アメリカン・シングルモルト・ウイスキーが公式に法的な認定を受け、ウイスキー業界に新たな一歩を踏み出しました。
アメリカ産シングルモルトは過去数年間は非公式として存在していましたが、2025年1月19日から施行される新しい規制により、このカテゴリーは正式に成文化され、規制されることになります。
一方、日本のジャパニーズウイスキーは、自主基準による取り組みが進むものの、法的な枠組みの欠如が課題となっています。
アメリカン・シングルモルトとは?
アメリカ連邦アルコール・タバコ税貿易局(TTB)が定めたアメリカン・シングルモルトの条件は以下の通りです。
アメリカ国内で製麦、蒸溜、熟成されていること
原料から完成までの全工程がアメリカ国内で行われる必要があります。単一の蒸溜所で蒸溜されていること
他の蒸溜所の原酒をブレンドせず、1つの蒸溜所で製造されていることが条件です。蒸溜度数が160プルーフ以下であること(80%以下)
蒸溜工程では、アルコール度数がこの範囲を超えないよう管理されます。100%モルト化された大麦を使用すること
他の穀物を一切含まず、モルト化された大麦のみを原料とします。容量100リットル以上のオーク樽で熟成されていること
新樽、使用済み樽、チャー済み樽を問わず、容量が100リットル以上のオーク樽が使用されます。最低80プルーフ(アルコール度数40%以上)で瓶詰めされていること
消費者向けに販売される際のアルコール度数に下限が設けられています。
これにより、アメリカン・シングルモルトは他国のウイスキーと区別される法的な裏付けを得ました。
スコットランドのスコッチ・ウイスキーやアイルランドのアイリッシュ・ウイスキーに続く形で、アメリカ独自のウイスキー文化を国際的に発信するための基盤が整ったと言えます。
ジャパニーズウイスキーの現状
一方、日本ではジャパニーズウイスキーの表示に関する法的な定義は未整備のままです
ただし、日本洋酒酒造組合が2021年に自主基準を策定し、品質管理と透明性向上のために以下のようなガイドラインを設けています。
- 日本国内での醸造、蒸溜、熟成、瓶詰めが行われていること
- 熟成に使用される樽は容量700リットル以下であること
- アルコール度数は最低40%
- 人工甘味料や着色料は使用しない
この基準により、日本のウイスキーの品質保証が進んでいますが、法的拘束力がないため、基準を満たしていない製品がジャパニーズウイスキーとして流通しているケースもあります。
両国の違い:法的認定と自主基準
アメリカのアプローチと日本のアプローチを比較すると、法的拘束力の有無が大きな違いとして挙げられます。
項目 | アメリカン・シングルモルト | ジャパニーズウイスキー |
---|---|---|
定義の策定者 | 米国連邦アルコール・タバコ税貿易局(TTB) | 日本洋酒酒造組合(自主基準) |
法的拘束力 | あり | なし |
認定範囲 | 大麦麦芽100%のシングルモルト | 幅広い原料と製造工程を包括 |
国際的信頼性 | 高い | 改善の余地あり |
アメリカンシングルモルトウイスキーは、国が定めた厳密な基準により、そのアイデンティティが明確に保たれています。
この基準では、使用する原料や製造工程、熟成条件が細かく規定され、消費者に信頼性と品質保証を提供してるといえます。
これに対して、ジャパニーズウイスキーは業界団体が定めた自主基準に基づいて運営されています。
この自主基準は、製品の多様性や独自性を尊重する点では一定の評価を得ていますが、法的な拘束力がないため粗悪品が市場に出回るリスクが指摘されています。
この問題は、特に海外市場において、日本製ウイスキーへの信頼性を損なう要因となり得ます。
ジャパニーズウイスキーの未来に向けた課題
ジャパニーズウイスキー業界が直面する最大の課題は、「ジャパニーズウイスキー」の名称が海外市場で法的保護を受けられない現状です。
これにより、外国産原酒を混ぜたウイスキーも日本製と誤解される可能性があり、現在でもその問題は顕著です。
国内外でのブランド価値を高めるには、法的な認定を含むさらなる基準強化が必要です。
一方で、法的拘束力を伴う基準の導入は、中小規模の蒸溜所にとって新たなコストや生産上の負担となる可能性もあります。
このバランスをどのように取るかが、今後の業界の持続可能性を左右するでしょう。
ウイスキー文化研究所も「ジャパニーズウイスキー法制化推進プロジェクト」なるものをクラウドファンディングで展開しています。
まだ目標金額には未達のようです。