アイランズモルトはどこでつくられる?
リゾートなんかでもよく聞く単語。
アイランド(island)は”島”という意味です。
その複数形がアイランズ(islands)。つまり島々ってことです。
この島々は、もともとハイランドの中に含まれていましたが、近年スペイサイド地方と同じように分類されました。
島はそれぞれ、オークニー島、ルイス島、スカイ島、マル島、ジュラ島、アラン島を指します。
地図的にはこんな感じ。
スコットランドの北西側を半分ぐるっとって感じですね。
現在、この6つの島に主な蒸溜所は7つ。それぞれの蒸溜所が個性あふれるウイスキーを作っており、さらに新しい蒸溜所を建設する動きもあります。
ページのラストには6種類の「アイランズ・モルト・ウイスキーを少しずつ体験できるウイスキーセット」をご用意。
ぜひお試しください。
味や香りの特徴は?
見ての通り海に囲まれた地域なので、海風にさらされた潮っぽい味のものばかりと思いきや、全然島っぽさを感じさせないウイスキーもあります。
なので一概に”こういう特徴がある”とは明言できません。
ただそれぞれ個体はとても特徴的なので、島の簡単な紹介と各蒸溜所のおすすめ銘柄の特徴を書いていきます。
オークニー諸島
70以上の大小様々な島で構成されるオークニー諸島は、人口2万人程度。
観光地としても有名で、写真のスタンディング・ストーンズ・オブ・ステネスをはじめ、リング・オブ・ブロッガー、スカラ・ブレイなどたくさんの世界遺産があります。(名前がいちいち神話っぽくてカッコいい!笑)
遺跡と野生動物の宝庫と言われており、その豊かな自然を一目見ようと近年はたくさんのツアーも組まれています。
アザラシや人魚をモチーフにした海の民話はここオークニー諸島が発祥のものがいくつもあります。
ハイランドパーク蒸溜所
風速60m以上もの風が吹きすさぶオークニー諸島最北端にあるハイランドパーク蒸溜所。
ここで作られる銘柄”ハイランドパーク”の特筆すべき点は“甘くてやさしい煙たさ”。
スモーキー&ハニーと称されるヘザーハニーの甘いピート香が特徴的です。
12年はとにかくコスパがよく、30代におすすめするウイスキーの記事でもとりあげました。ハイボールで食中酒にしても最高です。
しかしハイランドパークの本領は何と言っても18年でしょう。
作るのに最低106年はかかるというシェリーカスク(ワイン樽)で寝かされた18年物のバランスのよさは半端ではありません。
誕生日や記念日、プレゼントなんかに是非お試しいただきたい。
ハイランドパーク蒸溜所は多くの限定ボトルをリリースしており、名前も形も特徴的です。
北欧神話の神様の名前を使っていたりしてちょっとゲームっぽいですね。
限定ものはどれもお値段が高いので、バーで見かけたらハーフショットで飲む程度が良いでしょう。
ハイランドパークの特集記事も書いています↓
スキャパ蒸溜所
スキャパはノース語(ヴァイキング言語)で『ボート』を意味します。なのでボトルラベルにもボートが描かれてます。
現行品はスキャパスキレンというノンエイジもの。
オイリーでドライな口当たり。オレンジピール、ハニー、塩キャラメルを思わせる風味が印象的。
ノンエイジですが、ボディもあり、飲みごたえ十分。
ロック、ハイボールでもおいしくいただけて、とても人気のある銘柄です。
若年層、しかも女性のモルトファンが多い印象です。好きなウイスキーが「スキャパ」と言われるとなんとなく通な感じがしますね。
終売したものも人気が高く、気づいたら12年がなくなり、14年がなくなり、16年がなくなり…という感じです。
1994~2004年までの操業停止期間があったので、操業停止前の原酒は高値で取引されています。
スキャパの特集記事も書いています↓
ルイス島
スコットランドの西、アウター・ヘブリディーズに属する島。実はルイス島と呼ばれているのは島の上半分。
下半分はハリス島と呼ばれています。
島はつながっているのに不思議ですね。
このルイス島(およびハリス島)、日本でもちょっと前に流行った手袋の「ハリスツイード」発祥の地です。
この地域でとれる羊毛を昔ながらの製法で手織りした貴重な毛織物です。
写真のようなチェック柄の手袋見覚えはないでしょうか?
