グレンエルギンの種類と味わい
グレンエルギン 12年
12年もののグレンエルギン。オフィシャルのフラッグシップボトルとなります。
香りはジンジャーシロップとべっこう飴。洋ナシ、プラムなどのフルーティさ、ハチミツの甘やかさ、奥にハーブも潜みます。
飲み口はスムースで、ボディはやや厚みがあるミディアム。
モルトの甘さと香ばしさ、蜂蜜、洋梨のタルト、ジンジャーシロップ、クッキー、プラム後半にスパイシーさが訪れ飽きさせない複雑さを表現しています。
これぞスペイサイドの隠れた美酒といったところでしょう。
派手さはありませんが、いつ飲んでも美味しく頂ける安定感のあるボトルです。
グレンエルギン 16年
一時期愛好家には人気だった16年もののグレンエルギン。
廃盤となりましたが、当時の値段で手に入れられた場合はラッキーです。
バーボン・バーレル樽による熟成のシングルカスク(カスクストレングス)で、香りは熟したベリー系の果物、麦芽ウエハース、カラメル、若干のハーブ、木酢。
味わいはベリージャム、蜂蜜、ウエハース、ドライプラム、ハニートースト、後半にカカオパウダーのビターが訪れ木酢系の余韻へと続きます。
力強くリッチな味わい、アルコールの刺激も無くスイスイ飲めてしまう、ある意味危険なボトルです。
噛み締めるように時間をかけてゆっくり味わいたい。
グレンエルギン 12年 花と動物シリーズ
こちらは2001年にディアジオ社からリリースされた花と動物シリーズのグレンエルギン12年。
過去のフラッグシップボトルで世にグレンエルギンの名を知らしめたボトルともいえます。
香りはバニラエッセンス、蜂蜜、ややエステリー、カラメル、ジンジャー。
味わいはバニラクリームを挟んだ麦芽ウエハース、タンニンの渋みの後にコーヒーキャンディ、オレンジピール、後半に若干のスモーキーさが感じられます。
現行の12年と比較するとジンジャー系のスパイシー感が無く、どっしりとして深みのある味わいに仕上がっています。
2001年~2002年の間だけの発売だったと思います。たまーにBarなどで見かける希少品です。
グレンエルギン 12年 Pure Highland Malt
こちらは英国70年代後半から80年代流通のピュアハイランドモルト表記のグレンエルギンです。
WHITE HORSE DISTILLERSとも表記があり、ホワイトホース全盛時代に余ったものがシングルモルトとしてリリースされていました。
現行品と打って変わってピーティでスモーキー。どっしりと腰を下ろした麦芽の味わいが、懐の深さを感じさせます。
こういった古典的な味わいはダルウィニーのオールド品とかにも共通項がありますね。
おすすめの飲み方・飲み進め方
最近のホワイトホースはこのグレンエルギンやクレイゲラキがメインですね。
やや若さのある、ハーバルな麦芽香と切り花のようなフレッシュさが特徴のウイスキーです。
意外とコクがありクリーミー、ピリッとしたショウガやトウガラシのようなスパイスもあります。加水するとソリッドな酒質がよくわかります。
おすすめの飲み方はストレート。冷やすと個性が飛ぶのでロックなどは向いていないかと。
上記でも書きましたが、ホワイトホース表記のオールドボトルは味の方向性がかなり異なります。
ピートが効いており、溌溂なイメージとは逆で、ぺったりとした甘さと強い麦芽のフレーバーがあります。
70年代流通当たりのグレンエルギン、ラガヴーリン、ホワイトホースあたりを飲み比べすると、当時のスタイルが見えてきます。
最近ではボトラーズからも長期熟成のグレンエルギンがたくさん登場しています。
トータルのバランス力が高いウイスキーですが、カスクストレングス仕様になると各フレーバーが単純にブーストされる気がするんですよね。
麦芽水飴ブーストとか、白い花ブーストとか、ザラメブーストとか、どこかのフレーバーが強烈に尖るイメージ。
グレンエルギンの発祥と歴史
どこで作られているのか?
