ポールジョンの種類と味わい
ポールジョン ニルヴァーナ
2019年にリリースされたポールジョンの新たなラインナップ。
ブリュッセル国際コンクール2019スピリッツ部門で 最高金賞を受賞した世界的にも評価の高いボトルになります。
ニルヴァーナと聴くとグランジロックの生みの親、カートコバーンのバンドを思い出す方が多いかもしれません。
ニルヴァーナはサンスクリット語で「涅槃」を意味します。
涅槃とはインド発祥の宗教に共通する概念で、「吹き消された」という意味であることから、全ての煩悩が消え去った最高の状際、つまり境地を指しています。(バンド名も同様の意味らしい)
香りは甘やかでベリー系の果実、白ブドウ、オークの削りくず、シリアル、キャラメル、最後に段ボールも感じられます。
口に含むとクリーミーな口当たり。
味わいはキャラメル、蜂蜜、トロピカルな南国フルーツ、アルコール度数40%のウイスキーとしては素晴らしくジューシー。
マンゴーや木酢系の余韻も長く、他のラインナップと比べて低価格の設定ですがハイボールにしても軽すぎず、モルトの風味がしっかりと感じられる仕上がりになっています。
ポールジョン ブリリアンス
こちらはバーボン樽にて5~6年熟成してつくられたポールジョン。
ノンチルフィルタードにてボトリングされています。
世界で最も権威のあるウイスキー評論家のひとりジム・マーレーの著書「ウイスキー・バイブル」にて94点という高得点を獲得している評価の高いボトルです。
香りは青リンゴ、ラムレーズン、ライムと爽やかな香りがきた後にバニラやチョコレート系の甘やかな香りが訪れます。
口当たりはやや厚みのあるボディ。
味わいは最初にアルコールの辛みがあるものの、力強いモルトティなシリアルがグッと押し寄せ、チョコチップ、キャラメル、中間にワクシー、オレンジピール。
後半はシリアルの香ばしさとオレンジが残り、余韻は驚くほど長く続きます。
若さがあるもののスペイサイドモルトと間違えるほどの爽やかさとスパイシーさ、そしてジューシーさで満たされた実に飲み応えのある1本です。
ポールジョン エディテッド
こちらはバーボン樽にて5~6年熟成、ノンチルフィルタードにてボトリングされたポールジョン。
ジム・マーレーの著書「ウイスキー・バイブル」にて96.5点を獲得、2017年SWSCにてダブルゴールド受賞した評価の高いボトルです。
香りはトーストしたシリアル、蜂蜜、若干のピート感、大麦の草の香り、ココア、エスプレッソコーヒー。
口に含むと厚みのあるボディ。
味わいはフルーツと洋菓子の折り混ざった重層的な甘みがメインで、白桃、枝付きレーズン、ドライフルーツ、キャラメル、トフィ、チョコレートケーキ、後半にココアパウダーのビターさも訪れ非常に複雑な風味を演出しています。
ウッドスパイスやエスプレッソ系の余韻も長く、充実した内容のボトルです。
ポールジョン ボールド
こちらはバーボン樽にて5~6年熟成、ノンチルフィルタードでボトリングしたポールジョン。
ジム・マーレーの著書「ウイスキー・バイブル」にて95.5点を獲得、2017年SWSCにてダブルゴールド受賞等数々の賞を受賞したボトルです。
香りはオーキーかつトロピカルで、桃の缶詰、トーストしたバターブレッド、乾いた草、オレンジピール、青リンゴ、ブラウンシュガー、後半にスモーキーさがふわりと訪れます。
口に含むとシルキーなきめ細かい口当たり。
味わいはハニーオークと浅煎りコーヒー、パプリカパウダーのスパイシーさ、ライム、中間にスモーキーさが訪れ、後半にかけてマンゴーなどのジューシーなトロピカルフルーツがおしよせます。
ピートとベイクドオレンジ、ダークチョコの長い余韻。
繊細で複雑な風味がいくつも押し寄せる、素晴らしき内容のボトルです。
ポールジョン クラシック
こちらはバーボン樽にて7年熟成、ノンチルフィルタードにてボトリングしたポールジョン。
ジム・マーレーの著書「ウイスキー・バイブル」にて95点を獲得、他の品評会でも数々の賞を受賞した評価の高いボトルです。
香りはフルーティでりんごと洋ナシのコンポート、焼きたてのスポンジケーキ、焼きたてのケーキ、ピーナッツバター。
口に含むと暖かで厚みのあるボディ。
味わいはカットしたトロピカルフルーツを散りばめたダークチョコレート、ベイクドオレンジ、シナモン、パプリカのスパイシーなノート。
トロピカルフルーツキャンディーの長い余韻。
フルーティかつジューシー、南国系の旨味がみっちりと詰め込まれた1本。
ポールジョン ピーテッド
こちらはバーボン樽にて7年熟成、ノンチルフィルタードにてボトリングしたポールジョン。
ジム・マーレーの「ウイスキー・バイブル」にて96点を獲得。また、他の品評会でも数々の賞を受賞した高評価のボトルです。
