おすすめの飲み方・飲み進め方
パッケージが非常に洒落ているピーツビースト。ジャケ買いご用達商品でもあります。
おすすめの飲み方はハイボール、甘さをより引き出すならハーフロックもOK。
PXシェリーでフィニッシュしたボトルもあるのですが、これはストレートはもちろん、お湯割りもいけます。
スモーキーなウイスキーではあるのですが、アイラモルトを一通り飲みなれた方が飲むと、甘さのほうが際立つと思います。
個人的にはバッチストレングスをハイボールにして、餃子パーティーです。
香りの強いものには強いものを当てていきましょう。目には目を。野獣にはニンニクです。
ちなみに、このピーツビースト、25年が最長熟ではなく、実は27年や34年もリリースしています。
27年は未飲ですが、34年はバーなどでも見かけますし、普通に通販で買えるので飲むことができます。
世界1800本、イギリス150本とのことですが、日本には結構入ってるんじゃないでしょうか。
34年はコニャックカスクでフィニッシュされており、かなりボディが厚いです。スモーキーな香りの中にはスミレの花。イチヂクのタルト、そして甘草、生姜シロップの味わいが特徴で、酸と塩味のバランスが抜群。複雑でパワフル、野獣の深淵を覗けます。
アイラモルトの34年物のシングルモルトがこの価格で買えるとなると、かなりリーズナブルと言えるでしょう。
ピーツビーストの発祥と歴史
ピーツビーストをリリースしているフォックス・フィッツジェラルド社は2010年創業の新進気鋭のボトラーズ会社。
創業者はエイモン・ジョーンズ氏。
彼は以前ホワイト&マッカイでディレクターを務めており、ダルモアやジュラなどの著名なブランドの販売を担当していた人物です。
このジョーンズ氏と、輸入業で腕利きのジェラルド・アードリック氏がタッグを組み立ち上げたのがフォックス・フィッツジェラルド社でした。
ピーツビーストは同社から初めてリリースされたブランドとなります。
ピーツビーストを紹介するうえで欠かせないのがスタイリッシュなラベルデザインです。
筆で描かれた獣の絵は、人気イラストレーター、ダグ・アルベス氏の作品。
ロサンゼルス在住のブラジル人アーティストで、彼のポートフォリオには洗練されたモノトーンのイラストが数多く掲載されています。
シンプルですが躍動感があり今にも動き出しそうなイラストばかりですね。
ピーツビーストのラベルには焦げた跡がありますが、これもラベルデザインの一部。
この焦げ跡デザインがあまりにもリアルなので、ネット販売ページには「ラベルの焦げデザインです」というフォローコメントを入れている業者もあるくらいです。
ピーツビーストが炎を吐き、ラベルの端を焦がしてしまった…そんな強烈なインパクトのあるラベルデザインです。
ダグ・アルベス氏のポートフォリオには、このピーツビーストの原型となったデザインも掲載されているので、ブランドのファンの方は覗いてみてください。
ピーツビーストの製法
ピーツビーストはアイラ産のモルト原酒を使用している、と冒頭で紹介しましたが、ピーツビーストのオフィシャルサイトを見ると
「ピーツビーストはアイラ島から来たのかもしれませんし、そうではないかもしれません…。」
とぼやかした表現を用いています。なんじゃそれ、、、。
メーカー側としてもアイラ産モルトです!とは明言していないのです。これだけあからさまなピート感が漂っているのにもかかわらず、、、
バレバレの表現ですが、これを目にした方は(特にアイラモルトファンの方は)飲んでみたくなってしまいますよね。
これは、良くできた広告戦略と言えます。
なお、ピーツビーストはフェノール値35ppmの麦芽を原料につくられています。
公表している35ppmというフェノール値も蒸溜所のヒントとなっており、ウイスキー好きの方はラフロイグやカリラ、ラガヴーリンなどが勝手に頭に浮かんでしまうはずです。ちなみにアイラモルトというのは目くらましで、実はスペイサイドのピーテッド(ベンリアック)ではないかという噂もあります。
隠されると知りたくなる→ヨシ、飲んで確かめよう、というような方程式でついつい買ってしまう、そんなブランドなのです。
ピーツビーストの種類/ラインナップ
ピーツビースト
こちらは定番のピーツビースト。
ピーツビーストにはいくつかラインナップがありますが、このスタンダードボトルが1番有名でしょう。
ダク・アルベス氏のデザインした樽を纏ったビーストのスタイリッシュなイラスト、一部焦げ付いたインパクトラベルデザインも人目を惹きつけます。
香りは海辺の流木を集めた焚火のスモーク、ズシンとくる重工なピート、土臭さ、奥からレモンピール、グレープフルーツなどの柑橘系も感じます。
