ゴツゴツした大きな氷にトクトクとウイスキーを注ぎ、氷の融解からくる加水で変化する味わいを楽しむ…。
時おり聞こえてくるカランと乾いた音に耳を傾けるのも風流です
BARRELでも『ウイスキーの飲み方』を基本~応用まで数多く紹介しています。
その中でもとりわけ氷を使用した飲み方は多く「オン・ザ・ロックス」をはじめ「ハイボール」「水割り」「ミスト」などが存在しています。
飲み方によって使用する氷にも種類があり、形状や特徴も変わってきます。
今回はウイスキーに用いる氷について紹介していきます。
ウイスキーと氷の関係は切っても切れない仲。ウイスキー好きの方は是非ご参照下さい。
ウイスキーに使う氷の種類と形状の違い
まずウイスキーに使用する氷にはどんな種類があるのでしょうか?飲み方によって使用する氷は変化します。その名称と特徴を大きい順に簡単にご説明します。
ブロック・オブ・アイス
あまり知られてはいませんが氷のサイズは「貫目」という単位が使われます。
1貫目は約12cm×約12cm×約26cm、重さ3.75kgのサイズ。
この1貫目を3分の1サイズの氷の塊をブロック・オブ・アイスと言います。
かなり大きなサイズですので、大皿で作るパンチ・カクテルなどに用いられます。
結婚パーティーなどの会場でよく使用されているので、機会があれば注目してみてください。
ランプ・オブ・アイス
こちらはボール型の形をした氷のことを言います。
大きさは直径5~7センチくらい。
ロック用のグラスにすっぽりと収まる程度の大きさがベストでしょう。
飲み方としてはロック(またはハーフロック)によく用いられます。
硬い氷がゆっくりと溶けていく為、加水過程による香りや味わいの変化を楽しめます。
最近ではランプ・オブ・アイス専用の製氷皿(アイストレー)も販売されていますよ。
これさえあればご自宅でランプ・オブ・アイスを使用し、優雅にウイスキーを楽しむ事が出来ますね。
クラックド・アイス
直径4センチ程度に砕いた氷をクラックド・アイスと言います。
バーなどでよく見かける一般的なサイズの氷です。
クラックド・アイスはロック、ハーフロック、水割り、ソーダ割りなど多くの飲み方にオールマイティに活用できます。
大き過ぎず、小さ過ぎないサイズなのでロックグラスからタンブラーまで使えるグラスも多いです。まさにベストサイズの氷と言えるでしょう。
ただしランプ・オブアイスに比べると融解のスピードは早いと言えます。
キューブ・アイス
こちらは3センチ角の立方体の氷。
クラックド・アイスより一回り小さく、形も整っているので「人工的に作られた氷」という印象を受けます。
居酒屋、ファミリーレストラン等、飲食店の製氷機で作られている氷の殆どがこちらです。
カクテルグラスにすっぽり収まるサイズですので飲み方はソーダ割りやカクテルなどに用いられます。
クラッシュド・アイス
その名の通り、潰した(クラッシュ)氷のことを言います。氷のサイズや粒立ちによりチップドアイスとも呼ばれることもあります。
作り方は簡単。厚手のビニール等に入れ、木槌やアイスピックの柄の部分でガンガン叩けば完成です。
このクラッシュド・アイスでのウイスキーの楽しみ方はすばり、「ミスト」でしょう。
作り方はクラッシュド・アイスをたっぷり入れたグラスにウイスキーを注ぐだけ。
レモンや柚子などの皮(ピール)を添えるとより爽やかに頂くことができますよ。
これ以上に細かいかき氷に使うような氷はフラッペドアイス、シェーブドアイスなどと呼ばれます。
香りや味わいを変化させる氷の魔法
氷はウイスキーの持つ香りや味わいに大きな影響を与えます。
その中でも、最も大きな影響はウイスキーを「飲みやすくする」という事でしょう。
熟成が短期間のウイスキーや、ノンエイジのウイスキーはどうしてもアルコールによる刺激(ビリビリする感じ)が口内に残ります。
ストレートで飲むには少々ツラい銘柄の場合、ロックでいただくとウイスキーが冷却されることにより、アルコールの揮発が抑えられまろやかに感じられます。
香りも程よく抑えられ、また氷が溶けて加水される過程の味の変化を楽しむ事が出来ます。
このように同じグラスに入れたウイスキーでも、時間が経過するにつれて味わいや香りが変化するので、そのボトルが持つ個性を目いっぱい楽しむ事が出来るのです。
水割りやハイボール、カクテルなども同じで、冷却することでウイスキーの持つトゲを丸め込むことができるのです。これぞ氷の持つ魔法といえるでしょう。
自宅での楽しみ方
BARに行けば美味しい氷で美味しいウイスキーをいただけることはわかっています。
では、自宅でも手軽に美味しい氷を用意できるのか?
