2025年3月、インドのモルトウイスキー業界にとって歴史的な一歩が踏み出されました。
国内を代表する4つの大手ウイスキーメーカーが手を取り合い、インド初となる業界団体「Indian Malt Whisky Association(IMWA)」を正式に設立。
国産モルトウイスキーの品質と信頼性を高め、世界市場での地位確立を目指す新たな枠組みが誕生しました。
業界の柱が結集、IMWA理事会が始動

IMWAの理事会には、インドのウイスキー界を牽引する4名の経営者が名を連ねています。
ポール・P・ジョン(John Distilleries 会長兼CEO)
ラクシット・N・ジャグダーレ(Amrut Distilleries 会長兼CEO)
アビシェク・カイタン(Radico Khaitan CEO)
アキル・ダダ(Piccadily Agro Industries 会長)
この名だたる顔ぶれが、「メイド・イン・インディア」のモルトウイスキーを国際舞台でさらに輝かせるため、業界の声を一つに束ねていきます。
国際基準に学び、インドの誇りを築く

IMWAは、スコットランドのScotch Whisky Association、アイルランドのIrish Whiskey Association、日本の日本洋酒酒造組合のような国際的な業界団体に倣い、「統一された業界の声」を形成することを目的に設立されました。
設立者であり事務局長のラジェシュ・チョプラ氏は、こう語ります。
「定義の明確化、認証の取得、商標・地理的表示(GI)・知的財産(IP)保護の確立こそが、インド産モルトウイスキーの信頼と品格を築く鍵です。」
「偽シングルモルト」への対抗措置も明示

インドでは近年、「インド産シングルモルト」と称しながら、IMFL(Indian Made Foreign Liquor)やENA(Extra Neutral Alcohol)ベースの製品をリリースするメーカーも増えています。
これに対し、IMWAは明確な基準を設け、市場の誤認や品質の低下を未然に防ぐ方針を発表しました。
IMWAが定める「インド産シングルモルト」の条件
100%麦芽大麦を原料とする
単一蒸溜所での製造(ポットスチル使用、カラムスチル不可)
原料は麦芽、純水、酵母のみ
容量700L以下のオーク樽で最低3年間熟成
さらに「ピュアモルト(100%モルトウイスキー)」についても、複数蒸溜所のモルト原酒をブレンドすることを条件に認めると定義しました。
違反企業には法的措置も視野に入れると明言しており、業界内での健全な競争と信頼性確保に本腰を入れています。
さらなる蒸溜所の誕生を期待

IMWAの設立は、既存ブランドの保護と品質保証にとどまらず、国内各地に新たな蒸溜所が誕生することも視野に入れています。チョプラ氏は次のように期待を込めました。
「インドのモルトウイスキーが、世界の名だたるウイスキーと肩を並べる存在として評価される日が来ることを信じています。そのためにも私たちは、品質を守り、未来を育てる努力を惜しみません。」
これはインドのモルトウイスキー業界において、IMWAの誕生はターニングポイントと言える出来事です。
明確な定義、品質基準の確立、偽装排除への取り組み──これらを通じて、「本物のインド産モルトウイスキー」が国際市場で確かな存在感を示す日が近づいています。
世界の蒸溜所地図において、インドという名がより一層輝きを放つ、その日はもうすぐそこまで来ているかもしれません。