アイラミストの種類と味わい
アイラミスト 8年
過去のフラッグシップ的立ち位置のボトルです。
現在は「オリジナル ピーテッド」をよく見かけますが流通量も多く、町の酒屋さんやちょっとしたショッピングモールのお酒売り場でも見かけることができます。
香りはラフロイグが少し優しくなったピート&スモーク、その後に青リンゴ、洋梨系のフルーティさ、フローラルなニュアンスも含んでいます。
口に含むとやや厚みのあるボディで味わいは洋梨、レーズンなどの甘みとジンジャー系のスパイシーさ、シリアルの香ばしさの後、焦がしたオークのスモーク感が訪れます。
ラフロイグの重厚なインパクトが薄れ、スモーキーで飲みやすいブレンデッドです。
アイラミスト デラックス
アイラミスト8年の後にフラッグシップ的な立ち位置についた「デラックス」。
原酒の節約からか、5年熟成のノンエイジものになりました。
しかしこちらも終売で現在は↓のオリジナルピーテッドがその後継です。
アイラミスト オリジナルピーテッド
以前は「デラックス」という名前で販売されていましたがリニューアルし、デザインも一新されました。
8年ものにかわりこちらがアイラミストのフラッグシップに変わりつつあります。
内容は5年以上熟成された原酒がブレンドされています。
香りはガツンとくるピートとスモーク、チェリー、レーズン、ダークチョコ、奥にグレープフルーツのような柑橘系も潜みます。
口に含むとスムースな飲み口で、初めはアルコールからくるドライ感、ブラックベリー、コーヒー、レモンやグレープフルーツの柑橘系、後半にかけてビターチョコのほろ苦さ。
アルコールの刺激を少々感じますが甘みとビター、スパイシーさをしっかりと感じられる1本です。
アイラミスト 10年
10年熟成のアイラミスト。
『アイラ・ミスト8年』と比較すると、より滑らかなピート香と複雑味、ドライフルーツのようなリッチな厚みを感じると書いてありますが、正直ピート薄いですね。
これなら8年のほうが個性的だったかな。
薄口のピート、ナッツ入りチョコレート、うっすら赤リンゴ。まさに薄めたラフロイグの香りです。
味わいは水っぽいハチミツと木質感のある樹液に煙が薄く乗るイメージ。ややシロッピー。
アイラミスト 12年
こちらは12年もののアイラミスト。
このクラスになるとようやく熟成感を帯び、味に深みが出てきます。
鼻を近づけるとラフロイグ由来のヨード、スモーキーさ、シリアルの香ばしさ、カラメルのほろ苦いアロマ。
味わいは最初にスパイシーさがあり、後からスモークしたドライフルーツ、シリアル、メープルシロップなどの甘みがじわ〜っと浮き出てきます。
余韻は相変わらず短く、ミディアムショートな感じですがヘザーを割としっかり感じます。
アイラミスト 17年
こちらは17年もののアイラミスト。ハイエンドのラインナップとなります。
香りはタバコの葉、キャラメルソース、スモークしたドライプラム、松ヤニ、ココア。
味わいはオイリーでローストアーモンド、カラメル、ビターチョコ、シナモン、紅茶、後半にかけてミント系のハーブも感じます。
価格帯としては悪くない味わいだと思います。落ち着いたスモーキーさとチョコレートの味わいはラフロイグとは別物の個性を確立していると言えます。
アイラミスト 21年
アイラミストの最長熟品。
香りは焦がしたトーストとコーヒー、シナモンパウダー。少しの牡蠣、ラフロイグっぽい。
味わいはほろ苦く、ナッティ。コナコーヒー。その後キャラメルと少しお菓子っぽいマンゴーキャンディのような味。
40度ですが飲みごたえは結構あります。水っぽさも気にならず満足度の高い逸品。
アイラ ミスト 8年 マンサニージャ ラ ヒターナ カスク フィニッシュ
アイラ・ミストとイダルゴ社による共同開発商品で、日本向けに特別に造られたボトル。
8年熟成の原酒を約5カ月の間、スペインから運ばれたラ・ヒターナの樽に入れ、互いの香り・味わいが生きる最良のタイミングでボトリング。
アイラミスト 8年 アモンティリャード
アイラ・ミストとイダルゴ社による共同開発商品で、日本向けに特別に造られたボトル。
マンサニージャの有名ワイナリー「ボデガス・イダルゴ」で製造する「アモンティリャードシェリー ナポレオン」で使用されていた樽で、瓶詰め前に約6ヶ月熟成しています。
アイラミストの特徴的な香りと味わいに、シェリーの古樽の深みが重なり、よりリッチで存在感のある仕上がりになっています。
アイラミスト 8年 パロ コルタド
アイラ・ミストとイダルゴ社による共同開発商品で、日本向けに特別に造られたボトル。
30年以上熟成する希少シェリー「パロ・コルタド ウェリントンVORS」に使われていた100年以上の古樽を使用し、長期熟成シェリー由来の複雑な香りと、アイラミストの穏やかなスモーキーさが融合しやわらかでエレガントな丸みが特徴です。
