カティサークの概要
カティサークは世界を代表するブレンデッド・スコッチ・ウイスキーです。
ピート感はなく、マイルドな仕上がりになっていることから非常に飲みやすいウイスキーです。
また1,000円台(特売では1,000円以下!)で購入できることから、日本では晩酌用として親しまれているウイスキーです。
カティサークが誕生したのは1923年。
スペイサイドのグレンロセス蒸溜所で作られた原酒をキーモルトにマッカランを含む数十種類のモルト・グレーン原酒を掛け合わせて作られています。
禁酒法時代のアメリカ市場をターゲットとしたウイスキーで、製造元はベリー・ブロス・アンド・ラッド社(以降B.B.R)。
ブランド権は2010年にエドリントングループに売却。
さらにその後、グレンマレイやスターロー蒸溜所を持つフランスの大手酒類メーカー、ラ・マルティニケーズ・バーディネが買い取りました。
販売は現在バカルディ・ジャパンが行っています。
超有名作家の村上春樹さんが愛飲するウイスキーで、彼の作中でも度々登場します。
村上春樹ファンの方にはマストアイテムならぬマストリカーといっても過言ではないウイスキーです。
ぜひお試しください。
カティサークの発祥と製造場所の紹介
カティサークという名の由来ですが、これは快速帆船カティサーク号からきています。
カティサーク号は19世紀後半に活躍した船で、当時中国からイギリスに紅茶を運んでいた「ティークリッパー」と呼ばれる大型帆船でした。
当時はティークリッパー全盛の時代でカティサークと同じような大型帆船が多く存在し、いかに早く船を走らせるかを競っていたといいます。
その中でもカティーサーク号は最速を誇り「海の女王」という異名がつけれられていました。
しかしティークリッパーの時代が去るとカティサーク号も用無しとなり、ポルドガルへ売却されてしまいます。
それがイギリスに買い戻された年が1922年。
あのカティサークが母国に帰ってきた!ととても話題になったそうです。
B.B.R社はその話題性に乗っかり自社のブレンデッドウイスキーを「カティサーク」と名付け販売したのです。
ちなみに「カティサーク」命名に関してはひと悶着ありました。
1923年の3月某日、B.B.R社では自社ブランドのブレンデッドウイスキーの商品名を決めるために昼食会が開かれていました。
そこにはジェームス・マクベイという1人の画家が招かれていました。
彼は商品をプロデュースするために、デザイナー兼アイディアマンとしてその場に呼ばれており、「カティサーク」は彼からの提案でした。
これ以上ないネーミングに満場一致。
マクベイはその後、ウイスキーのラベルに書かれているあのカティサーク号の勇姿と「CUTTY SARK」、「SCOTS WHISKY」の文字を描いたそうです。
ただし、カティサークのラベルの山吹色だけはマクベイの意図するものではありませんでした。
現在も脈々と受け継がれるこの配色は印刷屋が配色を間違えて刷ってしまったものでしたが、それがあまりにも鮮やかで人目を引いたことから、そのまま山吹色が採用されたのです。
マクベイは面白くなかったかもしれませんが、私はこのラベル大好きです。
いちウイスキーファンとしては印刷屋を「良くやった!」と褒めてやりたいですね。
緑色のボトル瓶と対照的な山吹色のラベル、海への憧れを抱くカティサークというネーミングで、カティサークは瞬く間に世界に浸透していきました。
発売からそろそろ100年。
カティサークは世界130カ国・年間売り上げは200万ケース以上にもなり、この売り上げはスコッチ業界でも5番目の業績となりました。
B.B.R社からの変遷
前述した通りカティサークはB.B.R社によって作られました。
B.B.R社は1698年創業のイギリスでは有名な食料雑貨商で創業当時は「イタリアン・ウェアハウス」と呼ばれていました。
