前回のウッドフォードリザーブに引き続き、アサヒさんのセミナーにお邪魔してきました。
今回の題材は170年以上の歴史を持つスコッチウイスキー『グレン グラント』。
講師にはグレン グラントのマスターディスティラーにしてこの道50年のレジェンド「デニス・マルコム氏」が登壇しました。
グレングラントは、日本でよく「ウイスキー入門用」として引き合いに出される「マッカラン」「グレンリベット」「グレンフィディック」と同じスペイサイドのシングルモルト。
メジャー銘柄の影に隠れてはいますが、シングルモルトウイスキーとして世界第6位の販売量を誇ります。
特にイタリアでは圧倒的な人気を誇り、シングルモルトといえば『グレン グラント』と答えるほど国民に親しまれたウイスキーなのです。
さらに「ウイスキーバイブル2016」ではグレングラント10年が、「ウイスキーバイブル2017」ではグレン グラント18年がスコッチウイスキー・オブ・ザ・イヤーを受賞しています。
というわけで、この”日本ではあんまり知られていないけれど、評価の高いスコッチウイスキー”はあなたに何をもたらしてくれるのか、オーツカが解説していきましょう。
なぜイタリアで人気なのか?
イタリアのお酒といえばグラッパ!
ですが、シングルモルトといえば『グレン グラント』です。、
ノンエイジ、5年、10年、12年、18年、25年、30年、40年、50年ものと様々なボトルが出回っています。ボトラーズも含めると相当なラインナップとなり、このグレン グラントだけでバーを経営できるとまで言われています
イタリアで主に出回っているのは5年物。そのシェアはなんと70%にも上ります。
どうしてここまでのシェアを獲得できたのか。
その理由は、創設者の二人の兄弟の功績が物語っています。
鉄道を敷くことで、いち早く国外販売へ
1840年、ジェームズグラントとジョングラントという兄弟が、スペイ川下流の町ローゼスにグレン グラント蒸溜所を建設します。ジェームズは法律家、ジョンは蒸溜技術を学んだ職人でした。ジェームズは地元の名士で、スペイサイドからイングランド方面への鉄道を敷き、ジョンと造った自社のウイスキーを大量に輸出しました。
これにより、グレン グラントはスコットランド以外で売られた最初のウイスキーとなったのです。
つまりイタリアのバーで飲める唯一のシングルモルトがグレン グラントだったわけです。いち早く国外にリーチを広げることで大きなシェアを獲得することができたのです。賢いですね。
特筆すべき人物と製法
マルコム氏の口から、グレン グラントの創業者の息子にあたるジェームス “ザ メジャー” グラントなる人物の話を聞くことができました。
創業者が残した莫大な遺産に恵まれ、公私ともに充実した方で、結婚は3回、子供は8人。
アフリカやインドに旅行に出かけ、ハンティングや釣りが趣味。
スコットランドで初めてロールスロイスを乗り回したという逸話も残っているほどです。
うおお…、、、神懸かってるほどの超リア充っぷり。
この新しもの好きの遊び人は、その好奇心からか発明家としての顔も持っており、グレン グラントの代名詞ともいえる首の細長いポットスチルと精溜器を開発し導入するのです。ただの放蕩息子ではなかったということですね。
グレン グラントの細長く、背の高いポットスチルで蒸溜を行うと、雑味を含んだ比重の重いスピリッツの蒸気は最上部まで上昇することができません。代わりにピュアで比重の軽いスピリッツだけが抽出されるのです。これがグレン グラントのライトでデリケートな味わいの秘密です。
さらに、この軽い蒸気のみを採取する精溜器(Purifier)をつけているのも特徴のひとつ。
精溜とはもともと凝縮した液と続いて発生する蒸気とを接触させ、繰り返し蒸溜して、分離をよくする操作のこと。
うーん、専門的で難しい。。
もっとわかりやすい効能として、アルコールの蒸気が精溜器の銅に触れれば触れるほど、様々な金属反応が起こり、出来上がるスピリッツは華やかでフルーティーになると言われています。銅は硫黄などの雑味を取ってくれる効果があるからです。逆に銅との接触が少ないほど濃厚なフルボディのスピリッツになるのです。
グレン グラントは2回の蒸溜のたびこの精溜器を通すことで、エレガントで果物のような香りを纏うのです。
気になる味は
上記の製法からも判断できるように非常にライトボディでクリーミー、まるでグレンキンチーなどのローランドモルトを想起させます。
