スコットランドのアラン島に位置するラグ蒸溜所(Lagg Distillery)。パッケージがおしゃれで日本でも人気になりつつある蒸溜所ですね。
このたび北アラン国立景勝地に位置するドゥガリーエステート(Dougarie Estate)と協力し、325ヘクタールの損傷したピートランド(泥炭地)の再生に取り組んでいます。
このプロジェクトは、持続可能な未来を目指すスコットランドのウイスキー産業の新たな試みとして注目されています。
ピートランド再生でカーボンゼロへ
プロジェクトは2024年11月にスタート。
2025年2月まで続く予定で、スコットランドのピートランド再生支援団体「Peatland ACTION」の資金提供を受けています。
ピートランドは「自然のカーボンシンク」として知られ、CO2を大量に吸収・固定する能力を持っています。この再生プロジェクトにより、55年間で16,500トン以上のCO2排出削減が見込まれています。
再生作業は、ピートランド復元コンサルタント「Caledonian Climate」と専門業者「Angus Estate Plant」によって進められ、干上がったピートランドを元の湿地状態に戻すために、排水路の閉鎖や地形の再整備が行われています。
環境への影響と地域社会の利益
ラグ蒸溜所のマネージャーであるグラハム・オマンド氏は次のように語っています。
「ラグ蒸溜所は、2040年までにカーボンニュートラルを達成するという目標に向け、持続可能な未来を形作ることに全力を尽くしています。このプロジェクトは、地域の野生動物と生息地を復元し、住民の水質向上にも貢献する重要な取り組みです。」
プロジェクトの進行に伴い、ピートランドの生態系が再び息を吹き返し、多様な動植物の生息地が再生されることが期待されています。
ピートとウイスキー産業の関係性
ピートは伝統的にスコッチウイスキーの製造に欠かせない燃料として使用され、独特なスモーキーフレーバーを生み出す要因でもあります。しかし、近年では環境負荷の観点からピートの使用削減や再生への取り組みが重要視されるようになりました。
スコッチウイスキー協会(SWA)は、2040年までにカーボンゼロを達成するという目標を掲げており、このプロジェクトはその戦略の一環として位置づけられています。同様の取り組みとして、サントリーグローバルスピリッツがアイラ島で進めているピートランド再生プロジェクトも挙げられます。
未来に向けた継続的な取り組み
ドゥガリーエステートのオーナー、ジェイミー・ギブス氏は次のように述べています。
「このプロジェクトがアラン島全体のCO2排出削減に大きく寄与し、地域環境に長期的な価値をもたらすことを期待しています。」
また、プロジェクト完了後も、ラグ蒸溜所は最初の5年間にわたるサイトモニタリングの資金を提供する予定です。カルドニアン・クライメートは、土地の生物多様性レベルや水質を定期的に評価し、プロジェクトの効果を測定します。
持続可能なウイスキー産業への道筋
こういったピートランド再生プロジェクトは、今や多くの蒸溜所が意識しだしています。ウイスキー業界が環境保護と伝統の維持を両立させるための模範的な取り組みといえるでしょう。ラグ蒸溜所が主導する今回のプロジェクトが、持続可能なスコッチウイスキーの未来を築く一歩となることを祈っています。