広い空と海のもと、ヘザーとピートに覆われ、美しい水が流れるウイスキーづくりに適した豊かな土地です。
アビンジャラク蒸溜所
2008年に出来たばかりの蒸溜所です。シングル・モルトとして発売したのは2011年なので最近ですね。
“アビンジャラク”はゲール語で『赤い河』を指し、ヴァイキングが役人を殺して川に投げ入れたなど結構こわーいエピソードがあるようです。
年間の生産量がたったの2~3万リットルということなので、スコットランド最小ですね。エドラダワー蒸溜所が最小かと思っていましたが、その半分以下くらいでしょうか。
当然日本に輸入される数は少なく、一瞬500mlのシングルカスクが発売されましたが、それっきり見かけていません。
今後ウルフバーン(2011年に北ハイランドに出来た蒸溜所)のようにたくさん輸入されるようになればレビューしたいと思います。
スカイ島
インナー・ヘブリディーズ諸島の最北に位置する島。
名前を見て「空島じゃん!」とかワンピース好きの方は言いそうですが、残念ながらスカイのスペルは【skye】。エネルは居ません。
ゲール語では【翼の島】と呼ばれます。
他にも【霧の島】【雲の島】などとも呼ばれているようです。
スコットランド屈指の観光地としても有名で、島の中心となるポートリーの町は、カラフルな建物が港沿いに並び、まるで絵本の中に迷い込んでしまったかのよう。
他にもエメラルド色に輝くフェアリープール(妖精のプール)と呼ばれる美しい川。
フェアリーグレン(妖精の谷)と呼ばれる渓谷。
本当におとぎ話に出てくるような景観が魅力の、現実離れした島です。
タリスカー蒸溜所
スカイ島唯一の蒸溜所で造られるタリスカーの特徴は”海の香りと爆発的な胡椒感”です。
実際に海や潮に似た香りがします。
少し懐かしい香りというか、、、子供の頃、潮干狩りした記憶を思い出します。
そして、黒コショウのようなスパイシーな味わいが魅力です。リアルな香辛料の味ってわけではないんですけど、後味がピリピリします。不思議です。
タリスカー10年は比較的リーズナブルですので、是非ハイボールで飲んでみてください。
アイラモルトのラフロイグと、このタリスカーのハイボールは僕のウイスキー観を確実に変化させました。
実に香り高く、美味い。
ウイスキーが好きでまだ飲んだことない方は試してみてください。
ハイランドパークもレベルが高かったですが、記念日などにタリスカー18年を飲んで欲しいですね。こちらはストレートがおすすめです。
タリスカーの特集記事も書いています↓
マル島
スコットランド西海岸の行政区アーガイル・アンド・ビュートに属する島で、人口は2,000人弱。
スコットランド本島からのアクセスが良く、夏のリゾート地としても有名です。
海岸線には幾つも難破船が沈んでおり、夏季はスキューバダイビングなどで島を訪れる観光客で賑わいます。なんかお宝とか眠ってるんですかね。ワクワクします。
デュアート城やトロセイ城などの歴史的な建造物や、アロスパークの滝などの観光地も人気があります。
このマル島は多くの映画にも登場しています。
トバモリー蒸溜所
トバモリー蒸溜所ではふたつの異なる銘柄”トバモリー”と”レダイグ”を展開しています。
トバモリーはノンピーテッドと呼ばれるピートを焚かない麦芽を用いたスコッチ。なので全然薬臭くないかと思いきや、うっすらピート香があります。
これは仕込み水によるものと言われています。
トバモリー10年はドライなタイプでスッキリフレッシュ。スムーズなのど越し。
後味が秀逸な印象で、バニラ香が鼻に抜けます。ちょいと玄人向けの商品でしょうか。
レダイグはトバモリーとは逆でガンガンピートを焚いたウイスキー。
強烈なヨードの香りと塩味、口当たりはオイルっぽいです。ショウガのようなスパイスも感じます。
トバモリーよりも個性が強く、わかりやすいです。ただアイラモルトの個性とは方向性が少し違うようなイメージです。ハイボールでも美味しい。
この両者、味ももちろんですが、特筆すべきは現行モデルのデザインセンス。
トバモリーは濃緑、レダイグは濃橙。
そのディープグリーンとディープオレンジの対照的なボトルに浮き出た「1798」のタイポグラフィは、このトバモリー蒸溜所が1798年に建設されたことを示しています。