古くからコーヒー豆やお茶、香辛料などを主に扱っていましたが、19世紀後半になると売り上げの主力はワインへと移行。
その流れでワインだけでなくジンやウォッカ、コニャック、ウイスキーなどのハードリカーも手掛けるようになり、自社のブレンデッドウイスキーを作り出す運びとなります。
そして当時のブレンド技術の粋を集め、カティサークが誕生しました。
B.B.R社は今でもイギリスのセント・ジェームズ3番地にあり、260年前の創業当時と外観も内装も変わらずそのままの姿で営業しています。
傾いた床に年代物のテーブルがあり、その上にはトレードマークとなるコーヒーミル、大きな秤や天秤棒…。
それは現在1000種類を越すワインを扱う超大手ワイン商とはにわかに信がたい光景だといいます。
1920年代、禁酒法時代のアメリカ市場を徹底調査し、ライトタイプで無着色のナチュラルカラーにこだわったカティサークは瞬く間に市場を席巻します。
禁酒法時代の最中、ウィリアム・マッコイという船長がカティサークをアメリカに密輸し続け「マッコイが持ち込むスコッチは本場の味がする」と評価され、ギャング達から「リアル・マッコイ」という名で呼ばれていたそうです。
そしてカティサークは世界的人気を保持するブランドとなります。
特にスペイン、ギリシャ、ポルトガルではブレンデッドウイスキーの売上高第1位となりました。
2010年にカティサークのブランド権はマッカランやハイランド・パーク、グレンロセスなどを傘下に持つエドリントングループに移ります。
その後、エドリントンがプレミアム価格帯ブランドへの資源集中戦略をすると発表し、2018年にカティサークを手放します。
ブランド権を購入したのは、グレンマレイやスターロー蒸溜所を持つフランスの大手酒類メーカー、ラ・マルティニケーズ・バーディネ。
バーディネはLABEL5やグレンターナーも所持しているフランスの一大企業。
カティサーク号、お次はフランスに向けて出港です!
カティサークの製法(作り方)
カティサークはブレンデッドウイスキーですので、幾つかの蒸溜所で作られたモルト原酒とグレーン原酒をブレンドして造られています。
概要でも紹介しましたがカティサークはスペイサイドにあるグレンロセス蒸溜所の原酒をメインに作られています。
グレンロセスでは10基のポットスチルが設置されており、スコッチ業界でも大規模な蒸溜所。
ニッカウヰスキーの竹鶴政孝がウイスキー造りを学んだ蒸溜所のひとつとしても知られています。
しかしグレンロセスはシングルモルトとしてはあまり出荷しておらず、その原酒の95%をブレンデッド用に提供しています。
主な提供先はカティサークをはじめフェイマスグラウスなどです。
カティサークにはそのほかにもウイスキー界のロールスロイス「マッカラン」や、アイラ島の「ブナハーブン」ハイランドの「グレングラッサ」、アイランズの「ハイランドパーク」、スペイサイドの「タムドゥー」などを使用。
いずれも高級な原酒ばかりで、ピートが抑えられ華やかかつフローラルな風味のものが中心に選ばれています。
販売当時カティサークは禁酒時代のアメリカ市場をターゲットにしていたため、マイルドかつ軽い口当たりの飲みやすいウイスキーに仕上げられたのです。
食前酒としてソーダ割にしても美味しく頂けるオールマイティでコストパフォーマンスの高いウイスキーです。
ウイスキー「カティサーク」のラインナップ
カティサーク オリジナル
言わずとしれたカティサークのレギュラーボトル。
ラベルにはジェームズマクベイが描いたカティサーク号が悠々と映っています。マクベイが嫌った山吹色が印象的ですね(笑)
ピートを感じさせない爽やかでフルーティな味わい。
香りはバニラとカラメル、アマニ油、奥からシトラス。
味わいはアルコールの刺激が少なく、レーズン、アンズ、トフィー、青リンゴ、洋ナシ、ビターチョコと言った甘みが前面に出ています。
非常に軽いのでウイスキー初心者にもおすすめです。
カティサーク プロヒビション
