カーデュの種類と味わい
カーデュ12年
こちらがカーデュの12年、フラッグシップボトルとなります。
熟成には主にバーボン樽が使用されています。
香りはリンゴの皮、熟した梨、バニラエッセンス、ビターチョコ、フレッシュオレンジ、レーズン、奥にミントも含みます。
口当たりは軽やかでスムース、オレンジやライムなどの柑橘系、グーズベリー、バニラアイス、後半にスパイシーさも感じられます。
甘さとスパイシーさを楽しめる、すっきり系、女性にも人気が出そうな味わいのボトルです。
カーデュ スペシャルカスクリザーブ
こちらは12年物のワンランク上のラインナップ。
アメリカン・オーク樽で長期熟成させた原酒を厳選してつくられています。
香りは洋梨、チョコレート、チョコクリーム、ドライアプリコットとパイナップル。
味わいはファッジ、レーズンなどのフルーツ感、オレンジピール、チョコビスケット、シリアルなどの香ばしさ、後半にカカオパウダーのビター、シナモンとジンジャーのスパイシーさが訪れます。
香りは非常に甘やかでメロウですが、スパイシーさやビターさも感じられる複雑な味わいのボトルです。
カーデュ 15年
15年もののカーデュ。
フラッグシップとなる12年ものより豊かなコクが加わった印象のボトル。
香りはフローラルかつスパイシーな甘さ、タンニンの渋み、青みがかったハーブ、僅かなミント。
味わいはチョコレート、フローラルエッセンス、干し草、フレッシュオレンジの柑橘類、ハチミツ、加糖したコーヒー、後半に黒コショウやシナモンのスパイシーさも感じられます。
2014年IWSC銀賞、2015年The Scotch Whisky Mastersにて金賞を受賞している評価の高いボトルです。
カーデュ 18年
熟成にはバーボン樽とヨーロピアンオークのシェリー樽が使用された18年物のカーデュ。
スイートでフルーティ、上品で角がなくするする飲めます。
香りは梨、プラム、パイナップル、グーズベリー、甘草、若干のハーブ、木酢。
口に含むと口当たりはなめらかで、はじめに梨、プラム、サクランボなどのフルーティーな甘みが押し寄せた後、ダークチョコのビター、クリーム感、後半に干し草、木酢などの風味が訪れます。
バランスが良くリッチで滑らか、素晴らしい内容に仕上がったボトルです。
カーデュ アンバーロック
“アンバー・ロック”のアンバーは琥珀色を意味しており、ウイスキーの色とゲール語で「黒い岩」の意味を持つカーデュ蒸溜所と掛けたダブルネーミングとなります。
アメリカン・オーク・カスクで2度の熟成を行うことでカーデュのスイートさをさらに強調したような風味があります。
香りはカスタードやプラムの甘さ、ハーブの爽やかさ、洋梨タルトわアップルパイなどの洋菓子系の甘さが続き、奥にシナモンやコウショウ系のスパイシーさも感じられます。
味わいはシナモンスパイスをたっぷり掛けたリンゴのコンポート、バニラクリーム、チョコレートケーキ、オレンジピール、後半にエスプレッソや黒糖などビターを伴う甘みに変化していきます。
余韻はエスプレッソの甘やかで力強いアロマが鼻腔に残り、長く居座ります。
アンバーロックというボトル名前に名前負けしない内容に仕上がったカーデュです、
カーデュ21年 ディアジオスペシャルリリース
2013年ディアジオ社からリリースされた21年もののカーデュ。スペシャルリリースのカーデュは毎回評価高いですね。
熟成にはアメリカンオークのバーボン樽が使用されています。
香りは非常に柔らかくクリーミー、シナモンをかけたリンゴや洋ナシのコンポート、プリンのカラメル、バラ、干し草。
味わいはミント系のハーブや干し草、からハチミツやミルクチョコレートの甘み、オレンジピール、マーマレード、ジンジャーや白胡椒のスパイス、木酢、芳しいオーク材。
軽めの口当たりですが、複雑な風味の波が後から後から押し寄せる充実した内容のボトルです。
カーデュ22年 1982-2005年
こちらは1982年に蒸溜され、2005年にボトリングされた22年物のカーデュ。
