日本でも愛好家の中では好評だったアイルランドのウォーターフォード蒸溜所ですが、なんと資金調達がうまくいかずに破産手続きに入ることが報じられました。
この発表は、ウイスキー業界に衝撃を与えた一方で、新興蒸溜所が直面する課題の厳しさを浮き彫りにしています。
ウォーターフォード蒸溜所の背景と破産の経緯
ウォーターフォード蒸溜所は、スコットランドの「ブルックラディ」蒸溜所を復活させたことで知られるマーク・レイニア氏が2015年に創設しました。
ディアジオの旧ビール工場を買収し、独自の「テロワール(terroir)」を強調したウイスキーづくりに取り組んでいました。
ブルックラディでもおなじみのテロワールの概念は、ワイン業界で使われる用語で、土壌や気候などが原料に与える影響を重視する言葉で、土地の個性を表現する製法を行っていました。
しかし、最近の会計報告によれば、2022年の売上は300万ユーロにとどまり、前年比で30万ユーロ減少。
累積損失は770万ユーロに達し、持続可能な経営が難しい状況に陥っていました。
主要な貸し手であるHSBC銀行とともに再建計画を模索しましたが、資金確保に至らず、管財人としてインターパス・アドバイザリーが任命されました。
管財人は今後、蒸溜所の買い手を探すか、ウイスキー在庫や施設の売却を検討する見通しです。レイニア氏は「これ以上に適切な言葉を見つけることは難しい。チーム全員の努力に感謝しており、彼らを失望させてしまったことが非常に悔しい」とコメントしました。
マックミラ蒸溜所のケース
ウォーターフォード蒸溜所の破産は、スウェーデンのマックミラ蒸溜所が直面した経営危機を思い起こさせます。
マックミラは2024年8月に破産申請を行いましたが、その後、投資家の支援を受けて再建を果たしました。
元取締役のレナート・ヒーロー氏と投資会社No.1キャピタルABが買収を主導。新しい体制の下、ブランドの再生を目指す計画が進められています。
マックミラはスウェーデン産の原料を用いたユニークなウイスキーづくりで知られ、その特徴が新体制下でも重要な要素となるでしょう。
新興蒸溜所の苦境と未来
ウォーターフォードやマックミラの事例は、新興蒸溜所が直面する課題を明確にしています。
特に、ウイスキーの熟成に要する長期間が、資金繰りのプレッシャーを生み出します。
市場に評価されるまでの間、持続可能な経営戦略を維持することが困難です。
それでも、地元の素材や独自の哲学を基盤としたウイスキーづくりが市場で注目される事例もあります。
マックミラのようにブランド独自のアイデンティティを活かした再建が成功すれば、ウォーターフォードにも希望があるかもしれません。
ウイスキー業界への影響
これらの事例は、現在のウイスキー業界がいかに競争が激しく、資金繰りが難しいかを表しています。
一方で、消費者の支持を得るための差別化や持続可能性を追求する動きが、未来の成功を握る鍵となるでしょう。
ウォーターフォード蒸溜所の今後の展開、そしてマックミラの再建がどのように進むのか、さらには日本の新興蒸留所はどうなるのか、愛好家の間で注目が集まっています。
マックミラもそうだけど、今後は蒸溜所が増えるより、破綻するニュースのほうが多くなりそうで心配です。