日本国内はもちろん、海外でも広く知られている岩手県発の日本酒「南部美人」。
すっきりとした後味でクセが少なく、日本酒初心者にも親しみやすいその味わいは、世界62か国以上に輸出され、各地で高い評価を得ています。
その南部美人が、新たな挑戦としてウイスキー生産に乗り出し、再び注目を集めています。
岩手県初のウイスキー生産
南部美人は2023年9月、岩手県で初めてとなるウイスキー生産を開始しました。
このプロジェクトは「日本酒の伝統的な価値観をウイスキー造りに活かしたい」という想いからスタートしました。
ユネスコの無形文化遺産に登録された「伝統的酒造り」の技術を駆使し、原料や製法にこだわり抜いたウイスキー造りが進められています。
久慈浩介社長は、「ジャパニーズウイスキーが世界で高く評価されている今、日本酒の価値観を融合させたウイスキーが新たな可能性を生むと信じています」と語ります。
日本酒と共通するこだわりの製法
南部美人のウイスキー造りには、日本酒造りの技術が随所に活かされています。
- 日本産麦芽の使用
GI日本酒が日本産米にこだわるように、南部美人では「日本産麦芽」を使用。現在は東北産麦芽で製造をスタートし、地域に根ざした素材にこだわっています。 - 仕込み水には日本酒と同じ伏流水を使用
折爪岳の伏流水を使用した仕込み水は、日本酒造りと同じ。透明感のある味わいを実現するこの水は、ウイスキーにも新たな個性を与えます。 - 日本酒酵母とのハイブリッド発酵
日本酒の酵母「南部美人酵母」とウイスキー用酵母を掛け合わせた発酵法で、伝統と革新を融合した香り豊かな味わいを目指しています。
熟成にも独自性を追求
南部美人では、日本酒の貯蔵に使われていた蔵をリノベーションし、ウイスキーの熟成に活用。
さらに、バーボンやミズナラに加え、地元岩手が誇る「漆の木」を使った樽の研究も進行中です。
この樽が、南部美人ならではのテロワールを反映したユニークなウイスキーを生み出す鍵になると期待されています。
熟成途中の試飲サービスも開始
2024年12月から、仕込んでから1年ほど経った原酒を有料試飲できるサービスを開始しました。
アルコール度数63%のニューメイクは、木の香りやレーズンのような甘い香りが特徴で、熟成過程を間近で体験できます。
発売前に同じ樽の変化を何度も試飲できるこのサービスは、ウイスキーファンにとって特別な楽しみとなるでしょう。
岩手から世界へ—次世代に受け継ぐ挑戦
2027年の販売を目指し、南部美人は親子二代にわたりウイスキー造りを継承していくといいます。
日本酒とウイスキー、異なる二つのジャンルで培われる経験が、地域の活性化にも寄与することが期待されています。
南部美人のウイスキーは、日本酒と同様に「綺麗で美しい味わい」をテーマに掲げています。その一滴が、岩手の大自然や二戸の風景を思い起こさせるような特別な体験を提供することでしょう。