グレンエルギン蒸溜所はA941沿い、ローゼス寄りのエルギン地区に建てられています。
グレンエルギンは1898年から1900年にかけて、グレンファークラスの元所長ウィリアム・シンプソンと地元の企業家ジェームズ・カールの共同出資によって創業されました。
設計は様々な蒸溜所を手掛けたてきたチャールズ・ドイグ氏が担当。
その後1930年にDCL社に渡り、現在はディアジオ社がオーナーとなっています。
グレンエルギンの歴史
1890年代、鉄道の発達とブドウネアブラムシ被害によるブランデー不足から、スコッチウィスキー業界は黄金期を迎えます。そのピークが1900年。
以降2度の世界大戦、アメリカの禁酒法時代、世界的不況などの影響によりスコッチ業界は半世紀以上もの間、低迷期を迎えることとなりました。
スペイサイドではグレンエルギン以降、1959年にトーモア蒸溜所ができるまで、ひとつも蒸溜所が建てられませんでした。
実際、スコッチ受難時代の引き金となったのは1899年、当時のウイスキー業界最大手「パティソンズ社」の倒産でした。
このとき建設中だったグレンエルギン蒸溜所はその余波をまともに受け、予定のプランを大幅に縮小して建てざるを得ませんでした。最大手であるパティソン社を取引先として相当あてにしていたのです。
そんな不況の渦中で創業したグレンエルギンは、1902年になんとか年に操業にこぎつけたものの5か月後にはあえなく倒産。
その後1936年にDCL社に渡り、蒸溜所の運営はグラスゴーにあるホワイトホース社があたることになります。
もともとグレンエルギンはホワイトホースの核を担う重要なモルト原酒で、蒸溜所の建物もそれを意識して白一色に塗られているほどでした。
蒸溜所側もホワイトホースのキーモルトであることを大々的に主張しており、過去のオフィシャルボトル「グレンエルギン12年」のラベルにはホワイトホースのトレードマークである白馬の絵が描かれ、さらにブランド名の上に大きく‘ホワイトホース‘という文字が記されていました(現在ラベルデザインは一新され、年数表記・白馬の絵は取り除かれています)。
というわけで、グレンエルギンはホワイトホースへの原酒提供をメインに運営されてきたのでシングルモルトとしてはほとんど市場に出回っていませんでした。
しかし2001年、ディアジオ社からリリースされた花と動物シリーズで12年物が発売され、立て続けに翌年2002年にヒドゥンモルトシリーズの1本として新たに12年物が登場。
ここでようやく世界中から注目されるようになります。
(花と動物は実は1年しか販売されていませんでした!)
2010年以降はウイスキーブームの再来によりボトラーズなどからも長期熟成のグレンエルギンが多くリリースされます。
甘さと辛さのバランスがとれているグレンエルギンは、今後ますます注目されることでしょう。
グレンエルギンの製法
グレンエルギンで使用される麦芽はノンピートのみ。
一回の仕込みに8.4tもの麦芽を使用します。
発酵槽はカラ松製のものが6基設置されており、仕込み水はリンクウッド蒸溜所と同じミルビュイズ湖付近の泉の水を利用しています。
ポットスチルはストレートヘッド型で
- 初溜…3基
- 再溜…3基
の計6基。
創業当初は初溜1基、再溜1基の合わせて2基しかありませんでしたが、1964年の改修で3倍の6基に増設されました。
容量は1基あたり7,000リットルと、スペイサイドでは小型の部類に属します。
冷却装置(コンデンサー)はラベルに描かれているとおり、木製のワームタブで、これが蒸溜所の自慢のアイテムとなっています。
1964年の改修で建物は新しくなりましたが、自慢の木製ワームタブは残され、現在も使用されています。(巨大な木製ワームタブは6基設置されています)
近年ラベルデザインが新しくなり、年数表記と白馬の絵は消えましたが、この木製の巨大なワームタブはそのまま描かれています。ちなみにラベルに描かれている鳥は蒸溜所付近によく出没するイワツバメで、白馬に代わり現在はこのイワツバメが蒸溜所のシンボルとなっているようです。
現在のスピリッツの年間生産量183万ℓとスコットランドでも中堅クラスの蒸溜所となります。
ざっくり概要と味の特徴
グレンエルギンはスコットランドのスペイサイドでつくられるシングルモルトウイスキーです。
シングルモルトで飲んでいる愛好家もチラホラ見かけますが、グレンエルギンといえば世界的に有名なブレンデッドウイスキー、ホワイトホースとの縁でしょう。
グレンエルギンはホワイトホースのキーモルトであることを初期から公表しており、「ホワイトホースグレンエルギン」というふたつのブランド名が混在したボトルもリリースしていました。
ソフトでスムース、おとなしい飲み口でウイスキー入門編にぴったり。
ハーブキャンディと麦芽飴、やさしいフレーバーで女性にも人気のブランドです。
現在ディアジオ社が蒸溜所を所有しており販売も同社によって行われています。
グレンエルギンとホワイトホースを飲みくらべ、ホワイトホースの中のグレンエルギンを探してみる…そんな飲み方も一興です。