香りは最初にスパイシーさが訪れその後すぐピート&スモーク、アプリコット、ジンジャークッキー、良質な渇いたオーク材。
口に含むと粘性のある口当たり。
味わいはスパイシーかつスモーキー。
燻製にしたドライフルーツ、アプリコット、ハニートースト、シリアル、生ハムを乗せたクラッカー、マンゴー、パッションフルーツ、後半にタバコの葉。
ベイクドオレンジやタバコの長い余韻。
ジューシーな甘さとスパイシーさ、スモーキーさが同居した実に多彩な風味を感じられる1本です。
おすすめの飲み方・飲み進め方
アムルットと並びインドを代表するシングルモルト「ポールジョン」。
ニューワールドウイスキーが次々出てくる昨今ですが、日本でのデビューは2017年とちょいと前。日本のウイスキーラヴァーには徐々に名前が知れてきています。
ストレート、トワイスアップ、ロック、ハイボール、どんな飲み方でも卒なく対応します。
インドではもとよりウイスキーをソーダ割りにして飲むのが主流。
おそらく日中、労働で乾いた喉を冷たいハイボールで流すことに心地よさを覚えるのでしょう。
ポールジョンの爽快かつトロピカルな味わいはハイボールにしても決して崩れることなく、辛みが強い地元の南インド料理にマッチする素晴らしい風味を纏っています。
スコッチやジャパニーズに比べるとまだまだ安いのが魅力です。
ニルヴァーナなんて3000円台ですからね。
ブリリアンスがおいしかったらクラシックいきましょう!エディテッドがおいしかったらピーテッドです!
クラシックとピーテッドの完成度は高く、ボトルで買っても後悔しないと思います。
ポールジョンの発祥と歴史
どこで作られているのか?
ポールジョンはインドのゴア州でつくられているインディアンウイスキーです。
創業者であり、現会長のポール・P・ジョン氏の名前がブランド名となっています。
これまでブレンデッドウイスキーしか存在しなかったインドにおいて「世界で勝負できる本格的なシングルモルトウイスキーをつくりたい」、という創業者の熱い思いから生まれました。
台湾のカバランやインドのアムルットなど、近年、高温地帯でのシングルモルトの生産が目立ち始めました。
これらの地域は、熟成環境が冷涼なスコットランドに比べるとエンジェルズシェアの割合が数倍にもなります。
しかし原酒の質や熟成方法をコントロールすることで、他の地域とは比較にならないようなスピードで円熟味を増すことが可能なのです。
従来のウイスキーづくりのセオリーを覆し、様々なテクノロジーを使い、美味いウイスキーが次々に登場している地域なのです。
インディアンウイスキーは近い将来必ず世界5大ウイスキーに仲間入りするでしょう。
その中でもポールジョンはトップに君臨するポテンシャルを秘めたブランドです。
インドのウイスキー事情「世界一のウイスキー売上」
ウイスキー情勢に詳しい方は既にご存知かと存じますが、世界で一番販売されているウイスキーはスコッチでもアメリカンウイスキーでも、ましてはジャパニーズウイスキーでもない「インディアンウイスキー」となります。
熟成年数やアルコール度数など「ウイスキー」としての定義がワールドスタンダードではなかったというだけで、実際のところ1番売られていたのはインドのオフィサーズチョイスというインドのブランドなのです。
オフィサーズチョイスは年間3,470万ケースが売られています。
ちなみに2番目に多く売られているブランドもインドの「マクダウェルズ」(2,490万ケース)となり、第3位になってようやくスコッチのジョニーウォーカー(1,880万ケース)が現れます。※2016年度の売り上げデータ
あのジャックダニエルでさえ1,220万ケースとインドの2ブランドには遠く及びません。
ウイスキーの消費量も世界一
これだけ売られているのにインドのブランドが世界的に知られていないのは、生産量のほとんどがインド国内で消費されているからです。
インドの人口は約13億人と中国に次ぐ規模で、巨大なマーケットが既に形成されています。つまりウイスキーの消費量が一番多い国もインドということです。
かつてはカースト制度があり、 貧困に喘ぐ国というイメージだったインドですが、今は毎年7~8%の経済成長を果たす新興国という位置づけにあります。特にIT産業の急成長は目を見張るものがあり、近年世界中から注目を集めています。
そんなインドで、ウイスキーはいつのまにか絶大な人気を得ていました。
2006年、イギリスのドリンクス・インターナショナル社が、「世界一のウイスキー生産国はインド」と発表しました。
それまで統計データがありませんでしたが、実はインドは2000年頃から経済成長に伴い急速にウイスキーの生産量、消費量を伸ばしていたようです。
