ひとつの時代が終焉します。
独立系ボトラー最大手、128年以上の歴史を持つゴードン&マクファイル社が、独立ボトラーとしてのニューメイクの買い付けを終了し、ストックのみを販売することを発表しました。
1895年に創業され、エルギンに本拠を置くゴードン&マクファイル社は、独立系ボトラーとしての活動を徐々に停止し、代わりに自社蒸留所(ベンロマックとケアン)に集中することを決定しました。
2024年からは、他の蒸溜所からニューメイクを購入し、自社の樽に詰めることはなくなります。
独立系ボトラーとして新しい樽の充填からは手を引きますが、同社にあるエイジングストックの消化は行います。樽はまだまだ豊富にあるので、今後数十年にわたってゴードン&マクファイル社の商品が棚に並ぶことをファンに約束しています。
この方向転換の理由のひとつは、合計60以上の蒸溜所との長期契約の多くが更新されなくなったことが挙げられます。
このまま予測通りに市場が肥大化すれば、蒸溜所自身の需要がさらに増加します。大小さまざまな独立系ボトラーもこれに耐えなければなりません。
退任予定のマネージングディレクターであるユアン・マッキントッシュ氏は、会社の方向性の変更は「自然な進化」であり、新たなスピリッツの供給が厳しくなり、これまでシングルモルトをボトリングしていなかったマイナー蒸溜所からのボトリングが増加したことが一部の原因であると述べました。
さらに近年の独立系ボトラーの仕入れ方法が変わったことにも触れています。
これまでは独立ボトリングするためにはウイスキーを購入し、自社の樽に充填するという流れでした。しかし現在はブローカーや類似チャネルを通じて成熟したスピリッツの樽を購入しているのです。これは現在の独立ボトリング市場では一風変わったアプローチで、ウイスキーの人気が急速に高まるにつれて、蒸溜所がニューメイクをより多く手元に保持するようになった結果です。
ゴードン&マクファイル社の経営哲学は「競争しないこと」でした。
30年以上前、同社は蒸溜所からブレンドに使われるようなウイスキーを買い付け、(シングルモルトとして)ボトリングしていました。つまり住み分けができていたのです。
しかし現在ではメジャー、マイナー問わず、ほとんどの蒸溜所が自社ウイスキーを直接リリースしています。
独立ボトラーとしての彼らの立ち位置は大きく変わり、オフィシャルのボトリングと競合しないような製品提供が求められています。
また、ウイスキーの人気上昇に伴い、蒸溜所が新規スピリッツを自社で保持する傾向が強まっています。これにより、自社ブランドで独自性と独立した製造空間を持つことが課題となっています。
この決定は6月末にロンドンで開催された試飲会で初めて発表されましたが、今日まで非公開となっていたようです。
また、ゴードン&マクファイル社の経営者たちは、最終的に自社の蒸留所を持つことは必然だと考えていました。
そして、その思惑は1993年にベンロマックの購入により具体化し、最近では新たな蒸溜所「The Cairn(ケアン)」を開設しました。ケアン蒸溜所からは12年以上熟成したウイスキーのみをリリースする計画のようです。これにより、同社は自身のエイジングストックのギャップを埋めることができます。
さらに、これまで8年~80年熟成までのウイスキーをリリースしていたゴードン&マクファイル社ですが、8年熟成のウイスキーはもはや提供する必要はないと考えています。同社は若いウイスキーで他の独立系ボトラーと競争することにほとんど意味がないと考えているからです。
今後は、シングルカスクや希少性の高いボトリングに注力し、ユニークな樽や蒸溜所の個性を大切に扱っていく予定です。
さらに、現在取引を行っている3つのボデガからシェリー樽を購入し、それらをベンロマックとケアンで利用する予定です。また、使用済みのカスクも再利用する計画です。
同社の主力店舗であるSouth Street店も変革の途中です。これまでの「ショップ中心の体験」から「体験中心のショップ」へと変えるための大規模な改装が進行中です。
ゴードン&マクファイルを知っているウイスキーラヴァー達が生きているうちには大きな変動を目の当たりにしないと思います。値段は間違いなく吊り上がるでしょうが。。。
実際に何かが変わると感じるのは、次の世代がウイスキーに触れる時かもしれません。
経営陣は、「ゴードン&マクファイルのウイスキーは、これからの100年間も私たちの事業の中心的存在であり続けるでしょう」と語っています。