こちらはイギリスの禁酒法(プロヒビション)の廃止から80年目を記念してリリースされたボトル。
どうやら例のウィリアム・マッコイ船長の業績に敬意を表したボトルでもあるそうです。
加水を抑えアルコール度数50%に調整している為カティサーク本来の力強い味わいを楽しめます。
香りは濃厚なラムレーズン、バニラ、カカオの酸味を感じます。
味わいはシェリー樽からのレーズム、ドライプラム、アーモンドナッツの香ばしさに青リンゴが続きます。
全体的に甘みが抑えられスパイシーさが押し出されている為、レギュラーボトルを飲み慣れている方は少々飲みづらく感じるかもしれません。
かなりパンチが強いので、「普段のレギュラーは物足りない、水っぽい」と感じている人にはぴったりです。
カティサーク ストーム
こちらは2013年にリリースされたボトル。一時終売していましたが復活しました。
レギュラーボトルよりも熟成が進んだ原酒を選び、かつモルトウイスキーの比率を高めたボトルです。
カティサークの軽やかな口当たりはそのままに、コクや甘みがギュッと濃縮されました。
風味はレーズンの甘みがやってきて、それからカラメル、焼いたウエハース、マスカットのフルーティさを感じます。
レギュラーよりも少し贅沢をしたい時にお勧めのブレンデッドウイスキーです。
編集部でキャンプ場で飲んだのが印象的でした。
カティサーク モルト
カティサークに使用されるグレンロセス・ハイランドパーク・マッカランなどのモルト原酒のみを掛け合わせて作られたヴァッテッド・モルトウイスキー。
手っ取り早くいえばグレーン原酒が使われていないカティサークです。
味わいはシェリー樽からくるドライフルーツ、ドライいちじくのような香り、スペイサイドならではのさっぱりとした洋ナシやマスカット、そしてモルト感を楽しめる内容となります。
こちらが終売となり、代わりにリリースされたのが「ストーム」でした。
もうあまり見かけませんが、バーなどで見かけた際には是非お試し頂きたいボトルです。
カティサーク 12年 デラックス
こちらは12年以上熟成させたモルト・グレーン原酒をブレンドして作られたボトル。
レギュラーボトルと比較すると、レーズンの酸味と甘みが増し、ライムやドライプラムのような香りが感じ取れます。
洋ナシやマスカットのフルーティさは健在で、やや柑橘の強いバニラ風味。
酸があるからかビターさに磨きがかかり、カカオのような渋みも感じられます。
シェリー酒から来る甘みと酸味が融合して見事なバランスに仕上がったカティサークの上位酒です。
レギュラーボトルと比べてみると違いがよくわかる逸品。
こちらも終売が発表されています。
カティサーク エメラルド
こちらはモルト原酒を一度ヴァッティングして12年間ホワイトオークの樽で熟成した後、酒齢12年以上のグレーン原酒をブレンドして作られたボトル。
ダブルマリッジによる独特の風味を楽しめる一本です。
12年で感じられるレーズンやシトラス、洋ナシなどはやや穏やか。
どちらかといえば麦の香ばしい風味と甘み、干し草のヒントと、グレーン原酒のエステリーな穀物感を楽しめる内容となっています。
モルト原酒・グレーン原酒の個性を最大限に活かしたブレンディングの技術が際立った逸品です。
カティサーク 18年
こちらは酒齢18年以上のモルト・グレーン原酒をブレンドして作られたボトル。
レギュラーや12年に比べると、シェリー樽からくる風味がグッと前に押し出された味わいです。
シトラス、ライム、洋ナシや青リンゴといった青い酸味は大人しくなり、レーズン・ドライプラム・ベリー、煮出したりんごなどの果実味が押し寄せます。
キーモルトをイメージしながら飲むと確実にマッカランを感じることができる有難いボトル。
余韻は深いオークとベリー。品の良いカカオのような味わいも舌に残る贅沢な一本です。
非常にレベルの高い商品でしたが、終売が発表されています。