しかしそのほとんどがインド国内にて消費していたため、インド産のウイスキーが国境を跨ぐ機会は少なかったといいます。
ウイスキーといってもモラセスと呼ばれる廃糖蜜を原料とした安価なスピリッツがほとんどで、世界基準となるシングルモルトが登場したのは、ここ10年以内の出来事となります。
ポールジョンの歴史
ポールジョン社は1992年に創業したインド第4位の総合酒類メーカー「ジョン・ディスティラリーズ社」で、ウイスキー以外にもワインやブランデーなども手掛けています。
創業者は現在会長のポールPジョン氏。
彼の名前がそのまま社名とシングルモルトのブランド名にもなっています。
本社があるバンガロールはIT産業の中心地で、近年急激人口が増えている都市です。
シングルモルトを発売するまでの主力商品は「オリジナルチョイス」というモラセスを原料としたウイスキーで、年間の販売数はなんと1080万ケース!これは今でもインド国内売り上げ4位だといいます。またその85%以上がカルナータカ州のみの販売いうから驚きです。
しかし モラセスウイスキーだけではなくモルトを使った「世界に通用するウイスキーをつくりたい」というポールジョン社長の強い想いから、シングルモルトをつくることを決意。
社長自らスコットランドを中心とした蒸溜所へ赴き、そこで作られるウイスキーを研究し始めました。
ゴア州は1510~1961年までの451年間、ポルトガルの統治下にありました。
そのためここに住む州民はある条件を満たせばポルトガルのパスポートを持つことが可能で、これを利用してヨーロッパやスコットランドの蒸溜所を見て回ったといいます。
そして2008年に本社があるバンガロールから北西に約500㎞離れたゴア州のアラビア海に面した土地に蒸溜所を建てることを決定。
2009年から本格的にモルトウイスキーの生産を始めました。
ブランド名を「ポールジョン」とし、まず本国インドよりも早く、スコッチウイスキーの本場イギリスをはじめとするヨーロッパで2012年12月より発売を開始します。
翌2013年には地元ゴア州で発売し、2015年にはオーストラリア、シンガポール、ニュージーランドへ進出、2016年にはアメリカにも進出し、世界各国で売られるようになりました。
ポールジョンの味わいは各国で高く評価され、同社は10年足らずで世界の一流メーカーへと成長していくのです。
ポールジョンの製法
ポールジョンはインド産の六条大麦の麦芽が使用されています。
スコッチやアイリッシュ、ジャパニーズウイスキーのモルトウイスキーには二条大麦が使用されるのが一般的ですが、ポールジョンでは敢えて六条大麦が使用されています。
二条大麦に比べて六条大麦はデンプンの含有量が少なく、アルコール収量が減るというデメリットがあります。
その反面タンパク質の含有率が多く、旨味成分が増してリッチかつオイリーなウイスキーにし仕上がります。
それも北部ラジャスタン州の 「RS6」 という品種がベストだといいます。
またピート麦芽で仕込む際にはピーテッドの麦芽をスコットランドから輸入するかとおもいきや、ピートをスコットランドから輸入し、それを製麦所に依頼して焚く…という拘りの製法を取り入れています。
ピートにもこだわりがあり、アイラ産と東ハイランド産の2種類を仕入れ、別々に焚き麦芽をつくり分けています。
原料となる大麦と、ピートにここまで情熱を燃やす蒸溜所は本場スコットランドにも少ないでしょう。
仕込み、発酵、蒸溜はスコッチにちなんだ王道をゆく製法ですが、マッシュタン・発酵槽・蒸溜器、すべてがインド製でこだわって使用しています。
見事な銅製のポットスチルは北部にあるグジャラート州のナランララ社の特注品だといいます。
スコッチとの違いは、モロミのアルコール度数が18%と低く(スコッチは25〜28%)、蒸溜後のニューポッドも64%にしかならない、ということ。
しかしこれはボトリングの際、加水をせずに済むことがメリットとなります。
ゴアは熱帯地域のため当然エンジェルズシェア(天使の分け前)は多くなり、年間にして平均8%が消えていきます。
スコッチは平均2%なので、これに比べるとそのスピードは約4倍になります。
また樽からの成分溶出量も多く、ダイナミックに熟成が進行します。
これも、ポールジョンのリッチで複雑な風味に大いに影響しているといえます。
ざっくり概要と味の特徴
インドのゴア州でつくられているインディアン・シングルモルト・ウイスキーです。
インドは世界一のウイスキー生産国であり消費国なわけですが、これまで安物のブレンデッドウイスキーがほとんどでした。
そこに彗星のごとく誕生したのがこちらのポールジョン(とアムルット)です。
2017年に初めてバーで飲んだ時は円熟味があり完成度が高く、まさに「黒船襲来」と思うほど驚きました。