュラーボトルはもっぱら家庭用かギフト用。
こちらはバーなどのバックバーにも並べやすいよう機能性を追求したボトルといえます。
味わいは変わりません。
サントリーローヤル プレミアム12年(青ラベル)
販売期間は1995年から1997年のわずか2年間だけ販売されていた青ラベルのボトル。
この頃は原酒が余り気味だった時代で、97年のリニューアルでこちらのボトルは「ローヤル15年」として格上げされてしまいます。
もちろんこのリニューアルで原酒の構成比率は若干変えられているでしょうが、長熟の原酒がふんだんに使われていたボトルということが分かります。
香りは華やかなプラム、ヘザー、カカオ、ダークベリー、ほんのり干し草。
味わいはカカオ、苺ジャム、レーズン、バニラなどの甘みがメインで長めのオークの余韻も楽しめます。
通常のボトルよりベリーの印象が強いイメージです。
現在の洗練されたサントリーブレンデッドの先駆けを感じられる良く出来たボトルです。
サントリーローヤル12年(黒ラベル)
こちらは1997年にプレミアム12年がリニューアルとなり販売された黒ラベルボトル。
香りは木苺ジャム、麦芽クッキーの香ばしさ、ダークベリーの甘味と酸味。
味わいはスムースな口当たりでバニラ・レーズンの強烈な甘味のあと、カカオパウダーのコク、ビター感、かぜ薬のシロップのようなスイート感、奥に微に感じられるスモーク感。
プレミアム12年には若干引けを取るものの、しっかりとした熟成具合を感じられる高級感のある味わいに仕上げられています。
サントリーローヤル プレミアム 15年
こちらは酒齢15年以上のモルト・グレーン原酒をブレンドしたローヤル史上最上位ボトルとなります。
1997年〜2007年まで販売されていました。
サントリーのブレンデッド最高峰…といっても良いかもしれません。
レシピは異なるものの響の12年と同等に位置する銘柄とみなすウイスキーファンもいるようです。
シェリー樽を感じるレーズン様の力強い豊潤な香り、他にもバニラやカラメル、木の皮のような渋みのある香りも。
味わいははやり熟成感のあるレーズンやプラム、完熟チェリー、カカオパウダーの酸味。
濃厚ですが実に飲みやすい、とてもよく出来た仕上がりの一本です。
サントリーローヤル15年(ゴールドラベル)
こちらは97年のリニューアルでローヤル プレミアム12年の後継としてリリースされたボトル。
ゴールドのラベルが目印となります。
1997年~2007年の約10年間販売されていました。
香りはドライレーズン、ブラックベリー、プラム、若干のエステリー、濃い樽感と熟す前のプラム。
味わいは口当たりはメープルシロップ、巨峰の皮のタンニン、麦菓子、オレンジピール、全体的に焦がしたカラメルを水で溶いた香ばしさと甘み。
非常に複雑で山崎原酒をしっかりと感じられる良質なブレンデッドウイスキーです。
サントリーローヤルのおすすめの飲み方
現在のジャパニーズウイスキーの出発点を感じられる、そんなウイスキーがローヤルです。
熟したフルーツと、ウッディで落ち着いたフレーバー、ミディアム~フルボディであまり若さが目立ちません。
バニラとクリームタルトの風味、余韻のオークとナッツのこうばしさが好印象。
おすすめの飲み方は少量の加水か、軟水での水割り。
ややオイリーさを感じる口当たりとスイートな飲み心地が最高です。
オールドボトルを扱っているBarやネットオークションでは、当時の品も見つけられます。
特にローヤル15年には円熟味があり、しっとりとした熟成感が味わえます。当時の山崎原酒をリーズナブルに体験できる逸品といえましょう。
ただしローヤルはオークションなどで幾つか古いものを落札してみましたが、保管状態にはかなりのばらつきがあります。
渾身の想いを込めたこのボトル形状が仇となっているようで、コルクが乾燥しやすく注ぎ口とコルクの間に隙間ができているものが多く散見されます。
ワインで言う「ブショネ」、テイスティングコメントでは「コルキー」などと言われるウイスキーの味をコルク臭が支配してしまう現象が起きがちです。
ショップやバーなどでしっかりと選定されているものを味わうようにしましょう。
ちなみにローヤルはテレビCMも多数がつくられていて、中でも1983年~1985年にテレビ放映されたアルチュール・ランボー、アントニオ・ガウディ、グスタフ・マーラー、アンリ・ファーブルを取り上げたCMは、圧倒的な狂気とセンスに満ちています。
ガウディやばい(笑)
他にも1980年~1982年に放映されたアーネスト・ヘミングウェイ、ジョン・スタインベックらが書いた小説の世界に題材に、森山周一郎がナレーションを担当した「男はグラスの中に、自分だけの小説を書く事が出来る」のシリーズCMも独創的です。