ウイスキーがお好きな方なら、オーセンティックなバーにお世話になることが度々あろうと思います。
何度か同じ店に通ううち、その店のバーテンダーはあなたの好みを覚え、何も言わずに座るだけで好みのカクテルを作ってくれるようになったりしますね。
自分にとって居心地の良いお店、そして気の合うバーテンダーのいるお店を探すのもまた、お酒飲みの楽しみであったりします
さて、そんなバーテンダーさん達には、カクテル作りの腕を競う大会があることをご存知でしょうか。
日本中のバーテンダーが加盟している「社団法人日本バーテンダー協会(NBA)」という団体があります。
今回はこの団体が主催する「全国バーテンダー技能競技大会」について簡単に書いてみたいと思います。
あんまり知ることのないバーテンダーの内側の世界を覗いてみましょう。
どんな大会なのか?
大会の概要を簡単に説明すると
参加資格
まず参加資格ですが社団法人日本バーテンダー協会(以下NBA)に加盟しているバーテンダーであることはもちろんのこと、「バーテンダー技能検定合格証書」を取得しているということも条件にあります。
この「バーテンダー技能検定合格証書」とは実務経験が5年以上(バーに5年以上務めた経験がある)あり、NBA加盟歴3年以上で「NBA認定バーテンダー資格証書」を取得しているバーテンダーが受けることができる試験です。食品衛生や調酒等、バーテンダーに必要な知識についての試験があり、23歳以上で取得できます。
そして年齢が「満26歳以上」であることも条件に入っています。
25歳以下のバーテンダーは同じ日に行われる「ジュニア・カクテル・コンペテイション」という部門に出場します。
服装
そして競技に出場する際の服装が決まっています。
「白コート(白いジャケット)、黒ズボン、黒靴、黒蝶タイ、白または黒の前掛け」
となっており、バーでよく見かける黒いベスト姿ではなく、出場者は白スーツのジャケットを着用します。
予選と全国大会がある
各都道府県での予選がまず行われ、勝ち抜いたバーテンダーは地方ブロック予選に進み、そこで優秀と認められた20名が全国大会へと駒を進めることができます。
「全国バーテンダー技能競技大会」は、開催地は毎年変わり、全国を回りますので近いところで開催される際にはぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
技能競技
実際の技能競技の内容ですが
- 学科試験
- フルーツ
- 課題カクテル
- 創作カクテル
の4種になります。
1.学科試験
まず学科試験ですが、NBAに加盟しているバーテンダーが必ず持っているというこの本から出題されます。
「NBAオフィシャルカクテルブック」この本の中から、「バーテンダー必須問題(10点)」、「衛生問題(10点)」の計20点満点で出題されます。
マークシートや選択問題ではなく完全な穴埋め問題のため、相当量の勉強が必要です。
2・フルーツ
カクテルの大会と聞くとてっきりカクテルだけを作るのかと思ってしまう方も多いかと思いますが、学科に引き続きフルーツカッティングの実技もあります。
この後に続くカクテル競技もそうですが、ここからの実技は大変細かい規定があります。
お皿の大きさや、使用してよいナイフの種類、フルーツなど、すべて決まっています。
そしてそれらを10分以内に美しくカッティングし盛り付け、作成します。
フルーツの採点は50点満点で、出場者はそれぞれに趣向を凝らした作品を作っていきます。
そして完成したフルーツの一例がこちら。
ため息が出るほど美しいですね。
これだけの作品をたった10分で作ってしまうバーテンダーの手際の良さにも感動です。
3.課題カクテル
そしてカクテルの競技に入ります。
課題カクテルは、毎年決められたスタンダードカクテルを、5杯分同じ材料で作成します。
時間は5分以内。50点満点の競技です。
使用するお酒のメーカー、分量、器具に至るまですべて既定のものを使用し、作成の手順から動作に至るまで細かく決められています。
地方予選を勝ち抜いて全国大会に出場される選り優りのバーテンダー達ですから、その動きは素人目には寸分違いません。
各自美しい動きでまったく同じカクテルを手際よく作っていきます。
4.創作カクテル
1~3の競技を終え、最後の競技は「創作カクテル」です。
材料のアルコールは協賛各社のリキュールなどを使用することが決まっていますが、そのほかはバーテンダーの自由、毎年華やかなカクテルが並びます。
創作カクテルの内容は毎年のバーテンダー技能競技大会で発行される冊子に使用する酒の種類や分量まで細かく記載されています。
以下の動画は2012年、大39回全国バーテンダー技能競技大会で総合優勝された高知県の女性バーテンダー高橋直美さんの演技です。
彼女は翌年、世界大会でも優勝しています。
バーテンダーの動きの美しさ、そして現場の緊張感も伝わってくる映像です。
バーテンダーさんに全国大会の体験談と優勝経験をお聞きしました
実際にわたしの地元にて「全国バーテンダー技能競技大会」に出場経験のあるバーテンダーさんにお話を伺うことができました。
大分県臼杵市に店を構えて50年余り。
「パブ ブーケ」のバーテンダー、吉良雅子さん。
女性バーテンダーとして草分け的な存在の彼女は、通称「マコちゃん」の愛称で親しまれ、週末にはお客さんでいつも満席になる人気店です。大正時代に建てられた蔵を改装した店は、モダンでノスタルジックな雰囲気。
吉良さんは1999年から2001年までの全国大会において3年間連続入賞という記録を持っており、そのうち2001年には課題カクテル部門で優勝されています。
都道府県大会から全国への道のり
まずは県大会を突破しないと全国へは進めないですし(※)。予選の時点でもかなり厳しいから、自分の店が終わってから練習・・・という日々。
予選に出るバーテンダー同士で集まって、先輩に見てもらったりして。そうなると集まるのが午前2時とかで、終わるのは朝・・・ということもしょっちゅう。
今思い返せばやっぱり練習はかなりつらかったです。
でも最終的に全国大会で結果が出せたことがやっぱりうれしかったですね!
※各都道府県大会で優良な競技者がなかった場合、全国大会へ出場できる競技者無し、という結果もあるそうです。
全国大会の雰囲気
そして朝から1日中かけて競技が行われるので、夕方まで気が抜けない。
自分もそうだったけど、緊張感がすごくて・・・いざ会場に入ると、毎回雰囲気に圧倒されそうになりますね。
緊張からか、おかしなことを言い出すバーテンダーさんもいたりして。
そういえば、当時都会のバーテンダーさんはツーンとしててなんか感じ悪く見えたなぁ(笑)
やっぱりバーテンダー同士っていうのはライバルなんですね。
でもそんな気分も他のバーテンダーさんが慰めてくれたりして、出場するからにはお互いライバルなんだけど一緒に励ましあってもいける場所というか。
自分の人生の中で大会に出場したことは、辛いことも多かったけど得るものは大きかった!と思っています。
今ではとてもいい思い出です。
入賞経験者の作るカクテルを満喫!
さて、ここで図々しくもマコちゃんにカクテルを作ってください!とお願いしました。
せっかくですので、BARREL読者の皆様にお似合いのウイスキーベースのオリジナルカクテルをお願いします、と伝えたところ
色がとっても素敵でかわいらしい、ウイスキーベースのカクテルが登場しました!
スコッチウイスキー・ホワイトホースをベースに、クランベリージュースとトニックウォーターで仕上げています。
クランベリーとスコッチを合わすことなんて思いもつきませんでしたが、クランべりーの甘みがさっぱりしていてとってもおいしいカクテルです。
添えられたデコレーションもすっごいかわいくて思わず「すごい!」と声を上げてしまいました。
普段あまりウイスキー飲まない方、ウイスキー初心者の方にも非常におススメのカクテルです。
このカクテルの名前は?と聞いたら「『アモーレ』にしましょう」とマコちゃん。
見た目の雰囲気にも似合うネーミング!
そしてもう一品
こちらは少しお酒の強い方におススメ。
同じくスコッチウイスキーをベースにしていますがブルーキュラソーやコアントローなどをシェイクしています。
緑色のグラデーションが何とも美しいカクテルです。
このオリジナルカクテルの名前は「キングスバレー」。
どちらのカクテルも「BARRELを見ました!」で注文できるそうなので、お近くの方は是非。最後にお店の住所を載せておきます。
ちなみに、ブーケはパブなのでカラオケシステムも入っております。
こちらのセットにするとこんなにたくさんのカクテルが飲み放題です。しかも2500円。
入賞経験者のカクテルをこんなにリーズナブルに味わえる店はなかなかありません。
バーテンダーという仕事の奥深さに触れ・・・
実は筆者とバーテンダーマコちゃんは、子供が同じ小学校でPTAを通じて知り合った仲でもあります。
彼女は全国大会への挑戦を一区切りつけたところで出産、子育てをしながら現在も夜の店に立ち続けています。
全国大会への挑戦も、バーテンダーという仕事を続けながら子供を育てていくことも、周りのサポートがなければ成し得ることはできなかったと話してくれました。
女性バーテンダーの草分け的な存在でもある彼女に、今回大変貴重な体験談を伺うことができました。
全国バーテンダー技能競技大会は1972年から毎年開催されていますので、ほとんどの都道府県に受賞バーテンダーが在籍しています。
秀逸なカクテルを味わいに、ぜひお店を調べて訪ねてみてはいかがでしょうか。
大分県臼杵市二王座247
電話番号:0972-62-5904
ウイスキー、バーボンの品揃えが良く、マニアックなボトルも揃える。
バーカウンターには手前に柔らかいクッションが付いており、他にはない珍しい形をしています。
夜には常連さんでカウンターの席がいつも埋まります。