ミルトンダフの種類と味わい
ミルトンダフ15年 バランタインシングルモルトシリーズ
2018年にリリースされたバランタインのキーモルトをシングルモルトとしてリリースしたシリーズの中の1本。
他にグレンバーギとグレントファースが同シリーズとしてリリースされました。
品のある甘みとシトラスで透明感のあるすっきりとした味わいのボトルです。
バランタイン17年と飲み比べてその存在感を確かめてみるのも一興です。
香りはすっきりとした軽やかさがあり、透明感のあるシトラス、りんご、シリアル、干し草、干し芋、ピート感とは違う藁を焼いたような香ばしいスモーク感が奥に少しだけ潜みます。
味わいはクリーミーな口当たりで、シトラスジュースとメープルシロップ、中間に干し草や干し芋を感じます。透明感のある蜜っぽい甘みと乾いた麦芽風味、みずみずしいレモンウォーター、後半にシナモンの効いたシリアルの香ばしさと適度な甘さのドライフルーツ。
すっきりしている割にしっかりと残るオークの余韻。
1万円を切る買い求めやすい価格、そしてバランタイの中核を担うスッキリしているけど主張のある風味はサスガ!と思えますね。
ミルトンダフ蒸溜所ラベル 1994
ゴードン&マクファイルのミルトンダフです。20年もののシングルカスク。
「蒸留所ラベル」は、各蒸留所との長く深い関係から蒸留所公認で生まれたオリジナルラベルでGM社のみに許された商品です。
ウイスキーが出来た瞬間からGM社が用意した樽に詰められ、各蒸留所にて熟成、その後GM社倉庫にてボトリングされた看板商品です。
軽くてフローラルな香りが、パイナップルやバニラに覆われていく。口に含むと、赤リンゴや洋ナシ、オレンジの味わい。
ミルクチョコレートのニュアンスを伴い、長く続いていく。
同蒸溜所ラベルには10年物の「ミルトンダフ 10年 40% ファーストフィル&リフィルシェリーカスク」も存在しました。
ミルトンダフ12年 1990年頃まで流通
こちらは80〜90年代にかけて流通していた過去のオフィシャルボトル。
12年もののミルトンダフです。
こちらはグリーントール瓶のシールですが、シルクプリントのものもあります。
これ、好きな人多いっすね~。僕もいくつか所有しています。
ボトラーズからは多くリリースされているミルトンダフですが、オフィシャルボトルとなるとその数が激減してしまうので、見かけた際には本家の味わいを体感しておくことをお勧めします。
香りは華やかでフローラル、白ぶどう、シトラス、シルキーなバニラクリーム。
味わいも華やかで繊細、シトラス、麦芽の甘み、バニラ、オークの繊維、それぞれの個性がとてもデリケートで絶妙なバランスで同居している、素晴らしい出来栄えのボトルです。
70年~80年代に流通した「ミルトンダフ-グレンリベット-」と表記されているものもあります。
おすすめの飲み方・飲み進め方
バランタインの骨格担当と言われてますね。
バランタイン以外にもアンバサダーなどのブレンデッドウイスキーにも使われています。
バランタインのキーモルトの中では樽感が強くて、味に厚みがあります。シナモン感が強くてややローストされた麦芽を感じます。これが重さの所以かもしれませんね。
個人的にはボディだけであればグレンバーギのほうががあるような気もします。
おすすめの飲み方はストレートで、バランタイン17年との飲み比べをやってほしいですね。キャラクターが拾えてとても面白い。加水しても崩れませんが、ストレートで飲んだほうが特徴が掴めると思います。
15年を飲んで気に入ったら、ぜひオールドのグリーントール瓶やグレンリベット表記のものをBarで飲んでみてください。非常に強い麦の味わいと、りんごとハチミツ、12年とは思えない熟成感があります。
たくさん出回っていたので、まだ置いてあるバーも多いですし、オークションなどでも購入できるかと思います。
ボトラーズのミルトンダフは短熟リリースが増えています。ハイプルーフものはバニラ感が強め。半分まで減らすか1年くらい置くと美味しいです。
25年オーバーの長熟ものは過熟気味のものもあるので、お気をつけて。
ミルトンダフの発祥と歴史
どこで作られているのか?
