国産クラフトウイスキー「イチローズモルト」を生産するベンチャーウイスキー(埼玉県秩父市)が、トウモロコシを含む「グレーンウイスキー」の蒸溜所を北海道に建設し、2025年春に製造を開始予定です。
苫小牧市や安平町にまたがる「苫小牧東部地域」の工業エリアに約6.6ヘクタールの敷地を確保し、年間約240万リットルの生産を目指すようです。
ベンチャーウイスキーは以前から北海道進出を検討
ベンチャーウイスキーは3〜4年前から北海道進出を検討しており、原材料の輸入や製品の輸出に港の近さが重要とされています。冷涼な気候と美しい水はもちろん、「グレーンはモルトウイスキーに比べて広い敷地が必要であることも北海道が選ばれた理由の一つです」とブランドアンバサダーの吉川由美氏は語ります。
蒸溜所には日本では珍しい「コフィースチル」や貯蔵庫が設置され、設備投資は数十億円規模になる見込みです。
来月5月から工事が開始される予定で、ウイスキーのボトリングを北海道工場で行うかどうかは今後決定される見込み。
この場所は苫小牧東部地域は新千歳空港から車で約15分と立地が良く、視察も容易です。
同地域を開発する苫東の辻泰弘社長は「クラフトウイスキーの先駆者が北海道に進出することで、ウイスキー製造に適した地域であることが証明され、地域ブランディングにも繋がる」と期待を示しています。
ベンチャーウイスキーは、これまで北海道産の「ミズナラ」の木を樽に利用しており、一般的なオーク樽よりも「香木のような風味が強くなる」(吉川氏)とされ、今後も継続的に調達します。また、道産トウモロコシを使ったウイスキー製造も検討されており、地元産品のPRにもつながる可能性があります。
ベンチャーウイスキーは「イチローズモルト」の製造を主力としながらも、他社のウイスキー製造をサポートするなどして、国内のクラフトウイスキーブームをリードしてきた存在です。
英国のウイスキー専門誌「ウイスキー・マガジン」が主催する品評会「ワールド・ウイスキー・アワード(WWW)2023」で「ブレンデッドウイスキー・リミテッドリリース」部門で世界最高賞を受賞するなど、国外での評価も高まっています。
4月18日に肥土伊知郎社長が秩父市役所を訪問した際に、北堀篤市長は「ウイスキーへのこだわりが世界に通じており、秩父の大きなブランドの一つになっている」と称賛しました。
今回の北海道での蒸留所建設プロジェクトは、ベンチャーウイスキーがさらなる成長を目指し、地域産品の活用や地域ブランディングに貢献することが期待されています。
また、北海道でのウイスキー製造が、日本のクラフトウイスキー業界全体にとっても新たな発展のきっかけとなることが期待されています。