現在日本で販売されているラインナップは
- ザ メジャーリザーブ
- グレン グラント10年
- グレン グラント12年
- グレン グラント18年
の4種ですが、どれにも共通して青りんごを感じさせるフルーティーな香りがあります。
味はライトでツンツンとした刺激がありスパイシー。飲み終わりはドライでクリア、シャキッと消えていきます。
ナッツや薬草の清涼感も感じるので夏向けの銘柄と言えますね。
熟成年数の若い銘柄は、水割りやハイボールにして食前食中酒として楽しめます。熟成年数が上がれば風味は濃厚になり、まるい味わいになるのでストレートやロックでじっくりいただくのがよいでしょう。
今回セミナーで紹介されたマリアージュ
軽いシングルモルトには定番になってきた和食。グレン グラント10年にはイカの塩焼きをペアリング。飲み方はロックのほうが良さそうです。タンパクなアナゴの白焼きなども美味しそうです。個人的には白レバー串などいいと思いました。
グレン グラント12年にはこちら、ブリ照り。シェリー樽を使った12年にはやはり和食の甘辛さは絶妙なマリアージュを魅せます。マッカランなどが好きな方は12年お勧めします。
グレン グラント18年にはBARRELでもよく出てくる和菓子、羊羹。こちらは創作和菓子ユニット『wagashi asobi』のドライフルーツの羊羹。北海道産小豆の上質な餡と沖縄県西表産の黒糖とラム酒で炊き上げた、イチヂク、イチゴ、クルミ入りの上品な逸品です。
上記のマリアージュを生み出したのは、最先端の技術と機材を巧みに操り、既存にない新しいカクテルを生み続けている日本随一のMIXOLOSIST(ミクソロジスト)。南雲 主于三(なぐも しゅうぞう)氏。最後にいただいたパッションフルーツのサワーカクテルも美味しかったです。(上に乗っていたパウダーはカシスか、もしくは梅?)とにかくオリジナリティ溢れる作品でした。南雲さんにもいつかインタビューしてみたいですね。
おすすめな飲み方
夏の熱帯夜にグレングラント10年のハイボール。
喉を潤す一発目に飲みたい大人のりんご100%ジュース。
ウイスキー初心者にも勧めやすいので、角ハイから卒業させてやりましょう。
殺し文句は「オーガニックなアップルタイザーを飲もうよ」です。
グレングラント12年をミストスタイル。
いや、ミストはちょっとかっこつけすぎました。ロックでいいです。
12年熟成はやや木材の芳香が強くなり、バニラやアーモンドのニュアンスが感じられるフラッグシップボトル。より果実味が強くなり、純粋に洗練されています。
香りも強いので、ゆっくりとリラックスしながら飲みたいウイスキーです。
こちら南雲氏のブリ照りマリアージュでも感じましたが、とにかく甘辛い醤油と合います。
おすすめのおつまみは大学芋。これで決まりですね。
イタリアで愛される一杯をBARで、自宅で。
ウイスキーカクテルにも使いやすく、愛用しているバーテンダーも多いグレン グラント。
モルト専門でなくとも置いてあるBARは多いので試してみてはいかがでしょうか?
BARRELだけの話、2017年6月現在グレン グラント10年の旧ボトルは酒屋やネットで探せば2,000円くらいでまだ買えます(笑)
新ボトルは4,000円くらいしますけどね!
なので、自宅でリーズナブルに楽しむ場合は、ナポリなイタリアンパスタとグレン グラントハイボールが最高です。
ミートソースよりもペペロンチーノがいいです、間違いない。
手軽に楽しむことができるこのリッチなウイスキーが、夏バテしたあなたの心を解きほぐしてくれることでしょう。
まとめて試飲できる!オリジナルのグレングラントセット
グレングラントのハウススタイルを堪能するセット
グレングラントのラインナップをまとめて飲んで、違いを知ってみたい!という方に向けて3本を少しずつ飲めるセットをご用意しました。看板商品の「10年」。そして長期熟成を感じられる高級品「18年」をはじめ、高コスパで人気を博した「アルボラリス」のセットです。
- グレングラント 10年 (40度)
- グレングラント 18年 (43度)
- グレングラント アルボラリス (40度)
30mlセットと100mlセットから選べるので、グレンファークラスを少しずつ飲み比べてみてください。
そういえばイタリアには2015年末にイタリア初のシングルモルトウイスキーPuniがありますね。こちらの売れ行きはどうなのかなぁ。