ハイランドってどこにあるの?
スコットランドの北のほう全部。…といってもあながち間違っていません。
面積が大きい割に人が住んでいるところはまばらで、ヨーロッパで一番人口密度が少ない地域です。

出典:wikipedia
現在は西のグリーノックという街と、東のダンディーという街を結ぶ線より北を”ハイランド”と呼んでいます。
とにかく広大な土地のため、さらに東西南北で区分けて、東ハイランド、西ハイランド、南ハイランド、北ハイランド、と解説されることも多いです。
地理的にはスペイサイドもこの中に含まれています。
蒸溜所の数は約40、これはスペイサイドを除いた数ですので、スペイサイドを含めると100近い蒸溜所があります。
グレンなんたらって蒸溜所が多いけど…
ハイランド地方は、グランピアン山脈と呼ばれる1,000メートル級の山々が連なっている山地です。高い峰と深い谷が多く、とっても凸凹で起伏の激しい地形をしています。
この“グレン”とはゲール語で“谷”という意味なんです。
谷の周りに作られる蒸溜所が多いので、枕詞のようにグレンとついちゃうんですね。
どのくらいグレンとついている蒸溜所があるのか、わかる範囲でまとめてみました。
グレンエルギン | 小さなアイルランドの谷 |
グレンキース | 谷+ブリソン語で森の意味? |
グレングラント | 谷+創業者の名字 |
グレンスペイ | 秘密の井戸 |
グレンダラン | ダラン川の谷 |
グレントファース | トファースの谷 |
グレンバーギ | 砦のある谷 |
グレンファークラス | 緑の草原の谷間 |
グレンフィディック | 鹿の谷 |
グレンマレイ | 海辺の入植地 |
ザ・グレンリベット | 静かなるの谷 |
グレンロッシー | ロッシー渓谷 |
グレンロセス | 丸い砦のある谷 |
グレンアルビン | 陸地の谷 |
グレンアラヒー | 岩の多い谷 |
グレンオード | 丸い丘のある谷 |
グレンモール | 大きな(偉大な)谷 |
グレンモーレンジ | 大いなる静寂の谷 |
グレンカダム | カダムの谷 |
グレンギリー | 谷間の荒れた土地 |
グレングラッサ | 緑の谷 |
ザ・グレンドロナック | クロイチゴの谷 |
グレンユーリーロイヤル | ユーリー谷 |
グレンデヴェロン | デヴェロン渓谷 |
グレンゴイン | 鍛冶屋の谷 |
グレンタレット | 乾いた小川の谷 |
グレンロッキー | 黒い女神の渓谷 |
言語の意味がしっかりあるものもありますが、地域名+谷(渓谷)というのも多いですね。
味や香りの特徴は?
ハイランド地方のウイスキーは辛口でピート香が穏やかなものが比較的多いのですが、地域が広すぎるため、酒質も多種多様です。
東西南北4つのエリアに分けて、お話しします。
東ハイランド

出典:http://songbytoad.com/wp-content/uploads/2015/10/
スコットランドの大都市”エディンバラ”や”グラスゴー”の名前は聞いたことありますよね?それに次ぐ都市である「アバディーン」がある東側の平野部が東ハイランド。アバディーンは石油採掘の拠点として有名で、”ヨーロッパの石油の首都”とも呼ばれています。
蒸溜所は海沿いに集中し、昔ながらの普遍的で上品な味のスコッチウイスキーが多い印象です。
代表的な蒸溜所はアードモア、フェッターケイアン、グレンギリー、ザ・グレンドロナック、ロイヤルロッホナガーなどがあります。
グレンギリー12年
個人的なおすすめはグレンギリー12年です。
グレンギリー蒸溜所は大麦が豊富にとれる土地にある歴史ある蒸溜所。”アバディーン州の穀物倉庫”と言われるほど豊かな農地に恵まれています。
香ばしいいい匂い、まさに麦の香り。ナッツ入りのウエハースを食べてるみたいな感じです。
そこそこピート香もあり、アイラモルトが好きな方も満足いく味わいです。
蓋とコルクに創業年が刻印されていて、ボトルも可愛い。そして価格もお安くリーズナブルです。
西ハイランド

