中国市場やインド市場など、新興国ウイスキーにどんどん投資しているペルノ・リカールですが、存在感を強化しているのがアメリカンウイスキー市場です。
フランスの大手飲料会社ペルノ・リカール(Pernod Ricard)は、アメリカンウイスキー市場での地位をさらに強固にするため、新たにNorth American Distillers(NADL)というグローバルブランド会社を設立しました。
この新会社は、ジェファーソンズ(Jefferson’s)、TX、ラビットホール(Rabbit Hole)、スムースアンブラー(Smooth Ambler)、スクルーボール(Skrewball)などのアメリカンウイスキーブランドの世界的なマーケティング戦略と生産を担当します。
NADLの設立と目的
NADLの設立は、ペルノ・リカールがこれまでにアメリカンウイスキー市場で行ってきた投資の、次なるフェーズを意味します。
ペルノ・リカールは、アイリッシュウイスキー部門としてアイリッシュ・ディスティラーズ社や、スコッチウイスキー部門としてシーバス・ブラザーズ社を有しています。NADLもこれと同様の体制で運営される予定です。
これにより、アメリカンウイスキーのブランド力と市場シェアを一層強化する狙いがあります。
ペルノの精鋭チームがジョイン
NADLのCEOには、ペルノ・リカールで23年以上の経験を持つリチャード・ブラック氏が任命されました。
ブラック氏は、シーバス・ブラザーズやマーテルのグローバルマーケティングディレクターを務めた経験があり、その豊富な知識とリーダーシップを活かしてNADLを率います。
彼は、「アメリカンウイスキーはダイナミックなスピリッツカテゴリーであり、私たちのポートフォリオは将来の成長の計り知れない可能性を示している」と述べています。
ブラック氏を支えるチームには、ペルノ・リカール北米オペレーション担当の現シニア・ヴァイス・プレジデント、ピエール・ジョンクール氏と、ラビットホールウイスキーの創業者であるカヴェ・ザマニアン氏が含まれます。彼らの専門知識と経験が、NADLの成功を支える重要な要素となるでしょう。
ジェファーソンズの新しいカーボンニュートラル蒸溜所
NADLの優先事項の一つは、ケンタッキー州に建設中のジェファーソンズの新しいカーボンニュートラル・バーボン蒸溜所の開設です。
このプロジェクトには約2億5,000万米ドルが投資され、持続可能なウイスキー生産を目指しています。
新しい蒸溜所は、ペルノ・リカールの持続可能性へのコミットメントを示す重要な施設となります。
アメリカンウイスキー市場の成長と輸出
アメリカンウイスキーの輸出は近年急増しており、2023年には全米スピリッツ輸出の63%を占めるまでに成長しました。
特にEUへの輸出は、2021年の4億3,900万ドルから2023年には7億500万ドルに増加し、その結果、EUへのアメリカンウイスキー輸出が全体の50%を占めることとなりました。
こうした輸出の増加は、EUが2022年1月にアメリカンウイスキーに対する25%の報復関税を停止したことが大きな要因です。
この措置により、アメリカからEUへのウイスキー輸出は61%増加しました。2023年12月、EUは鋼鉄とアルミニウムの争いにおけるアメリカンウイスキーに対する関税の停止を2025年3月31日まで15ヶ月間継続すると発表しました。
しかし、恒久的な解決策が得られない場合、EUはアメリカンウイスキーに対して以前の25%から50%に引き上げるとしています。
ペルノ・リカールの持続可能な取り組み
ペルノ・リカールはアメリカンウイスキーだけでなく、他の分野でも持続可能な取り組みを進めています。
今年6月には、日本のジン「季の美」のために新しいカーボンニュートラルな蒸溜所の建設に2500万ユーロを投資し、生産能力を5倍に拡大しました。