おすすめの飲み方・飲み進め方
頼みの綱はラフロイグ。イアン・ハンター会心の作ですね。
そもそもアイラモルトに馴染みのないお客用にあつらえたものなので、アイラ入門用と思えばよくできていると言えます。
フルーティなピーティさと、ナッツのスパイシーさが魅力。ちょっと薄口に感じてしまうのは、加水量が多くシロップ感が強いからだと思います。
ラフロイグカスクでフィニッシュしてるボトルってこういうイメージです。アードモアとか。
オリジナルピーティは、アイラがあんまり得意でない方も飲めると思います。
ピートは弱いのでアイラ好きには逆に向かないです。
飲み方はストレートかロックがいいです。ハイボールや水割りを好む方もいますが、ちょっとバランスが崩れると思います。
長熟には21年があるのですが、いいですよ。やや薄味ですが、ラフロイグの割合結構多いんじゃないかな。
気になる方はひとくちウイスキーでも扱っているのでぜひ。
アイラミストの発祥と歴史
アイラミストは1922年、かつてアイラ島の大地主だったマーガデイル卿が、息子の21歳の誕生日を祝うパーティー用にプライベートブランドとしてつくられました。
ちなみに日本では20歳を成人としてお祝いしますが、イギリス(もちろんスコットランドも)は18歳を成人としています。
しかし昔の成人年齢は21歳で、現代でもその名残で21歳を伝統的な成人式として盛大に祝う風習があるのです。
マーガデイル卿の息子の21歳のパーティー会場となったのは、ブリッジエンドの近くにあるアイラハウス。
部屋数100以上あったといわれる大邸宅でした。
当時マーガデイル卿はアイラ島の領主として、島北部の大部分の土地を所有していたそうです。
ウイスキーの製造を担当したのは、ラフロイグのオーナーだったイアン・ハンター氏でした。
イアン氏は1908年に伯母からラフロイグの経営権を引き継ぎ、当時アイラ島の名士として誰もが知る存在の人物でした。
禁酒法時代のアメリカにラフロイグを売り込むことに成功したビジネスマンで、ラフロイグは“薬酒” として薬局で売られていました。
ラフロイグの薬臭さは説得力がありますもんねぇ。笑
当初マーガデイル卿はシングルモルトのラフロイグをパーティーで提供しようと考えていたようです。
しかしアイラモルトに馴染みのないパーティー客に100%のラフロイグは強烈すぎるだろうということで、これにスペイサイドモルトとグレーンウイスキーをブレンドして提供しようということに決定しました。
イアン氏がブレンドした試作を飲んだマーガデイル卿が「これはアイラの霧のようだ」とコメントしたのがアイラミストの始まりだといわれています。
長きに渡りアイラミストはプライベートブランドでしたが1980年代以降、ラフロイグのオーナーとなったアライドディスティラーズ社が復活させ、一般的にも流通するようになりました。
1993年にグラスゴーに本拠を置くマクダフ・インターナショナル社がブランド権を買い取り、現在に至ります。
アイラミストの製法
様々な来客のお口に合うようマイルドにブレンドすることで誕生したボトルが、次々ラインナップを増やす人気シリーズとなりました。
アイラミストの開発当初のオリジナルレシピは、アイラモルトのラフロイグにスペイサイドのグレングラント、そしてザ・グレンリベットをブレンドしていました。
現在はよりマイルドでフルーティな風味を効かすため、ラフロイグの他に数種類のハイランドモルトをブレンドしているといわれています。
アイラミストのモルト原酒の比率は、35~70%と高めに設定されているので、3000円前後のブランドとしてはかなり嬉しい構成ですね。
ラベルにはアイラ島の大紋章、グレートシールが大きく描かれています。
これはかつてアイラ島民がヴァイキングと戦いアイラ島を奪い返した証で、紋章にはそのとき戦いの指揮をとったサマーレドの子孫でアイラ島の繁栄に大きく貢献したアンガス・モーとアンガス・オグ親子が描かれています。
このアイラ島を巡る戦いについては土屋守氏が2話に分けて非常に詳しく記されています。
非常に面白いのでアイラモルトファンの方は是非!
ざっくり概要と味の特徴
アイラミストはアイラモルトのラフロイグを核として、スペイサイドやハイランドのモルトを掛け合わせてつくられるブレンデッドスコッチ。
「アイラの海霧」という名の通り、アイラ(ラフロイグ)特有のスモーキーさを感じられるウイスキーとなっています。
日本でも地味に人気でして、最近では日本限定のカスクフィニッシュものもリリースしています。
安い割にそこそこうまい。
ボトラーズとして有名なマクダフ・インターナショナル社が販売元で、日本での販売はユニオンリーカーズ(株)が行っています。