自宅でロックや水割りを飲む際に適した氷とはどんなものかを見ていきましょう。
分かりやすいところでいうと、家庭用冷凍庫の製氷機で作られた氷とBARなどでよく見かける大き目でゴツゴツした氷を比較してみましょう。
2者には下記のような特徴があります。
◉製氷機の氷
・濁っている
・気泡が入っている
・割れやすい
・すぐ溶けてしまう
◉BARで使われている氷
・透明度が高い
・気泡が極小、もしくはゼロ
・硬度が高く割れにくい
・なかなか溶けない
製氷機で作られた氷は水道水をそのまま用いる為、塩素やミネラル分などが影響して氷を濁らせてしまいます。濁った氷はカルキ臭や塩素臭などの雑味を感じやすくなります。
また急激に冷やすので水中の気泡がそのまま氷に残ってしまい、氷が柔らかく、溶けやすくなります。
一方、BARで使われている氷は割って中を見ても濁りや気泡がほとんど無く、硬く溶けにくいことが特徴です。
これは「氷商(氷屋)」が空気や不純物を極力取り除いた天然氷を私用しているためです。
ウイスキーを注ぎ、長く美味しく変化を楽しめるのが後者であることは一目瞭然。
ご自宅でもロックをはじめ、水割り、ハイボールでより美味しくウイスキーをいただきたいという方は天然氷とまでいかなくとも、コンビニやスーパーなどで売っているロックアイスを購入し、使用する事をお勧めします。
おすすめの市販の氷
市販されている氷であれば大抵何処で買っても同等のクオリティだろう…著者はそう思っていましたが、販売されている氷によっても若干個性があることに気がつきました。
きっかけは100円ショップでロック用の氷を購入したとき。
スーパーやコンビニなどで売られている氷に比べ、100円ショップで販売されている1kg入りの氷は、コスパは非常に良いのですが、他の市販のものに比べ溶けるスピードが少し速く感じました。
また保管する際、冷凍庫で氷が痩せていくスピードも若干速いように思えました。
もちろん、100円ショップ以外の氷ではそれ程さを感じなかったのですが特に良い!と思ったのは以下の3点。
手軽に買えて本格的なロックアイスを楽しめるのはセブンイレブンで販売されているロックアイスの板氷タイプ。こちらをアイスピックで砕いてグラスに入れればBARさながらの気分を体感する事ができます。手間を楽しめる人向けです。詳細はこちら
ドンキホーテのプライベートブランドから販売されているロック用アイス「極氷」はお値段110円税込みと100円ショップ同様のコストパフォーマンス。その上溶けにくく、保存する際も氷が痩せにくい為長く楽しむことができます。安くて手頃な著者イチオシ商品です。詳細はこちら
氷を購入する際に躊躇してしまうのがその重量。特に大量に氷が欲しい場合は宅配してもらいたいですね。AmazonやYahoo!ショッピング、楽天などにも多数天然氷は販売しています。買うなら大自然の生んだナチュラルな天然氷が味、硬度ともに良いでしょう。詳細はこちら
自宅でも美味しい氷は作れる
ここまでだとあまりに一般的な記事でBARRELらしくない。市販されているロックアイスが結局はお勧め…という紹介の仕方をしてしまいました。
しかし!自宅でも美味しい氷は作れます!
