おすすめの飲み方・飲み進め方
噛み応えのある肉厚な酒質を持つモートラック。
特徴はシェリーと硫黄、そしてプラムやナッツ。リコリスとシナモンの中に垣間見えるオレンジピール入りのスニッカーズ。
余韻は長くドライでビターです。
近年は原酒の若さが目立ち、フルーティになりましたが、そのビッグでスパイシーな味わいはエレガントな肉食獣の感じを残しています。
飲み方はストレートでじっくりがいいと思います。少量の加水もいいと思いますが、個人的にはチェイサー片手にストレート一択です。
ボトラーズではイアンマクロード社・チーフタンズシリーズの「シガーモルト」などが人気商品で、そのリッチで濃密なシェリー感はまさにシガーに合わせたくなる逸品。
オフィシャルボトルの金額がかなり高価格なので、まずはバーや小瓶販売で試してみましょう。
モートラックの発祥と歴史
どこで作られているのか?
モートラック蒸溜所は1823年創業。
ウイスキーの聖地と呼ばれるスペイサイド地方ダフタウンにて製造されています。
グレンフィディック 、バルヴェニー、グレンダラン(グレンデュラン) 、ダフタウン、アルタベーンetc…名だたる蒸溜所があるダフタウンの中で、初の政府公認の蒸溜所として建てられましたのがモートラックです。
その歴史は古く、1887年にグレンフィディックができるまでは、ダフタウン唯一の蒸溜所でした。
蒸溜所はダフタウンの町のはずれ、ダラン川とフィディック川が合流するあたりに建てられています。
モートラックとはゲール語で「椀状のくぼ地」という意味を持ちます。
モートラックの歴史
1823年、ジェームズ・フィンドレーターをはじめとする地元の納付3名が共同でマクダフ伯爵の領地を借り入れ、建設しました。
創業当初の蒸溜所は安定せず、幾度もオーナーが代わっていました。
一時期はエールビールの醸造に使われていたこともあったそうです。
設立から30年後、地元の技術者ジョージ・コーウィーが蒸溜所を購入。
ジョージ・コーウィー氏は英国の鉄道開発に大きく貢献した人物で、スコットランドに鉄道網を引いた実績をもつ技術者でした。
このジョージ・コーウィーが超やり手の実業家兼エンジニアという多才な人物なのです。
コーウィー氏は共同経営でウイスキービジネスをしていましたが、1867年からは単独オーナーに。
モートラックを手に入れたコーウィー氏は技術者のプライドを懸け最高のシングルモルトを作り出すという一念で究極の味わいを追求します。
またコーウィー氏の血を継ぐ息子のアレクサンダー・コーウィー氏もロンドン大学の薬学部に在籍し薬学を専攻した優秀な技術者でした。
彼は薬学の経験を生かし、ポットスチルを6基に増設し、現在もモートラックに伝わる「2.81回」の蒸溜システムを開発します。
このシステムは非常に複雑にできており、蒸溜のプロセスを理解するには「熟練の職人でも半年かかる」と言われているくらいです。
しかしこの緻密なシステムこそがモートラック独特のリッチでミーティな風味を生み出しているとされています。
アレクサンダーは62歳で引退を決意、ジョニーウォーカー&サンズ社に蒸溜所を売却しました。
1980年代にはジョニーウォーカー から12年もののモートラック12年(シングルモルト)がリリース。
1991年にはディアジオ社の「花と動物シリーズ」からシングルモルトがリリースされ脚光を浴びます。
モートラックの製法
モートラックの製法において最大の特徴となるのは「2.81」という蒸溜回数でしょう。
通常のスコットランドで作られているウイスキーの大多数の蒸溜回数は2回。
はたして「2.81回蒸溜」という極めて半端な蒸溜回数いったいどういう工程なのでしょうか。
モートラック蒸溜所には
- 初溜釜…①.②.③
- 再溜釜…①.②.③
併せて6基のポットスチルが設置されています。
