米国と欧州連合(EU)の貿易摩擦が激化する中、EUが米国産ウイスキーに50%の報復関税を課すという動きを受け、関税発動前の駆け込み輸出が急増しています。
当初この関税は2025年4月1日から発動予定でしたが、EUの決定により4月13日へ延期されました。とはいえ、ウイスキー業界では依然として強い警戒感が続いています。
なぜEUは米国産ウイスキーに関税を?
今回の措置は、トランプ前米大統領が導入した鉄鋼・アルミニウムへの関税に対する報復として決定されたものです。
EUは2025年4月13日から、ウイスキーを含む総額280億ドル相当の米国製品に新たな関税を課す予定です。
過去の影響:25%関税で輸出が20%減少
2018年から2021年にかけて、EUは米国産ウイスキーに25%の関税を課していました。
その期間、米国からEUへの輸出額は5億5200万ドルから4億4000万ドルへと約20%減少しました。
今回は50%の関税が予定されており、業界ではさらなる打撃が予想されています。
ウイスキー業界の雇用と価格のダブルショック
大手酒類企業ディアジオは、今回の関税措置に加え、カナダやメキシコ製品への関税案も含めて、米国で数千人の雇用が失われる可能性があると警告しています。
ディアジオは米国で17万8000人以上の雇用を支えており、そのうち約1万1500人が製造や販売に直接関わる従業員です。
米国内に11の製造拠点を持つ同社は、EUやカナダ、メキシコからの報復関税による影響を強く受けると見られています。
また、中小の蒸留所ほどEU市場への依存が高く、打撃が深刻になるという声も業界団体から上がっています。
消費者への影響は?
50%の関税は、EUの消費者にも直接影響を及ぼします。
たとえば、これまで50ユーロで販売されていた米国産ウイスキーが、関税により75ユーロに値上がりする可能性があります。
こうした価格上昇は、消費意欲の低下や販売減少を招くおそれがあります。
猶予期間で駆け込み輸出が活発化
当初4月1日からとされていた関税発動は、EUの判断で4月13日へ延期されました。
このわずかな猶予期間を活かして、米国の輸出業者はウイスキーを急いでEUに出荷しています。できるだけ多くの製品を、関税がかかる前に送り込もうという動きが広がっています。
今後の見通し
現時点では、EUが予定通り4月13日に関税を発動するかどうかは不透明です。米国との間で貿易交渉が進められ、関税が見直される可能性も残されています。
ただし、過去の関税が与えた影響や、業界全体の強い不安を考えると、今回の措置が発動されれば米国ウイスキー業界にとっては極めて大きな打撃となるのは間違いありません。