ボトルもやや小ぶりですので、対でディスプレイすると可愛いです。
ジュラ島
アイラ・モルトで有名なアイラ島のすぐ隣にあるジュラ島。
“ジュラ”はゲール語で【鹿】の意味を指し、なんと人口よりも野生のアカシカの数が多い島です(人口は200名弱に対し、アカシカは5,000頭以上!)。
島の最大の居住地グレイグハウスは歩いて10分程度で横断できてしまう本当に小さな町ですが、ジュラ蒸溜所の他、ホテルやパブ、商店や協会など、すべての商業施設が集まっています。
島の南西には”ジュラの乳首”と言われるパップス・オブ・ジュラという山脈があります。
ジュラ蒸溜所
2010年に製造200周年を迎えたジュラ蒸溜所。とても歴史があります。
ノンピートとヘビーピートの2種類の麦芽を使った、2タイプのシングルモルトウイスキーを生産しています。
アイル・オブ・ジュラ10年の現行品はぽってりと可愛い丸みを帯びたボトル。ピートを焚かないタイプなので軽快でクリーン、フレッシュな印象です。
若草やセロリのような植物の香りと、ファーストフィルのバーボン樽特有のハチミツの匂い。
味もやわらかいですし、少しの塩辛さもアクセントとなって飲み飽きません。
ヘビーピートタイプはアイル・オブ・ジュラ スーパースティションという結構派手な名前です。
とてもスモーキーですが、ジュラらしい飲み口の滑らかさ、まろやかな後味をしっかり残している優秀な銘柄だと思います。
個人的にジュラは熟成期間が長いほどリーズナブルと感じるウイスキーだと思います。
アラン島
ひとくちにアラン島と言っても島は3つ存在していて、これを合わせてアラン諸島としています。
アラン諸島は観光業を主軸に農業や林業で栄えていますが、他にも「アラン・ブリュワリー:クラダック」でビールを製造したり、「アラン・アロマティクス」はイギリス中で販売されるトイレ用品を生産しています。
さらに、日本でも有名なので、聞いたことがあるかもしれませんが、アランセーター、アランニットと呼ばれる手編みのセーターが特産品。
このセーターは元々漁師達が防寒用に用いたセーターで、漁に使う網やロープ、浮きやカゴ、魚の骨やカモメなどをモチーフにした『アラン模様』が特徴的。
とっても可愛いセーターなので、日本のオサレな男女にもファンは多いと思います。
アラン蒸溜所
限定ボトルをしこたま出しているアラン蒸溜所。
実験的なリリースも多く様々なカスクフィニッシュを行っています。
とにかく万人受けするウイスキーで、
オーツカはウイスキービギナーにはマッカランよりアランモルト10年を勧めますね。
一昨年から自宅に10年を常備していますが、14年よりも好きです(笑)
なお、アランモルトにはマクリー・ムーアというヘビーピートなラインナップも存在しています。
このマクリー・ムーア、イチゴと食べるととても面白いマリアージュを魅せます。
イチゴの酸味とマクリー・ムーアが交じり合うと、口の中で劇的な変化があります。パイナップルとか桃とかでも美味しいんじゃないかなぁ。
ボトルにはアラン島の伝説に基づき、鎖でつながれた犬が描かれています。おすすめです。
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アイランズ・モルト・ウイスキーの飲み方
“島モノ”と言われるアイランズ・モルトは6つの島それぞれが素晴らしい観光地であり、蒸溜所ひとつひとつに個性があります。
あえて特徴をあげるならアイラ・モルトとはひと味違うピート香や島特有の塩気、スパイシーさでしょうか。
ノンピートのもの、ヘビーピートのものとラインナップを多用に揃えている蒸溜所も多いですね。
スペイサイド・モルトやアイラ・モルトほどメジャーではありませんが、多種多様な種類のボトルを市場に投下し、新風を吹かせていこうという気概を感じます。
個人的には、アラン、トバモリー、スキャパあたりが初心者にも飲みやすいかなと思います。
その後、ハイランドパーク→タリスカー→レダイグのようにピート香が強くスパイシーなものをセレクトしていき、一通りアイランズ・モルトを飲んだ後は熟成年数が高いものや、限定ボトルなどを試していくような流れがわかりやすいかなと思っています。
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