おすすめの飲み方・飲み進め方
フィンラガンよりもガツンと来るメディシナルなピート。鼻を刺激するフレッシュなアイラモルトフレーバーに、若いラフロイグを予想される方も多いようです。
口に含むとややオイリーで潮気があり、甘さは控えめ。代わりに骨太なボディとコクがあります。
恐らくこのヘヴィな酒質がラガヴーリンとも言われる理由でしょう。ラガヴーリン8年などと比べてみても面白いですよ。
おすすめの飲み方はハイボールですが、水割りやロックでもおいしいです。
暑い季節にこういったヤングアイラのフレッシュスモーキーなハイボールは最高ですが、意外にも万能です。
加水しても崩れにくく、色々な試してみたくポテンシャルがあります。
カスクストレングスはガツンとストレートで。
短熟好きにはたまらないパワフルな燻煙香と温かいフィニッシュが愉しめます。
ハイボール要因としても優秀なので、一本お家にあると幸せになります。非常にコストパフォーマンスに優れたボトルと言えます。
アイリーク(イーラッハ)の発祥と歴史
アイリークをリリースしているザ・ヴィンテージ・モルト・ウイスキー・カンパニーの創業者、ブライアン・クルックは元々ボウモア蒸溜所のスタッフでした。
ボウモアを退社した後、1992年にヴィンテージ・モルト・ウイスキー社を設立。
フィンラガンやグレナルモンドなど新しいブランドボトルをリリースしていきます。
アイリークはクルック氏が姉妹会社のハイランズ&アイランズ・ウイスキー社を設立した、1997年に発売を開始しました。
アイラ産モルトではあるものの、蒸溜所名をシークレットとしたアイリークはウイスキーファンの間で話題となりました。
売れ行きが好調だったため、3年後にアイリークのカクスストレングスがリリースされラインナップが強化されていきます。
アイリークがリリースされた頃のアイラ島は、8つの蒸溜所しかないうえに、中でも強烈な個性を放つ蒸溜所となると的が絞られていきます。
何処の蒸溜所でつくっているのか…限られた選択肢の中で「当たり」を予想したり議論したりする楽しさがこのボトルにはあります。
また蒸溜所のオフィシャルボトルに比べると買い求めやすい価格で提供されているのも消費者にとっては嬉しいポイントです。
「アイリーク」は英語読みで、ゲール語による発音は「イーラッハ」となり、地域によって呼び名が変わります。
アイリークは「アイラ島民、アイラ島の真の男」を意味します。
※ちなみにアイラ島の地元紙で「Ileach(イーラッハ)」というローカルニュースペーパーがあります。
アイリーク(イーラッハ)の製法
繰り返しになりますが、アイリークはあくまでブランド名(商品名)であり、ウイスキーをつくっている蒸溜所の名前ではありません。
アイラ島には個性豊かで歴史ある8つの蒸溜所が存在しますが、アイリークはそのいずれかの蒸溜所の原酒を使用してつくられたボトル。原酒を買い取り、独自に保存・熟成し、シングルモルトとして販売しているものです。
なぜそんなことをするのか…?
フィンラガンのページでも書きましたが、今回は原酒を売る蒸溜所側のイメージ戦略について書きましょう。
蒸溜所がボトラーズ会社に樽単位でウイスキーを販売する際、所有権の問題から「蒸溜所名を名乗らないでくれ」と条件付きで販売するケースがあります。これを承諾しなければボトラーズ業者には樽を販売しませんよ、というなかなか厳しい内容の取引です。
アイリークやフィンラガンといった蒸溜所不詳のボトルは、こういった条件下で取引されているケースが多いといわれています。
蒸溜所を伏せリリースすれば、もし世間の評価が悪くても出所となる蒸溜所の評価に傷がつくことはありません。
逆にヒットすれば、蒸溜所のヒントとなる情報を少しだけ流して評価を上げることもできる…というわけです。戦略に富んだ取引方法なのです。
しかしアイリークはこのちょっぴり謎めいた部分を逆手に取り、宣伝材料として上手く利用し、その名を世に知らしめました。
アイラモルトファンであれば、実際に飲んでみてどの蒸溜所のモルトか確認してみたくなるというもの。
他にもスモークヘッドやピーツビーストなど蒸溜所不詳のアイラ系シングルモルトは幾つかリリースされており、いずれも高い人気を誇っています。
ちなみにアイリークの中身の正体については、熟成年数の若いラフロイグ、またはラガヴーリン…といわれています。
