前回の北梶さんとの「最新ウイスキー事情」対談でも話題になった原材料高騰問題。
スコットランドやアイルランドでも問題が噴出しています。
麦芽需要の増大&ウッドショック
世界的なウイスキーブームにより蒸溜所が乱立。
ウイスキー製造に必要な麦芽需要が増大しています。
麦芽商社も取引実績のある蒸溜所を優先するので、新興蒸溜所は仕込みが止まる可能性も出てきています。
そしてウッドショックによる木材不足、木材価格の高騰でウイスキー樽の確保も難しくなっています。
輸入材が不足→国産材を代用→国産材も不足という状況になるので、国内の樽づくりも難しくなってくるでしょう。
干ばつによる大麦価格の高騰
今年8月、英国政府はイングランドの複数の地域で干ばつが起きていると正式に宣言しました。
数か月に及ぶ記録的な少雨に加え、ここ7月後半からの数週間は異例の高温が続いていたとのこと。
イングランドで干ばつ宣言が出されたのは2018年以来。政府の環境当局は12日、イングランドは1935年以来、最も雨が少ない気象状況にあるとの報告書を公表しています。なお、フランスでも記録的な干ばつに見舞われており、大規模な山火事も起きている状況です。
ピートの需要ひっ迫
さらには、麦芽を乾燥させるために使用するピート(泥炭)の需給が逼迫しています。
ウクライナ危機による、異常なエネルギー価格の高騰で、スコットランドやアイルランドの家庭では燃料費を軽減しようとピートを代替燃料として使う動きが広がってきているのです。
特にこれから来る厳しい冬を前に、ピートの燃料需要が多くなっています。
英ディアジオ社や仏ペルノ・リカール社も、かなり厳しい経営状況となることを懸念しているとのこと。
なおサントリーではスコットランドの泥炭地や水源保全に向けた取り組みを去年から開始しています。
「アードモア蒸溜所」周辺の約15ヘクタール対象に保全活動を進めており、2040年までにサントリーグループで使用する泥炭の2倍の量を生み出すことができる泥炭地の保全を目指しているようです。
大手は既に手を打っていますが、クラフト蒸溜所は試練が続きますね。
4月にはクリスプ社のポートゴードンの大規模な火災などもあり、麦芽の需要はひっ迫し続けています。
それに加えて今度はピートとは。。。
原料や資材を自社で調達している蒸溜所以外は、相当な打撃になると思われます。
輸入ウイスキーは現在よりも確実に価格が上乗せされるので、ファンたちも衝撃に備えておいたほうが良さそうですね。