ビンテージモルトシリーズとして限定販売された希少なボトルです。
香りはリンゴジュース、パッションフルーツ、ラズベリー、蝋燭、キャラメル、焦げたパン、奥に若干のスモークも感じます。
少しとろみのある、それでいてスムースな口当たり。
味わいは梅のガム、シナモンスパイス、古い本、ほこりっぽさを挟みマスカット、ローズウォーター、ベイクドオレンジ、リンゴのジャム。
クローブのハーブ感を伴う長い余韻。
とにかく複雑で向き合えば向き合うほど新たな個性を見つけることができる素晴らしいボトルです。
カーデュ 27年 1973 – レアモルト
こちらはUD社時代にレアモルトシリーズの1つとしてリリースされた27年物のカーデュ。
1973年に蒸溜され2000年10月にボトリングされた長熟のボトルとなります。
香りは力強くリンゴ、ピーチシロップ、ココナッツミルク、レモンピール、ワクシー、溶剤、メロン、少しのほこりっぽさ。
口に含むとやや厚みのあるボディで味わいは白桃、ベイクドオレンジ、たばこ、オイリー、軽いスモーク、後半にショウガやコショウのスパイシーさも感じます。
レアモルトはすべて超かたいで有名ですが、こちらも開くと抜群においしいです。Barなどで見かけたら是非。
おすすめの飲み方・飲み進め方
これといったマイナス点が見当たらない、愛好家からも評価の高いウイスキーです。
派手さはありませんが、スイートで繊細、オフィシャルはほぼ加水の40%なので飲み方はストレートがおすすめです。
ハイボールやロックは個性が消えます。水割りはちょっと奥行きがなくなりますが、及第点です。
18年は特に評価が高く、嫌みのないシェリー香とはちみつ&レーズンの甘い味わいがおいしい佳酒。
12年、15年、18年はどれも安定感があります。まずは順に飲んでいくことをおすすめします。
今はややずんぐりな形状のボトルですが、オールドボトルにはトール瓶が存在します。
1960年代流通の8年や70年~80年代流通の12年などは非常に人気があり、値段が上がっています。
引っ掛かりのないメープルシロップのような質感、トロリとしたマーマレードとマイルドな麦芽香はトール瓶のカーデュならではの魅力です。
カーデュの発祥と歴史
どこで作られているのか?
カーデュ蒸溜所はスペイ川中流域、マノックヒルの丘の上に建てられています。
カーデュとはゲール語で 『黒い岩」の意味。
創業は1811年、創業者となるジョン・カミングが農困期の副業としてウイスキーづくりを始めたのが起源…つまり、密造からスタートしているというわけです。
現在オーナーはディアジオ社となり、日本での販売を日本種類販売(株)が行なっています。
カーデュの歴史~躍進の陰には2人の女性〜
カーデュの歴史を語るにおいて、欠かせない2人の女性が存在します。
ひとりはヘレン・カミング夫人。
彼女は創業者ジョン・カミング氏の妻で近隣の密造者仲間から「肝っ玉かあさん」と呼ばれた女傑でした。
彼女は密造酒の査察団が訪れる度、進んで宿を提供し、 彼らが食事のテーブルについている間にすばやく納屋へ行き、合図に赤い旗を屋根に揚げて、 査察団の来訪を近隣の仲間たちに知らせていたといいます。
また小麦のふくよかな香りに関しても「パン作りのためにマッシングと醗酵を行っている」といって誤魔化していたそうです。
しかしそんなヘレンの努力もむなしく、カミング氏は密造容疑で3度も検挙されてしまいます。
この頃はちょうど法改正が行われ、新蒸溜所法が施行された頃(1823年)。
グレンリベット同じく、1824年に政府公認蒸溜所として届出し、蒸溜所を再スタートさせました。
したがってカーデュ蒸溜所の正式な創業は1824年とされています。
そしてもうひとりの重要人物はエリザベス・カミング夫人。
彼女はジョン・カミング氏の息子ルイス氏の妻にあたる人物となります。
ルイス氏の死後、蒸溜所を受け継いだエリザベス夫人は、当時女性としては珍しいほどの経営手腕を発揮し、カーデュの発展に貢献しました。