これをお伝えしたく、今回記事を執筆しております。
この記事をご覧になれば自家製でも美味しい氷は作れるんだ、ということをご理解いただければ幸いです。
自宅の製氷機で作る氷は美味しくありません。普段はあまり気にされていない皆さんもよくよく味を確かめてみるとなんともいえない雑味を感じとれることでしょう。
上記でも解説しましたが、それは塩素やミネララル分、細かい空気が含まれているからです。
この雑味成分は見た目でも分かりやすく、氷を白っぽく濁らせます。
雑味成分は味や風味を邪魔するだけでなく氷自体が脆くなりやすく、溶けやすい氷になってしまいます。
せっかく美味しいウイスキーを楽しもうと思っていてもグラスに注いでから氷がすぐに溶けてしまっては、ボトルの個性をゆっくり楽しむことが出来ません。
味だけでなく、楽しむ時間をも奪ってしまうにっくき不純物。
残念ながら冷蔵庫の製氷機ではこれらを取り除くことが出来ないのです。
でも、ご安心ください。
しっかり手間暇かければ美味しい氷をご自宅で作ることが出来ます。
ではどうすれば美味しい氷を作ることが出来るのか…
以下では自家製ロックアイスの作り方を紹介していきます。
美味しいロックアイスの作り方
①純度の高い水を使う
~水道水を使う場合~
まず、美味しい氷を作るには美味しい水が必要となります。
残念ながらご家庭の蛇口から出る水道水には塩素や酸素、ミネラルなどが含まれている為これをそのまま使用すると美味しくない氷が出来てしまいます。
水道水を用いて美味しいロックアイスを作るには水の純度を高めなければいけません。
ではどうするか。
方法は簡単、「煮沸」すればよいだけです。
ヤカンやケトルなどで煮沸した水は塩素分やミネラル成分が飛び、純度が上がります。
これを冷ましたものを使用しましょう。
そこまで手間をかけたくない、という方は市販のミネララルウォーターを用いるべきです。
市販のミネララルウォーターは塩素分などの雑味がなく、純度の高い状態で売られていますのでそのまま容器に入れるだけでOKです。
②容器を選ぶ
ロック用の水を用意した後は、その水を容器に移し替えます。
この時用いる容器はタッパーがベストです。
食材を入れるタッパーは家庭用としてちょうど良いサイズの氷を作ることが出来ます。
またタッパーはなるべく新品のものを使用するべきです。
使い古しのものですと、食材の香りが氷にうつる恐れがあります。
どんなに美味しいウイスキーでも、ほんのりカレーの香りがする氷を使ったオンザロックは頂く気にはなれませんよね。笑
③-10~-15度でゆったり凍らすべし
氷を作る際のポイントは時間をかけてゆっくり凍らせる、ということ。
これも、氷を濁りにくくする為です。
水の純度をあげても低音で急激に冷やすと細かい気泡が残り、氷が濁ってしまいます。
時間をかけ、ゆっくり冷やすことで気泡を水の外へ逃がし、より透明な氷を作ることが出来るのです。
ちなみに市販されているブロックアイスは-10度くらいの温度で水を撹拌し、気泡を逃しながらゆっくりと凍らせます。
するとあの様に透明で美しい氷が出来上がるのです。
④容器の底に隙間を作る
あまり知られていないことですが容器の底に隙間を作ると、氷に気泡が出来にくくなります。
隙間と言っても、それほど大きな隙間ではなく容器の底に割り箸を2本敷く程度OK。
すると容器の下からも冷気が回りこみ、全体的にバランスよく容器を冷やすことが出来ます。
ほんの少し底上げする感じで容器を置くだけでさらに美しい氷が完成すると言うわけです。
⑤水を入れ替えして手間をかけるべし
容器に入れた水は冷気があたる外側、特に上部から凍っていきます。
また気泡や不純物を残し、純度の高い部分から徐々に凍る性質があります。
その為、凍らせる過程で容器の水を何度か入れ替え、新しい水を加えながらゆっくりと凍らせることで純度をあげ、硬く溶けにくい氷を作ることが出来るのです。
ここまで手間暇かけられない、という方はこの作業は省略して頂いて結構です。
お時間のある時は2~3回容器の水を入れ替えながら作って頂くとより上質な氷を作ることが出来ますよ。
これで氷の塊ができたら完成!
⑥アイスピックはなるべく短いものを使用するべし!
出来上がった氷の塊は非常に硬いので、専用のアイスピックで砕いていきます。
ここでひとつ注意。
経験者の方以外はなるべく短めのアイスピックを選んでください。
長いアイスピックは扱いが難しく、手を傷つけてしまう恐れがあるからです。
短めのピックでコツコツと続いてグラスに合ったサイズの氷を砕けばこれで完成です。ミニアイスピックは安価で扱いやすいですね。
まとめ
手間暇かければ自宅でも美味しい氷が作れるということがご理解頂けた筈です。
ウイスキーを楽しむ際、氷は欠かせないアイテム。まさに切っても切れない関係です。
日々の晩酌でも、こだわりの自家製氷を作って入れればウイスキーが更に美味しくなる筈ですよ。
是非、おためしあれ。
それでは皆様、今宵も良いウイスキーライフを…!