その中から初溜釜①と再溜釜②が対になってニューポット1が造られています。これが1パターン。
変則的なのはここから。
まず残りの初溜釜②と③で
- ヘッド1
- ヘッド2
- ヘッド3
- テイル1
- テイル2
という5種類のスピリッツが造られます。
2つの初溜釜から作り出されるうちの半分量を占めるヘッド1は再溜釜②に流れ2回目の蒸溜が行われニューポット2が造られます。これが2パターン。
残りの
- ヘッド2,3
- テイル1,2
という4種類のスピリッツは再溜窯③に流され再溜されるわけですが、この残った③の再溜釜が非常に複雑なつくりとなっており、特別にウィー・ウィッチ(小さな魔女)という名前がつけられています。
ウィー・ウィッチの中では更に3段階の蒸溜が行われているのです。
めっちゃめちゃ複雑なんでざーっと書いておきます(笑)。
- 1段階…テイル1を蒸溜しフェインツを精製
- 2段階…フェインツを2つに分ける
- 半量のフェインツとテイル2と掛け合わせて蒸溜→フェインツAを精製。
- 残り半量のフェインツとヘッド2を掛け合わせて蒸溜→フェインツBを精製。
- 3段階…フェインツC精製
- フェインツAとヘッド3を掛け合わせて蒸溜、フェインツCを精製。
- さらにフェインツCに前段階で造られたフェインツBを掛け合わせニューポット3完成
ここまでで造られた3種類のニューポットを掛け合わせ、ようやくモートラックとしてのニューポットが完成するというわけです。
いやーすごい工程だ。
できあがった原酒は昔ながらのワームタブによって冷却されます。
ワームタブは大量の水を使いますが、時間をかけゆっくりウイスキーが冷やされるため豊かな風味が原酒に残るといわれています。
発酵槽はカラ松製で6基設置おり、仕込み水はコンバルヒルの泉の水が蒸溜されています。
モートラックのボトリングの度数は基本に43.4%となりますが、それにはこんな理由があります。
禁酒法を廃止したアメリカでウイスキーの需要が拡大した際、多くのブレンデッドウイスキーが出回る中、モートラックはシングルモルトにこだわり続け、高級デパートなどの限られた場所でしか販売されていませんでした。
そのとき販売されていたモートラックのアルコール度数が43.4%だったため、今も変わらずこれを採用しているそうです。
モートラックのラインナップ
モートラック 12年
こちらは2019年3月に行われたリニューアルから発売開始された新ランイナップ。
現在のフラッグシップ的なボトルといえるでしょう。
新ラインナップも、上記で解説した43.4%という伝統的な度数に調整されています。
オーク材に苺ジャムを塗ったかのような芳醇で深い香り。
力強いバニラやレーズン、カカオの甘い香りも。
味わいはスパイシーで中盤からショウガの風味がグッと広がるイメージ。
最初はカカオ、カスタードクリームの優しい甘み、中盤からチェリー、ブラウンシュガー、酸味を帯びたカカオ。
ミーティと例えられる肉をローストしたような旨みも感じられます。
モートラック 16年
こちらも2019年3月のリニューアルから販売されているニューフェイス。
12年もののワンランク上のボトルとなります。
麦芽とジャムを煮立てたような濃厚で骨太な香り。土っぽさや奥にハーブなどのスパイスも感じます。
味わいは力強くフルボディ、なめし革、レーズン、アプリコット、ハチミツ、ジャム、木酢。少しパイナップル。
余韻は長め、16年の熟成期間を感じさせます。
加水してもよく伸びるため飲み方を選ばないオールラウンダーなボトルです。
モートラック 20年
現行ラインナップにおいて最高ランクのボトル。
香りはプルーンやレーズンなどのドライフルーツをグッと閉じ込めたような濃厚さ。加えてタバコの葉のような甘みと酸味。シナモンパウダー、お香のような匂いも。