ミルトンダフ蒸溜所はマレイ州の中心地エルギンから5キロほど南西に下った場所にあり、この周辺は「イギリスで最も良質の大麦がつくられる」といわれる評価の高い農地が広がっています。
近くにはブラックバーンと呼ばれる川が流れており、この川の水質はピート層をくぐり抜けたコーヒーのような黒い色でウイスキーづくりに適しているといわれています。
そんな好条件から、この一帯は昔から密造酒が盛んにつくられてきました。
蒸溜所のすぐ近くには1236年に建てられたプラスカーデン修道院があり、ベネディクト派の修道僧たちが古くから地元の小麦とブラックバーンの水を使ったエール (ビールの一種)をつくってきました。
このエールはかつて「スコットランドで一番美味い」といわれ、 修道院に莫大な富をもたらしたといいます。
そのため毎年1月1日になるとプラスカーデンの修道院長はブラックバーンへ行き、川原の石の上にひざまずき、祈りを捧げていたそうです。
ミルトンダフでもブラックバーンの水が使われており、1895年に拡張工事を行なった際、ブラックバーンの石がスチルハウスの壁に埋め込まれたそうです。(現在その石の所在は不明だそうです)
またこの修道院ではエールだけでなく、かなり古くからウイスキー蒸溜も行なっていたといいます。
スコットランドの蒸溜技術はもともとアイルラ ンドの修道僧が伝えたという説もあるくらいですからプラスカーデンでウイスキーづくりが行なわれていても不思議ではありません。
日本に置き換えると、お坊さんが本業そっちのけでお寺でお酒をせっせとつくっていた…しかもそれが好評で売れまくっていた…とのことで軽くツッコミを入れたくなるエピソードです。
ミルトンダフの歴史
ミルトンダフの創業は1824年。
アンドリュー・ピアリー、ロバート・ベインの2人によって建てられました。
蒸溜所の建物はもともと修道院が経営する製粉所を改築してつくられました。
このことから創業当初蒸溜所は製粉工場を意味する「ミルトン」と呼ばれており、「ダフ」が付けられたのはその後ダフー族がオーナーになってからのこととなります。
大きな動きとしては1936年にカナダのハイラムウォーカ一社が買収し、傘下のジョージ・バランタイン社が運営を行うこととなりました。
これ以来今日に至るまでミルトンダフはバランタインの重要なモルト原酒として使用され続けています。
1964年には同社が2基のローモンドスチルを導入。
このローモンドスチルはハイラム社が開発したもので短い円筒型のネックが特徴で、還流効果が低く、豊かでコク深いヘビーな酒質を生み出すことができます。
ハイラムウォーカ社はミルトンダフの他に
- インヴァーレーベン蒸溜所(別称ローモンド)
- グレンバーギ蒸溜所(別称グレンクレイグ)
- スキャパ蒸溜所
などにローモンドスチルを設置。
香味のバラエティーを増やすために従来の伝統的な蒸溜器に併設されました。
このスチルを使用してつくられた原酒はミルトンダフと区別され「モストウィー(Mosstowie)」という名で販売されました。
しかし1981年にローモンドスチルは撤去、これによりモストウィーの販売もストップし、今では幻の酒となりつつあります。
ローモンドスチルは整流板の洗浄がしづらかったことと、他社からの受注が少なかったために廃止されました。
蒸溜所のその後1987年〜2005年までアライド社が保有し、2005年以降はペルノリカール社がオーナーとなり、現在に至ります。
ミルトンダフの製法
ミルトンダフで使われている麦芽はノンピーテッドのものを使用。(モストウィーは若干ピーテッドの麦芽が使われていたそうです)
糖化槽は15トン。
発酵槽はステンレス製で5万ℓのものが×18基設置されています。
ポットスチルは全て昔ながらのストレートヘッドで
- 初溜×3基(各18,000ℓ)
- 再溜×3基(各17,500ℓ)
計6基が設置されています。
初溜釜はエクスターナルヒーティング式で、再溜釜はスチームケトル式。
エクスターナルヒーティング方式とは蒸溜器の外で加熱を行った後、中に戻して蒸溜する特殊なタイプで、ミルトンダフの他にグレンバーギやグレングラッサなどで採用されています。
仕込水はブラックバーンの水を使用。
年間生産量は550万ℓですがそのほとんどがバランタインのキーモルトとして出荷されています。
ざっくり概要と味の特徴
ミルトンダフはスコットランドのスペイサイド地方でつくられるシングルモルトウイスキーで、バランタインのキーモルトとして有名です。
現在オフィシャルリリースはないのですが、サントリーが2018年にバランタインのキーモルトをシングルモルトとしてリリースした
「ミルトンダフ15年 バランタインシングルモルトシリーズ」がその役割を果たしています。
シングルモルトとしてのリリースが少ない隠れた名酒といった存在のブランドです。
スイートでフルーティですが、後半に特徴的なビターさがあり、飲みごたえは軽すぎません。ミルトンダフは和食にも合うと個人的に感じています。
現在販売元はペルノリカール社となり、日本での販売はサントリーが行なっています。