カティサーク インペリアル・キングダム
こちらは90年代流通しており、現在は終売となってしまったボトル。
ノンエイジですがリフィルシェリーの長期熟成モルトをブレンドしているといわれています。
レギュラーボトルに感じさせる若いグレーン感は無く、モルトのふくよかな風味が全体を包み込み、シェリー樽からの主張をしっかり感じられる1本です。
香りは熱帯の果実、熟したぶどう、少しいちごジャムのような印象も。
味としてはレギュラーよりもやや厚みのある口当たり、そしてレーズン、プラムのフルーティさと酸味。
バニラや麦チョコの甘みやかな余韻が中程度で続きます。
複雑で良くできた味わいのボトルです。
カティサーク 25年
カティサークはブレンデッドウイスキーとして知られますがこちらはモルト原酒のみを掛け合わせて作られている為ヴァッテッドモルトウイスキーとなります。
キーモルトにはベリー・ブラザーズ&ラッド社の秘蔵モルト、グレンロセス、マッカラン、グレンリベットなど酒齢25年以上の長期熟成モルトを使用。
冷却濾過を行わずアンチルフィルタードでボトリングされています。
マッカランと間違えるようなシェリー由来の甘みがあり、ラズベリー、ブラックベリー、そしてほろ苦いカラメル。
中間にはヒバのお香が差し込み、フィニッシュはオレンジの皮や紅茶の茶葉、カカオのビターへと続きます。
リッチで強い香りと和やかに舌に溶け込む甘やかさが心地よい長熟品。
イギリスのウィスキーマガジン誌が主催する「ウィスキー・マガジン・ライブ2003」にて、全ウィスキー部門の中の最高得点を獲得した評価の高いボトルです。
カティーサーク25年 タム・オ・シャンター
こちらはカティーサークのマスターブレンダー、クリスティーン・キャンベル氏が特別に選んだシェリー樽熟成のウィスキーを中心にブレンディングしたボトル。
世界に向けて5,000本のみボトリングされた限定リリースとなります。
46.5%でボトリングされており、かなり味の流れにストーリーのあるボトル。
香りは非常にリッチでジャスミンやアニスを感じます。中間からはオレンジの葉、バニラ、そしてわずかにスモーキーな香りが追いかけます。
口当たりは厚みのあるフルボディ。
苦みの強いチョコレート、そしてミントやユーカリの葉といった清涼感を感じます。
ビターと甘みのバランスが良く、中間に黒こしょうのスパイシーさも感じられます。
余韻はエレガントで長くウッディ。オークとカカオの返りを楽しめます。
「タム・オ・シャンター」とは18世紀に生きた有名なスコットランドの詩人、ロバート・バーンズの作品からきています。
カティサークのおすすめの飲み方
スタンダードボトルは1本1,000円前後で買える、とてもリーズナブルなウイスキーなので、お家飲みに重宝している方も多いですね。
特に食中にハイボールにしている方が多い印象で、食事の邪魔をしないライトタイプのウイスキーです。
逆に言うとストレートやロック、トワイスアップなどはあまりおすすめしません。じっくり向かい合って飲むにはコク、旨味、深み、どれをとっても弱めです。
キャンプに持っていくのはいいですよ。金額的にも気軽に飲めますし、あまり好き嫌いが分かれるフレーバーではないので。
そしてあまり飲んでいる方を見かけませんが出来の良いのがカティサークの長熟品です。
レギュラーのあっさりした味を、それこそアッサリ裏切ってきます。
25年クラスは使っている原酒が良いというのもありますが、ブレンデッドとしてはかなり個性を感じるほうかと思います。
甘味、酸味、苦み、スパイスと流れるような味の変化は飲む人を楽しませます。
そしてカティサークはデザインプロモーションにもお金をかけています。さすが画家が命名しただけのことはある。
以下はタム・オ・シャンタ―の箱と中身ですが、一体この絵本だけでいくらかかっているのでしょうか。。。
アーティスティックな絵本を読みつつ、杯を傾けるのは最高の贅沢ですね。