味わいも口に含んだ途端ピートの野獣が口内を暴れ回り、しばらくそれが居座ります。
ピート&スモークが引いたあたりからモルトの強い甘み、シナモンスパイス、リンゴ、洋梨のフルーティさが溢れ、後半に黒コショウのスパイシーさが訪れます。
ピートの刺激だけでなく、甘みやスパイシーさも味わえる複雑な風味に仕上がった完成度の高いボトルです。
ピーツビースト バッチストレングス
ピーツビーストのカスクストレングスバージョン。
スタンダードボトルが46度に調整されているのに対し、バッチストレングスは52.1度というパイプルーフにてボトリングされています。
香りはスタンダードボトルに比べるとやや落ち着いたピート香、でもそれは濃縮したが故に奥に引っ込んでいる、爆発寸前のビーストが潜んでいるようにも感じます。
口に含んあd瞬間に放たれる強烈なピート&スモーク、うがい薬とグレープフルーツの柑橘系、パイナップル、唾液と触れ合うと甘みを感じ麦芽ウエハース、焼きたてのパン、干草など様々な風味が押し寄せ、長い余韻へと続きます。
フィンラガン、アイリークなどもそうでしたが、蒸溜所非公開ものはハイプルーフがうまい。
濃縮された旨味を堪能できるボトルです。
ピーツビースト バッチストレングス ペドロヒメネスシェリーウッドフィニッシュ
こちらはピーツビーストのバッチストレングスをPX(ペドロヒメネス)のシェリー樽に入れ9ヶ月後熟を行い、仕上げたボトル。
香りは焦がしたドライフルーツ、燻製レーズンなどの甘みを伴うスモーキーさの後、干し芋、プラム、バニラなどの甘やかさを感じます。
口に含むとフルボディで、味わいは最初に燻製にしたドライフルーツの芳醇な甘みがドッと押し寄せ、その後にバニラエッセンス、カシス、イチジクなどの甘み、ジンジャーのスパイシーさを感じます。
後半にモルトの甘みとピート余韻が鼻腔に残り、長く居座ります。
PXカスクのフルーティさと強烈なピーツビーストの個性が同居したバランス型のボトルです。
こちら、ベンリアックのバーニーモスと深い関係があるとかないとか噂がありますね。
ピーツビースト 25年
こちらはオフィシャルラインナップでも長熟となる25年もののピーツビースト。
25年ともなると暴れまわる野獣は影を潜め、ノシノシと余裕をみせながら歩く、威厳たっぷり野獣の王のような貫禄を感じてしまう…そんなボトルです。
スモーキーな香りは確かにありますが、ミントガムのハーブ感、オレンジピールの柑橘、枝付きレーズン、ドライプラム、バニラエッセンス、カラメルなどの甘み要素が次々に訪れます。長熟アイラならではのフルーティーなピート感ですね。
口に含むとまずそのボディの厚さに驚かされます。
テクスチャはややオイリー、味わいは燻製にしたドライプラム、干し肉、パインキャンデー、マーマレードなどの濃厚な甘みと奥からオレンジピールの柑橘系、クリーミーさ、ややワクシーな要素も感じられます。
後半はバニラキャラメルの甘さ、干し草、ミントのハーブなども感じられ、余韻はドライでミディアムショート。
しっかりとした個性が形成されており、わかる人にはわかってしまうでしょう。
というか、もうどこの蒸溜所とかそういう話はやめて目の前にあるこいつを楽しもう…という気分にさせてくれます。
フォックス フィッツジェラルド社が送り出す、アイラの燃えさかるピートの野獣。
スモークヘッドなどに近しい中二病男性的なラベルですが、こちらのほうがグッとアーティスティックですね。
ご自宅やバックバーに置いても目立つので、ボトル買いもよいと思います。
「そのファイナルファンタジーのモンスターみたいなのなに?」
「水墨画っぽいウイスキーあるじゃん!」
みたいに言われること、実際にありました。
ざっくり覚える!
ピーツビーストはボトラーズのフォックス・フィッツジェラルド社からリリースされている蒸溜所不詳のシングルモルトウイスキー。
蒸溜所はシークレットですが、ブランド名からもわかるように、味わいは強烈なピート&スモーク…。
アイラ島のどこかの蒸溜所から得た原酒を使用しボトリングされていることだけが分かっています。
ピーツビーストと同様に蒸溜所不詳としたアイラモルトには、フィンラガンやアイリーク、アイラストームなどが存在し、リーズナブルなアイラモルトとして国内でも人気のブランドです。
原酒の出所となる蒸溜所についてはカリラやラフロイグ、ラガヴーリンなど諸説ありますが、真相は明かされていません。
ピーツビーストが持つ強烈なピートとオイリーなスモーク香、レモンピールの柑橘系…、このヒントをもってどの蒸溜所かを予想しながら飲む…。人それぞれ答えは違うかもしれませんが、アイラモルトへの愛をより深めることができるブランドに違いありません。