味わいは口に含んだ瞬間力強く広がるドライフルーツの甘み、ハーブのスパイス、ややオイリーなテクスチャで若干のスモークを感じます。
スイートでありスパイシー。オレンジマーマレードを感じる残り香と長い余韻。
20年の熟成感はしっかりありますが、もっとハイプルーフを飲んでみたくなります。
その黄金色のたたずまいもさることながら、旨みの詰まった極上のボトルといえます。
モートラック レアオールド
こちらは2019年3月以前に販売されていた過去のスタンダードボトル。
熟成年数表記のないノンビンテージとなります。
シェリー樽とバーボン樽を組み合わせて造った独自の樽で熟成しています。
香りはレーズン、糖蜜、バニラ、はちみつなどシェリーとバーボンの樽材の個性が混在しているイメージ。
味わいはシェリー由来のプラムやレーズンが先に来て、後からバーボン由来のバニラカスタード、カカオが追いかけ、後半に牧草のような乾いたハーバルな風味も。
モートラック特有の力強さと清涼感を持ち合わせたバランスの良いボトルです。
モートラック 18年
こちらもレアオールドと同様、シェリー・バーボン樽で使われていた樽材を組み合わせたリメード樽を熟成に使用したボトル。
香りは優しく焦がしたカラメル、ブラウンシュガー、ベリー系のタルト、クッキー。
味わいはカラメル、ジンジャーブレッド、ウエハース、シナモンスティック。ローストビーフのようなミーティさも感じます。
ボディに厚みがありジューシー。
くっきりとした甘み、旨みが詰まったボトルです。
モートラック 25年
こちらは25年以上という長期熟成原酒が使われているボトル。
香りはアプリコット入りのダージリンティー。
心地よい酸味とハーバルな香り。
奥に黒胡椒のスパイスも潜みます。
味わいはドライプラムの力強い甘酸っぱさ。デーツの濃厚さ。
ローストアーモンド、バニラクリーム、香水のようなエレガントなアロマ。
加水せず、ストレートでじっくり飲むことをお勧めします。
モートラック 16年 花と動物シリーズ
こちらは2002年に終売したUD社からディアジオ社からリリースされた「花と動物シリーズ」で、モートラックもこちらから16年ものリリースされていました。
香りはビターチョコ、ラムレーズンアイス、ウエハース、奥に若干のアンズ。
口に含むとバニラ、レーズン、カカオなどをミキサーにかけて濃縮したような芳醇でコクのある味わい。
深いウッディな余韻も長く、じっくりと味わえる内容に仕上がっています。
花と動物シリーズは伝説のラインナップ。
見かけた際には是非お試しください。
スペイサイドの旨味担当モートラック。
価格は「野獣」です。かわいくない。ぜんぜん。
オフィシャルの長期熟成品はめちゃめちゃ高いので、バーや小瓶販売でちょびっと飲むのが吉かと思います。
ざっくり覚える!
モートラックはスコットランドのスペイサイド地方にて製造されるシングルモルトウイスキーで、現在モエ ヘネシー ディアジオ株式会社(以下MHD)が蒸溜所を所有し製造・販売を行っています。
6つの蒸溜所が点在することで有名な「ダフタウン」エリアに存在し、ダフタウンの蒸溜所の中で唯一、第二次世界大戦中も操業を許可された蒸溜所で有名です。
モートラック最大の特徴は特殊な蒸溜プロセス「2.81回蒸溜」を行っていること(2回でも3回でもない、この鬼複雑な蒸溜システムは後述します)。
これによりリッチでミーティ(肉っぽい)、重厚な風味を生み出しており、昨今では「ダフタウンの野獣」と呼称しているそうです(メーカー側が)。
日本のウイスキー愛好家には古くから人気で、一時はマッカランを凌ぐほどと言われていました。ジョニーウォーカー などのブレンデッドウイスキーのキーモルトとして使われており、今なおファンの多いブランドです。