山梨県の富士五湖地域で唯一の酒蔵・井出醸造店。
日本酒「甲斐の開運」で知られるこの酒蔵が、ウイスキー製造に熱意を燃やしています。
井出醸造店の歴史は300年以上前の江戸時代にまで遡ります。
当時から味噌や醤油の醸造を専門としていた井出醸造店は、1850年頃に清酒の製造をスタート。じつに170年の歴史を持つ老舗の酒蔵です。
井出醸造店の酒造りの武器は清らかな富士山の伏流水と、標高850メートルの厳しい冬の寒さという気候。
寒いので発酵がゆっくり進み、雑味が少なく淡麗できれいだが、飲み飽きのしない酒に仕上がるそうです。
そんな井出醸造店がウイスキー造りを始めたきっかけは、冬の期間に岩手から招いていた杜氏の存在にありました。
第21代当主の井出與五右衛門氏は「酒造りの技術は自社で磨き上げ、継承していくべき」とのこだわりから外部の杜氏を招くことを止めました。
すると今度は繁忙期と閑散期の落差が問題になったのです。
秋に収穫した新米を使って日本酒を冬にかけて仕込み春先には終わる、というのが清酒造りのサイクル。「夏場に新しいチャレンジはできないか」と考えた結果がウイスキーづくりだったそうです。
日本酒は世界中の酒の中でも、温度管理や糖化技術などを駆使した最も難しいつくり方であり、「この技術があるならウイスキーづくりは可能」と社長自らが乗り出した決断でした。
新たに生まれた蒸溜所は「富士北麓蒸留所」と名付けられました。
ウイスキーは3年間の熟成が欠かせないため、モルトタイプなどの本格的な販売は来年以降となるそうですが、本数限定で先行販売したブレンドウイスキーは完売するなど好調です。
繊細な酒造りの技術がウイスキー造りを支え、また清酒の仕上がりにも磨きがかかったそうです。
オンラインショップでは、富士北麓ハイボールとグレーンモルトウイスキー「大樹海」を販売中です。