日本ではラガヴーリン説が有力となっていますが、海外ではラフロイグ説も強く、実態は謎に包まれています。
また少数ですが、カリラではないかという意見もあるようです。
アイリークはその味わいも高く評価されており、1999年の「インターナショナルワイン&スピリッツコンペティション」ではアイリークの5年ものがなんと金賞を受賞しています。
ウイスキーバイブルなどにも2004年以降からたびたび登場し、2014年のScottish Field Whisky Challengeでも銅賞に輝いています。
謎めいていてしかも美味しい!(しかもお手頃!)となれば人気が出るのも納得です。
アイリーク(イーラッハ)のラインナップ
アイリーク
こちらはアイリークのフラッグシップボトル。熟成年数が記載されていないノンエイジボトルです。
蒸溜所不詳とされていますが、その中身は若いラガヴーリン、もしくは若いラフロイグの原酒が使われているのでは…といわれています。
香りは強烈なピート&スモーク。やや強いアルコールアタック。うがい薬やクエン酸のようなアロマ、奥からビスケット、ビターチョコなども感じられます。ややクリーミーでハーバルな点も。
味わいも最初に強い薬品香がドドっと押し寄せた後、その引き際から麦芽ウエハース、バニラ、ハチミツの甘さがあります。ややオイリーで後半にかけてコショウのスパイシーさが訪れ、長めの余韻を楽しめます。
若い原酒を使用している感じは否めませんが、加水しても甘みが開くので、飲み方を変えながらゆっくり楽しめるお値段以上のボトルです。
アイリーク カスクストレングス
こちらは加水無しのカスクストレングスにてボトリングされたアイリーク。
フラッグシップと並べるとボトルデザインが酷似しているため、目を凝らしてカスクストレングスの表記を確認する必要があります。
またはアルコール度数58%に着目しても良いでしょう。
香りはフラッグシップを重厚にしたピートスモーク、ナッツ、オイリー、奥にレモンピールのような柑橘系も感じ取れます。
口に含むと厚みのあるボディで、すぐにピート香とヨード感が鼻腔を埋め尽くし、その後にビスケット、煎ったアーモンド、エンジンオイル、レモンピール、後半にブラックペッパーのスパイシーさ、木酢など重曹的な風味で口内が満たされます。
海辺のバーベキューのような余韻も非常に長く、ゆっくりと長く楽しめる充実した内容となっています。
フラッグシップや12年ものはラガヴーリンを印象づける要素が多く感じられるのですが、このカスクストレングスを飲んでしまうとラフロイグ説もなんだか頷ける…そんな印象を抱く感慨深いボトルです。
アイリーク 12年
熟成年数12年以上の原酒を使用してつくられた12年もののアイリークで、現在は終売しています。
フラッグシップボトルにくらべるとアルコール由来の刺激、カドがとれ円熟味を感じられるボトルに仕上がっています。
香りはフラッグシップに比べるとやや落ち着いたピーティさ、しかし強烈なヨード感は健在で、あ、ラガヴーリンと思わされました。
スモーキーさの後にビスケットやドライフルーツ様の甘やかな香りが訪れ、どっしりとした樽香も感じられます。
味わいもフラッグシップよりも丸みを帯びたピート&スモーキーの後にオイリー、カカオパウダー、ダークチェリー、ダークチョコレート、後半にかけてウッディなスパイシーさも現れ、複雑な味わいを演出します。
コクと深みのあるやさしいアイリーク。
安くて旨いスモーキーモルト第二弾、今回はアイリークを特集してみました。
2020年、2021年はコロナ禍で宅飲み需要が増大した年でした。
こういったキャラクターが立っていて、比較的低価格なボトルはとても重宝されている印象です。
ざっくり覚える!
アイリークはスコットランドのアイラ島にてつくられているシングルモルトウイスキーで、グラスゴーに拠点を置くボトラーズの「ザ・ヴィンテージ・モルト・ウイスキー・カンパニー」からリリースされています。
アイリークは「アイラ島にある何処かの蒸溜所でつくられた原酒」を使用しているのですが、その蒸溜所名はシークレット。
謎のアイラモルトというわけです。
同社からは他にも、蒸溜所非公開のアイラモルトブランド「フィンラガン」がリリースされています。
フィンラガンとアイリークが別ブランドとして確立していることから、この2つの出所となる蒸溜所は別であることが予想されます。