エリザベスは1885年に蒸溜所を新しく建て替え、生産能力を以前の3倍に伸ばします。
ちなみに古い建物はグラント社が買取りカーデュの設備はその後グレンフィディックで使われることとなります。
自らの手腕により19世紀後半までにカーデュの名を不動のものとしたエリザベスは「モルトウイスキーの女王」「ウイスキー産業の女王」と呼ばれる存在となりました。
大成長を遂げたカーデュは1893年、最大手であるジョン・ウォーカー& サンズ社の傘下に加わり今日に至るまでジョニーウォーカーのメイン原酒として使用されています。
このときもエリザベスは経営権をカミング家から変えぬようしっかり交渉しています。
エリザベスの血統は聡明で、彼女の孫となるロナルド氏はのちにジョン・ウォーカー& サンズ社の会長、さらに親会社のDCL社の会長を務めています。
ロナルド氏がDCL社の会長だった時期に一族の夢であったシングルモルトとしてのカーデュのリリースが始まりました。
(※ 1925年にジョン・ウォーカー&サン社とDCL社が統合。1986年にギネス社に買収、統合を経て1997年にディアジオ社が誕生します。)
大戦により原料の大麦が不足しカーデュの原酒は全てジョニーウォーカーのブレンド用に回されたときもロナルド氏がかけあって1960年代に入り再びシングルモルトとしてカーデュをリリースしています。
ロナルド氏にとって、先祖代々つくってきたカーデュというブランドが如何に大きな存在であったか、その想いが伝わるエピソードです。
2000年に入りカーデュはフランスとスペインで人気が出始め、特にスペインでの人気が急上昇し、一時的に生産が追いつかなくなります。
そこで2002年にディアジオ社は、その不足分を自社が所有するグレンダラン等のスペイサイドの原酒と掛け合わせ「カーデュ・ピュアモルト」という商品名でリリースします。
しかしこの行為はスコッチウイスキー協会(SWA)から「ピュアモルトという曖昧な表現は、消費者を混乱させるため好ましくない」と指摘が入り、2004年にすべての商品を回収。
この一件の波紋は大きく、2009年に
「2種類以上の原酒をブレンドした場合、既存のシングルモルトまたはブレンドスコッチのブランドの名前を使用すると、飲酒者の間で混乱を招く可能性がある」
としてスコッチウイスキーに関する法改正が行われるまでに至りました。
これに関しては至極当たり前のことを法化しているように感じますが、そうでもしないと今後こうした超大手の暴走を抑えきれないと判断したのでしょう。
しかし、こんなことがありつつもスペインでの人気は現在も衰えず、カーデュの生産量の7割が同国へ向けて輸出されています。
カーデュはボトラーズものがほとんど出回っていため、オフィシャル以外のボトルを見かけた際は是非お試しください。
カーデュの製法
カーデュで使われる発酵槽はカラ松製で8基。
ポットスチルは首の長いストレートヘッド型で
- 初溜×3基
- 再溜×3基
の合わせて6基。
カーデュでは1960年に蒸溜所の大掛かりな改修が行われました。
その後1970年にスチルを加熱するために蒸気コイルが導入され、この際スチルの数が6基に増設されました。(1988年に立派なビジターセンターもつくられています)
仕込水はマノックヒルの泉の水を利用。
年間の生産量は約340万ℓで、 そのうちの30パーセントがシングルモルト用としてリリースされています。(その7割以上がスペインに出荷)
熟成に使用されるのは主にバーボン樽となっています。
ざっくり概要と味の特徴
カーデュはスコットランドのスペイサイド地方でつくられるシングルモルトウイスキーです。
かの有名な「ジョニーウォーカー」のキーモルトとして使用されているのがこのカーデュ。
スイートな飲み口と、たおやかな余韻が特徴のウイスキーで、レーズンや瑞々しい梨のようなイメージがあります。
ウイスキーを飲みなれていない方にもおすすめのブランドです。
ライトタイプで甘めの味わいがスペインで受け、以来カーデュの7割以上がスペインに向けて輸出されているといわれています。