みなさん、ウイスキーガストロノミーを知っていますか?
ガストロノミーとは、料理やお酒などの食事全般を、文化や芸術のレベルで考えること。
「食事を文化や芸術の域まで高めたもの」という意味があるそうです。
今回はその「ウイスキーバージョン」を体験しに行ってまいりました。
舞台は、東京都南青山にある「Tokyo Whisky Library(トウキョウ ウイスキー ライブラリー)」。
ウイスキー愛好家には有名なお店で、壁面にずらりと並ぶウイスキーが圧巻のバーラウンジです。
その数約1300種類と、日本でもトップレベルの品揃え。
まるで異国の巨大図書館のような佇まいは、ウイスキー好きだけでなく、商談や記念日のお祝いにも使われているようです。
ウイスキーペアリングディナーの内容
Tokyo Whisky Libraryの「Gastronomique of Whisky ウイスキペアリングディナー」は、一日三組限定のスペシャルコース。
このディナーの構想は2年前からしていたようですが、満を持して、今年の4月からスタートされたようです。
企画からメニュー開発まで練りに練ってつくり上げた自信作で、料理6品、ウイスキー6杯のコースです。
これは、期待してしまいますな。
では早速レポートしていきましょう!
Amuse「彩-color-」
- 【食】花 蜂蜜 マスカルポーネ カラスミ
- 【飲】ザ・ゴールドロンズ(もしくはヘーゼルバーン10年)のハイボール ドライオレンジスモーク
一皿目から複雑なビジュアルのアミューズ。
クリーミーなマスカルポーネにハチミツ、そしてカラスミが削ってあります。上に散らした花はラベンダーかな。
はちみつのまろやかな甘さとチーズの酸味が、カラスミや花の塩味を引き立てています。かなり濃厚。
合わせるウイスキーは、ダグラスレインがリリースしているキャンベルタウンのブレンデッドモルト「ゴールドロンズ」のハイボール。(※この時はヘーゼルバーン10年も選択できたので、僕はヘーゼルバーンにしましたが、在庫限りなようです。)
キャンベルタウンらしい塩辛さのあるハイボールがマッチしています。
薄っすら感じるドライオレンジもよい。
同系統の味わいのマリアージュで、季節柄、初手にはピッタリのイメージでした。
1st Dish「温故知新-Old and New-」
- 【食】本鮪 クスクス いぶりがっこ
- 【飲】オリジナルブレンドニッカウイスキーの水割り オークエイジング
二品目は本マグロのタルタル。これが地味にすごい。クスクスやいぶりがっこ、とびっこなどがギッシリ入っていて、食感が非常に楽しい逸品。
合わせるウイスキーは、オリジナルブレンドのニッカウイスキー水割り。
余市や宮城峡を、Tokyo Whisky Library独自の割合でブレンド。さらにミニオーク樽で短熟を施しています。しかもこれを、前割りしたというこだわりの品で、非常にまろやか。
旨みビターズを数滴ONするスタイルで提供されます。
改めてこれは、うまい。ずるいくらいうまい。
上部が魚醤のジュレで固めてあるようで、これが「旨味ビターズ入り前割ウイスキー」と抜群の相性を見せます。
2nd Dish「調和-Harmony-」
- 【食】北海道産鴨 アスパラガス 薫香
- 【飲】アモンティリャードレブヒート タリスカーフロート
三品目はスモークが立ち込める、ガストロノミーっぽい演出の一品。
しっかりした肉感の鴨に、ホワイトバルサミコソースをあしらっています。ほどよくスモーキーで、脂身の甘みと、酸のコントラストがよい。
合わせるのはレブヒート。シェリー酒をエルダーフラワートニックで割っています。ここに「タリスカーディスティラーズエディション」をフロート。ディスティラーズエディションは、アモロソカスクで追熟してあるので、シェリーとは小気味よくマッチングします。
3rd Dish「伝統-Tradition-」
- 【食】“フィッシュ&チップス”
