ウイスキー業界が日本で急速に成長している今、金融機関とウイスキー蒸溜所との間で画期的な提携が実現しています。
ウイスキーの原酒在庫を担保とした融資、この新しい動きが今後のウイスキー業界にどのような影響を与えていくのか、興味深いです。
ウイスキー原酒を担保とした融資の実施
三井住友ファイナンス&リース株式会社(以下「SMFL」)は、津崎商事と熟成中のウイスキー原酒在庫を担保とした動産担保融資(ABL)の契約を締結し、初回の融資を実行しました。
この取り組みは、近年世界的に高評価を得ているジャパニーズ・ウイスキーの品質と、供給不足による製造業者の新規参入増加に対応するためのものです。
久住蒸溜所との取り組み
近年ジャパニーズ・ウイスキーの品質は世界的に高い評価を得ている一方、供給不足が続いており、製造に新規参入する事業者が増加しています。
津崎商事が運営する久住蒸溜所は、大分県竹田市の標高約600メートルの久住高原に所在し、県内初となるモルトウイスキー蒸溜所として2021年2月に設立され、伝統的なスコットランドの製法を守る事業者として国内外から注目を集めています。
また、「ウイスキー蒸溜所を中心とした地方創生モデル構築へのチャレンジ」をビジョンとして掲げ、県産大麦の活用による地産地消を行い、製造の工程で生じるポットエール(蒸溜残液)・ドラフ(麦芽の搾りかす)などの副産物を飼料として活用するなど、循環型ビジネスにも取り組んでいます。
長期熟成の課題とABLの解決策
SMFLは投資資金を回収するまでに長期間を要する点に着目し、リース事業で培ってきたモノへの知見を活かし、熟成中の原酒の価値を担保として評価するABLの事業化に至りました。
ABLを通じて長期熟成のためのサポートを行い、津崎商事が掲げる蒸溜所を中心とした地方創生への挑戦を支援します。なお、本件は、社内ビジネスコンテストのアイデアを基に検討を進めてきた取り組みで、同コンテストのアイデアが実現に至った初の事例となります。
他にも三菱UFJ信託銀行など、他の金融機関もブロックチェーンを使用した日本酒の商品化など、醸造所の資金繰り支援を拡大しています。
ウイスキー原酒の価値を担保としたABLは、ウイスキー業界の成長と共に今後も注目を集めていきそうですね。
地域振興や環境に配慮した経済活動の推進にも寄与し、金融機関と製造業の新しい連携モデルとして、さらなる展開が期待されます。
大正時代に醤油蔵として創業し、酒類販売事業を行ってきた津崎商事が、2021年2月にウイスキーの製造免許を取得し、店舗敷地内の約400m²の倉庫を改装して久住蒸溜所を設立。スコットランドのフォーサイス社製の蒸溜設備を導入し、ウイスキーを製造、販売。2022年に開催された第19回大分県ビジネスプラングランプリで優秀賞を受賞するなど、国内外から注目を集める蒸溜所。
久住蒸溜所のホームページ
https://kujudistillery.jp/