スコットランドで一番高い山「ベン・ネヴィス山」の周辺地域が西ハイランド。このあたりは登山者が多く、年間10万人にものぼるそう。
近くにフォート・ウィリアムという町があり、多くのクライマーや登山家でにぎわっています。(フォートウィリアムというウイスキーもあります!)
現在稼働している蒸溜所はオーバンとベンネヴィスのふたつだけになりました。
ベン・ネヴィス山の麓に流れ込む雪解け水。その澄んだ水質と豊かな自然の中で造られるスコッチは飲む価値のある逸品ですよ。
オーバン14年

個人的なおすすめはオーバン14年です。
ハイランドには多い、レーズンやさくらんぼのような香りがします。特徴的なのは潮の味や磯臭さも感じられることです。これはオーバンが港町にある蒸溜所なので海の風に吹かれて熟成したからですね。
ハイランドとアイランズのちょうど間の味わいとよく表現されますが、まさにいいとこどりといった感じです。
口に含むと生姜のようなスパイシーな味がして、最後には木の香りが漂います。
ちょっと高いですが、箱もカッコいいしなかなか通なウイスキーですよ。
南ハイランド

出典:http://www.stuartlowphotography.co.uk/wp-content/uploads/2014/11/hermitage_slpoty.jpg
グランピアン山脈の南部に分布する地域を南ハイランドと呼び、これより下にいくとローランド地方となります。
豊かな自然に囲まれていて、テイ・フォレスト・パークという壮大な森林公園があります。
ローランドに近いためかボディは軽めの印象で、飲みやすいものが多い印象です。
代表的な蒸溜所はアバフェルディ、エドラダワー、グレンゴイン、グレンタレット、タリバーディンなどがあります。
エドラダワー10年

個人的なおすすめはエドラダワー10年です。
オーツカはあまり得意ではないですが、好きな人は大好き!
クリーミーとかミルキーというのはこういうことを言うのか!と勉強させてもらった銘柄です。
生クリームやミルクチョコが好きな方は気に入ると思います。
このエドラダワー蒸溜所は年間のウイスキー生産量が96,600リットルという(グレンフィディックは10,000,000リットル)、スコットランドで最も小さな蒸溜所として知られています。
北ハイランド

出典:ttps://made4sunnydays.files.wordpress.com/
ハイランドの首都と呼ばれる「インヴァネス」周辺からグレートブリテン島の最北端までの地域が北ハイランド。
観光名所として素晴らしい場所がたくさんあります。
上記写真は映画や絵画のモチーフとして頻繁に使われるアイリーンドナン城。他にもあのネッシーで有名な【ネス湖】もインヴァネスのちょい下にあるんです。
代表的な蒸溜所はオールドプルトニー、クライヌリッシュ、グレンモーレンジ、ダルウィニー、ダルモア、トマーチン、バルブレア、ロイヤル・ブラックラなどがあります。
オールドプルトニー12年

個人的なおすすめはオールドプルトニー12年です。
わたくしオーツカは北ハイランドのスコッチが好みに合います。
北ハイランドにはグレンモーレンジのようにバランスが良く初心者におすすめしやすい銘柄もありますが、クライヌリッシュやトマーチンのようなアイラ・モルトを感じさせるややヘヴィな香りのするものが好きです。
オールドプルトニーは『30代におすすめするスコッチウイスキーランキング』にも取り上げましたが、花のような香りと塩気、爽やかなピート香、そしてオイリーな感じがたまりません。しつこくないバターを舐めているようです。
まとめ
スコットランド北部の広大な土地に点在するハイランド・モルト。
様々な個性ある蒸溜所が存在しており、伝統的な味を継承しつつ、互いを意識し、しのぎを削っています。
メジャーどころのスペイサイド・モルトを飲み終えた後は、ハイランド・モルトを楽しむ旅に出ることをおすすめします。
色々な観光名所もあるので、その文化に触れ見識を広めつつ、ハイランド・モルトの魅力に舌鼓を打ってください。
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