- 【飲】レイクス ザ・ワン ウイスキーカクテル
四品目はイギリスの郷土料理、“フィッシュ&チップス”。
サクサクふわふわ食感の白身魚のフリット、そして甘みの強いインカの目覚めのポテトフライはとってもスイートで香ばしい。
合わせるのはイングリッシュウイスキーの、「レイクス・ザ・ワン」。それのジンジャービア割、いわゆるスコッチバックです。ジンジャービアはかなり強めなので、レイクスである意味はあんまりないかもな。
ウイスキーのリッチな甘い余韻と共に、揚げ物のサクサクした食感と、タルタルの塩味が幸せ。芋の甘さとも合う。やはり揚げ物+スコッチバックは鉄板。
Main Dish「自然-Nature-」
- 【食】蝦夷鹿 皮付きヤングコーン アプリコット
- 【飲】ベンロマック オーガニック
メイン料理は蝦夷鹿です。下に引いてあるのは皮つきヤングコーン(前回までは自然薯だったようですが、季節に合わせて変更されるようです)。
アプリコットのジャムが添えてあり、甘みを変化させることができます。
合わせるウイスキーは「ベンロマック オーガニック」。
世界初のオーガニック認証シングルモルトウイスキーとして有名です。
この”オーガニック認証”というのは、取得するのがかなり難しいらしいですね。
トワイスアップでワインのように合わせます。
ジビエにも負けない、しっかり目の骨格を持つベンロマック。
ベンロマックはクリーミーな口当たりとペッパー感、コーヒーのような味わいを持っているので、それが鹿肉とアプリコットとマッチしています。
肉と赤ワインを合わせる華やかなマリアージュとは違い、肉の旨みをぎゅっと閉じ込めるような合わせ方。
一緒に行った森本さんはアラン17年リミテッドをチョイスしてました。ジビエ感に負けないシェリーの味わいもいい。ウイスキーおもしろーい。
Dessert「絢爛-Gorgeous-」
- 【食】チョコレートブリュレ カシスソルベ
- 【飲】ロイヤルブラックラ21年 オンザロック
コースの〆は、濃厚な甘さのチョコレートブリュレと、フルーティーな酸が魅力のカシスソルベ。
それを長期熟成品「ロイヤル・ブラックラ21年」で合わせます。
ブラックラは通常オン・ザ・ロックでの提供なのですが、ストレートも選べたのでストレートで。
「ロイヤル・ブラックラ21年」は高級シェリーであるオロロッソ/パロ・コルタド/ペドロヒメネスの3種類の樽でフィニッシュされた21年熟成のシングルモルトで、すもものようなリッチな果実感と、シェリー樽由来のナッツ、キャラメル、ブラックペッパーを感じます。
以前ロイヤル・ブラックラ12年のレポートもしましたが、ブラックラは、キャラメリゼしたナッツの味わいが強く、カシスソルベといい感じでした。チョコレートブリュレには、やや負けた印象。ロックのほうが合うかもな。
結論:シンプルに料理がおいしかった
食事の間中、味を分解してみたり、食べる順番を検討したり、非常にマニアックなディナータイムとなりました。
同伴した森本さんと、「俺ならアレを合わす」、「こっちのほうが合うんじゃないか」とキャッキャしているのはとても楽しい時間でした。
ガストロミ―ということでしたし、料理6品とのことだったので、軽食程度かと思っていたら、しっかりお腹もいっぱいになり、大満足のペアリング体験でした。
ちなみにウイスキー6杯で提供される量は120ml。逸品20mlの計算です。
この料理とウイスキーのクオリティで12,000円というのは、驚異的なコストパフォーマンスと言わざるをえません。
ウイスキーの料理のマリアージュを体感してみたい方や、ウイスキー好きな方とデートなどに利用するのももってこいだと思いました。
こちらもアイラクォーターカスクの特徴が綺麗に乗って、とても美味しかったです。ありがとうございました。
今回のペアリング体験は、蔵前にあるウイスキー愛好家のオアシス「きみどり」の森本さんと共に行って参りました。