おすすめの飲み方・飲み進め方
近年、シングルモルトの生産量を一気に増やし、市場にもかなり出回ってきた印象のグレンゴイン。
グレンゴインってあまり注目されていないのですが、グレンアラヒーやアランと同じように人気になってもよいと思うくらいレベルの高い商品だと思っています。
食前~食中、そして食後まで、すべてこのグレンゴインのオフィシャルラインナップで賄えるなと感じるほどオールマイティなシングルモルトです。
ひとまずオフィシャルは10年、18年、21年を飲んでみると良いと思います。
10年はマイナスイオンたっぷりの森林で、フレッシュなりんごやカンロ飴を食べているような透明感のあるウイスキー。万能選手で家飲みにも最適です。
グレングラント好きなそこのアナタ、買いです。
競合ひしめくフラッグシップの18年は、丸くてリッチ。
他蒸留所ほど特徴はありませんが後半じんわりと広がるスパイスは特徴的で舌に柔らかな温もりを感じさせます。
21年は近年系のおいしいシェリー樽という感じで、そのバランスと円熟味は特筆すべきものがあります。グレンドロナックが好きな人は好きでしょう。
総じてコストパフォーマンスが高くまさに「隠れた佳酒」という言葉が似合います。
グレンゴインの発祥と歴史
どこで作られているのか?
グレンゴイン蒸溜所はグラスゴーから北へ20kmほど向かったキャンプシーの山中にあります。
概要でも触れましたがハイランドとローランドの境界線が敷地内を走っているという非常に珍しい立地条件のもと佇んでいます。
創業、というかグレンゴインが蒸溜所の正式な免許を取得した年は1833年。
そもそも周辺は鬱蒼とした森に囲まれており、昔から密造酒が盛んに造られていた地域なので、それ以前から蒸溜所は存在した可能性があります。
(記録によるとこの地域で少なくとも18の不法な蒸溜器が使用されていた形跡があるようです)
グレンゴインの「ゴイン」はゲール語で「野生の雁」という意味を持ち、ラベルにも描かれています。
決して大きくはない蒸溜所ですがデザイン性に富んだ建物はとても趣があり、マイケル・ジャクソン氏(ウイスキー評論家のほう)も名著モルト・ウイスキー・コンパニオンにて「最も訪れる価値のある美しい蒸溜所」と記しています。
グレンゴインの歴史
現在の建物は建築家ジョージ・コネルが設計をし、その後しばらくマクレラン家による家族経営が続きました。
蒸溜所名はもともとグレングインと名付けられており、その後バーンフット蒸溜所に改名。
1876年にグラスゴーのウイスキー商ラング・ブラザーズ社によって買収され、再びグレングインへと名前が戻されます。
現在のグレンゴインの表記になったのは1905年のことでした。
めっちゃややこしいですね。名称の流れを書くとどうやら
グレンゴイン→バーンフット→グレングイン→グレンