酒屋の棚にズラリと並んだウイスキー。
特に洋酒専門店に行くと、個性的なボトルが数多く陳列されており、タイポグラフィ好きのオーツカはニヤニヤしながらずっと眺めております。
そんな中、ひときわ目立つユニークなラベルデザインのボトル達があります。
今回ご紹介するのはボトラーズウイスキー。
BARRELはウイスキービギナーさんが多いメディアですが、ウイスキーを飲み進めていくと必ず目にすることになるのがこのボトラーズボトル。
今回はそんなボトラーズボトルについて、「シングルモルト通販 モルトヤマ」店主の下野孔明さんを交えて迫りたいと思います。
オフィシャルボトルとボトラーズボトルの違いとは
まずボトラーズとはなんぞや?という解説をします。
世に出回っているウイスキーにはオフィシャルボトルとボトラーズボトルという二種類のボトルが存在します。
オフィシャル(公式)ボトルはその名の通り、蒸溜所が元詰めしているボトルを指します。
製造元と販売元が同じということです。
マッカラン蒸溜所が詰めたマッカラン。
山崎蒸溜所が詰めた山崎というわけですね。
その蒸溜所が自信を持って市場に送り出す公式品ですので、最良のバランス、安定した供給量を誇ります。
蒸溜所の個性やこだわりを色濃く反映されたボトルと呼べるでしょう。
これがオフィシャルボトルで、OB(Official Bottle)と略されたりします。
ボトラーズボトルはウイスキー蒸溜所から原酒を樽ごと購入して、独自に瓶詰したボトルです。
独立系瓶詰業者(インディペンデント・ボトラーズ)と呼ばれる人たちが買い取った樽の原酒をさらに熟成させたり、樽を交換してみたり、ブレンドを繰り返したりしてオフィシャルにはない独自の味を追及しています。
公式では18年熟成までしかないのに、ボトラーズでは30年や40年熟成のものがあったりします。
「このウイスキーもっと寝かせたらどうなってしまうんだろう?」
の疑問と期待に応えてくれるのがボトラーズボトルというわけですね。
商品数は公式よりはるかに多いですが、供給量(一商品における数量)は少ないです。
ボトラーズブランドはスコットランドだけでなくベルギー、フランス、ドイツなどにも点在します。
最近ではパッケージがとっても可愛いものが出てきておりまして、オーツカもついついジャケ買いしてしまいます。
初心者がまず触れてほしいボトラーズブランド
よろしくお願いいたします。
「オフィシャルボトルは幾つか飲んだのでそろそろボトラーズに挑戦したい!なにから始めればいいですか?」
という趣旨の質問を個別でいただくことが多いです。
数あるボトラーズブランドの中で、ビギナーの方が最初に手に取るにはなにがおすすめでしょう?
できれば1万円以内で購入できるボトルを多数扱っているブランドが良いのですが。
まず試していただきたいのは、シグナトリーのアンチルフィルタードコレクションというシリーズです。
こちらのシリーズは、アンチルフィルタードコレクションということで、冷却濾過をせず、通常加水をしてアルコール度数46%でボトリングされているシリーズです。
例外的にプライベートブランドなどの場合に、カスクストレングスでリリースされるものもありますが、殆どのものが加水46%で、シングルカスク、もしくはシスターカスクの2~3樽程度をヴァッティングし、リリースしています。
その名の通りSISTER(姉妹)樽という意味で、番号が隣り合う環境下で熟成されたため、スペックも近く、味わいの系統も似ている傾向が多い樽です。
また、スペックが近く、ボトリングの年やアルコール度数だけが違うシスターカスクボトリングが多いのが特徴です。
シスターカスクでの味の違いや、ボトリングのタイミング(熟成年数)での味の違いを楽しむことも、ものによっては可能です。
モルトウイスキーの価格上昇が著しい現状でも、他のボトラーズに比べると値ごろ感があるものが多いので、初心者の方でボトラーズを試してみたい方は、まず、このシグナトリーのアンチルフィルタードコレクションをお試しいただければと思います。
価格帯がお財布に優しいです。
もちろんボトラーズのボトルなのですが、半ばオフィシャルボトルのような位置づけのスペックの物が多く、グレンリベット、スキャパ、ミルトンダフ、ロングモーン、リンクウッド、モートラック、ストラスアイラなどの蒸溜所がラインナップされています。
オフィシャルボトルに香味が近いものがあれば、少し違ったアプローチのものもあります。
また、オフィシャルボトルがあまり出回っていない蒸溜所や、比較的入手しづらい蒸溜所のスタンダードスペックがラインナップされている点も魅力的です。
1930年代~1950年代あたりの樽を未だに所持しているという話も聞きますし、流石ボトラーズのパイオニアというべき存在です。
ボトラーズの飲み進め方
おすすめなどがあれば教えてください。
ですが闇雲に色々なボトラーズに手を出すことは、自分自身の好みとのミスマッチを発生させてしまう可能性が高いので、それはオススメしません。
ですので、できるだけ自分が飲んだことのあるボトラーズのボトルや、それに近いスペックのボトルを探すことが比較的安全と言えます。
シングルモルトを専門的に扱う酒屋さんに、自分の好みや飲んだ物の経験を適切に伝えて、オススメして頂き、いくつか試してみるのが良いと思います。
また、都心には、試飲して購入できる酒屋さんもありますので、そういうところで試飲してから、ボトルを購入するという方法もあります。
下野さんもメルマガやブログでテイスティングノートを公開してます。
特別おすすめなものは「店主の太鼓判」としておすすめしていますが、太鼓判に設定する条件とかはありますか?
抑えておきたいボトラーズブランド
業界でメジャーなボトラーズブランドをいくつか選抜して教えてください。
ザ・ウイスキーエージェンシー
ドイツのボトラーズで、数年前までは、30数年から40年熟成くらいの長期熟成の物を比較的多くリリースしていました。
一昔前の、ダンカンテイラーのピアレスコレクション(現ディメンションズ)の長期熟成の物と香味のベクトルが近いものが多く、非常に華やかな香り立ちの物が多かったように思います。
また、他のボトラーズに樽の提供もしているようです。
エリクサーディスティラーズ
大手ウイスキー商のザ・ウイスキーエクスチェンジが営むボトラーズで、スペシャリティドリンクスという名称が変わりました。
様々な価格帯の多様なシリーズがありますが、全般的にクオリティが高い印象で、国内での人気も高く、割りと短期間で完売してしまう商品が多いです。
ダグラスレインとハンターレイン
元々、兄弟で運営するダグラスレインという一つの会社でしたが、ダグラスレインとハンターレインに分社されて、それぞれ、価格のレンジごとにシリーズを作っており、両者でスペック的に近いリリースもあります。
また、両者ともタリスカー蒸溜所との関係が深く、ボトラーズとしては珍しい”若いタリスカー”をしばしばリリースしています。
特にハンターレインは、ラフロイグ蒸溜所と特別な繋がりがあるようです。
またハンターレインは、アイラ島にアードナホー蒸溜所を建設し、自社で蒸溜所を所有しています。
キングスバリー
昔からバリエーション豊かなリリースと高い品質で人気のボトラーズです。
モルト高騰の現在も、シングルカスクのカスクストレングス(ゴールド)で、価格的に現実的な値段の商品をコンスタントにリリースしており、人気蒸溜所のリリースも比較的多い印象です。
ケイデンヘッド
代表的な老舗ボトラーズで、スプリングバンク蒸溜所と同じ資本のボトラーズです。
昨今の価格高騰の中で、最もコストパフォーマンスの高いリリースが多いボトラーズといっても過言でないほど。
ダンカンテイラーに勤めていたマークワット氏が、ケイデンヘッドで移ってから、黒ケイデン、金ケイデンというシリーズで精力的にリリースをされており、人気も高いです。
ゴードン&マクファイル(G&M)
こちらも代表的な老舗ボトラーズで、多くの蒸溜所と強いコネクションを持ち、オフィシャルのスタンダードクラスに相当するレンジから、他のボトラーズでは、あまりストックがないであろうというレベルの超有名蒸溜所の長期熟成の原酒も今なお豊富にストックしています。
ボトラーズの中でも加水した物のリリースが比較的多いのですが、日本向けの商品やPBなどでは、エクスクルーシヴラベルやリザーヴラベルで、シングルカスクのカスクストレングスのものもリリースされています。
ザ・ウイスキーフープ
日本で生まれた、会員制の愛好家組織のボトラーズです。
モルトに精通された有名バーテンダーの方々が中心となり、樽を厳選してボトリングをし、会員に頒布しています。
幹事やメンバーは、スコットランドの蒸溜所やボトラーズにも赴き、話題をさらうようなハイクオリティのボトリングや、世界でもあまり例がない蒸溜所のオフィシャルプライベートボトルのリリースもされています。
通常、会員で無い方は購入できないのですが、一部ボトルは一般の方に販売されたり、一部の取引のある酒屋でも販売されたりする場合があります。
新進気鋭。注目のボトラーズブランド
おすすめがあれば教えてください。
3つほど選抜してみました。
アスタモリス
ベルギーの比較的新しいボトラーズで、代表のバート氏自身が、モルトのマニアであったということもあり、独自の高い目利きがあります。
商品リリースの際には、それぞれのウイスキーを適切だと思われる度数まで加水をしてから市場に出すという独自のこだわりがあります。
もちろん、カスクストレングスでのリリースもありますが、加水されているリリースの方が圧倒的に多いように思います。
味わいとしては、蒸溜所やスペックを問わず、全体的に優しく穏やかで、ほんのりフルーティなタイプが多く、その方向性は一貫しています。
また、スモーキーなタイプやシェリー樽での熟成のものは比較的少ないです。
ザ・ウイスキーファインド
台湾の比較的新しいボトラーズで、代表のオーディン氏独自のコネクションで、優良な樽を複数ストックしています。
特に目黒のBARザ・マッシュタン鈴木氏とのコラボレーションボトルで、一気に知名度と人気が高まり、精力的なリリースを続けています。
ラベルも、台湾らしいユニークで華やかな物が多く、味わいも良いので、今後さらに注目を集めていくと思います。
ドーノッホ(トンプソンブラザーズ)
スコットランドのドーノッホ・キャッスルホテルの、トンプソンブラザーズが営むボトラーズで、現在は、ジンの製造を行っており、日本でも流通しています。
兄弟でのウイスキー製造販売を目指していますが、今は、ボトラーズとして、コツコツとリリースを続けており、国内でも定評があり、密かに注目を集めているボトラーズの1つだと思います。
ボトラーズ間の価格差はどうして?
最近これが顕著になってきていると思います。ビギナーさんも疑問に思う方もいると思うので分かる範囲でお答えいただけますでしょうか?
ただ、場合によっては、複数の国を経由して輸入されることによって、輸送費や関税などのコストが多く発生するということがありえます。
また、ある程度、自社の審美眼とブランド力に自信をもっており、それで強気の価格設定をされている場合もあると思われます。
これからのボトラーズについて
これからボトラーズブランドがどうなっていくかなど、業界への危惧や期待はありますか?
また、それにより、大手ボトラーズが独自で蒸溜所を持つようになっている流れは、極めて自然なことだと思っており、今後もボトラーズ資本の蒸溜所が建設されることと思います。
また、蒸溜所によっては、ボトラーズに原酒を売らないようになっている蒸溜所もあると聞いていますので、特定の蒸溜所が、ボトラーズからリリースされることがどんどん減ったり、価格が上がったりということもあると思います。
価格が高騰するのも無理はないと思います。
しかしこの逆境はクリエイティブを生んでいる側面もあると思っており、新しい工夫を考え出すこと、切磋琢磨することで各ブランドの発展に繋がるといいですね。
ボトラーズごとの傾向や特徴は確かにありますが、どのボトラーズだからどうと決めつけるのではなく、基本的には、先入観をできるだけ持たないようにして、1本1本に向き合って行きたいと考えています。
数あるボトラーズブランドを楽しく飲み進めましょう
下野さんのおかげで、初心者の方がボトラーズを知る良い機会になったかと思います。
ボトラーズの良いところはオフィシャルにない長熟ボトルを楽しめるところですが、いきなりとてつもない価格帯の、すごい複雑な味のものに挑戦するのではなく、少しずつ舌を慣らして美味しく楽しくオフィシャルとの違いを楽しんでもらいたいですね。
そっちのほうがお財布にも健全ですし(笑)
とにかく、まずは、オフィシャルを飲んで、理解をし、その上で、
ボトラーズのものは、
自分の好みに合う・合わないということは、
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ボトラーズのシングルカスクのカスクストレングスものや、オフィシャルボトルの中でも、比較的限定生産の物を中心にお取り扱いしています。
また、私、店主 下野の独自のテイスティングノートを掲載している商品もありますので、そちらも、参考になさって頂ければと思います。
人気商品は、即完売してしまうことが多いため、メールマガジンへのご登録がオススメです。
みなさんも下野さんと一緒にボトラーズの面白さを体験しましょう。
いつもモルトヤマのメルマガの導入部でひと笑いさせていただいております。
今回はビギナー向けボトラーズ解説の記事と銘打っていますので色々聞かせてください。