富山県砺波市にある三郎丸蒸留所が、またひとつ新たな挑戦をスタートさせました。
2025年4月、運営元の若鶴酒造株式会社は、蒸溜所内に「ブレンダー室」と「ワークショップルーム」を新設したことを発表。
ウイスキー造りの中枢ともいえるブレンダーの作業場が、ついに一般にも一部開かれ、来訪者がウイスキーの魅力をより深く体感できる拠点へと生まれ変わろうとしています。
蒸溜所の“心臓部”を体感できる新施設

ウイスキーの味わいを決定づける「ブレンド」。
その作業を担うのが、蒸溜所の“頭脳”ともいえるブレンダーです。
今回新設されたブレンダー室は、通常は外部に公開されない機密性の高い空間。
このトップシークレットな場所を“見せる空間”として再構築し、隣接する「ワークショップルーム」と連動させることで、来訪者がブレンドの世界に直接触れられるように設計されています。
さらに、ここで行われる体験ワークショップの内容も現在計画中とのこと。
三郎丸蒸留所が持つ70年以上の伝統とクラフトマンシップを五感で味わう、特別な場所になりそうです。
富山の伝統工芸と融合する空間デザイン

今回の施設は、単なる機能的な空間ではなく、富山県のものづくり文化との融合も大きなテーマです。
建具には富山の伝統木工技術「組子細工」(株式会社タニハタ製)を採用。
実際に使われた熟成ウイスキー樽の木材を再利用。
ワークショップテーブルには地元南砺市産のミズナラ材を使用。
素材ひとつひとつに“クラフトの物語”が宿るデザインとなっています。
この空間を設計したのは、富山県出身の建築家 山川智嗣(やまかわ・ともつぐ)氏。
和と洋、そしてクラフトの融合をテーマに、「見せる研究室」を実現しました。
ジャパニーズウイスキーツーリズムの新たな拠点に

三郎丸蒸留所は、北陸最古のウイスキー蒸溜所として、地域と共に歩んできた歴史があります。
今回の施設拡張は、ジャパニーズウイスキー・ツーリズムの発信拠点としても大きな意味を持ちます。
2025年3月には、日本洋酒酒造組合が「ジャパニーズウイスキーの公式ロゴマーク」を導入し、国内外でのブランド強化が進行中。こうした流れの中で、地域資源と融合した三郎丸蒸留所の取り組みは、全国のクラフト蒸溜所にとってもモデルケースとなるでしょう。
デザインのこだわりポイント

特徴 | 内容 |
---|---|
オープン×機密性 | ブレンダー室の機密性を保ちながら、見学可能なワークショップルームを併設 |
ガラスシリンダー | 組子とガラスを融合した美しい円柱に原酒を陳列、視覚的にも印象的な展示 |
“見せる研究室” | 無機質になりがちな空間に温もりとストーリー性を持たせた設計 |
迎賓空間としての品格 | ミズナラ材のテーブルなど、重厚感と温かみを両立 |
東西の融合 | 洋の酒・ウイスキーに、和の空間美や静謐さを重ねたデザイン |
今後の展望と期待
この施設は単なる「場所」ではなく、人と文化と味わいが交差する体験の場。将来的にはワークショップやセミナー、プロ向けのブレンディング講座など、さまざまな活用が期待されます。
稲垣貴彦マスターブレンダーを中心に、三郎丸蒸留所がさらにどんな進化を遂げていくのか。富山発のクラフトウイスキーが持つ無限の可能性に、これからも注目です。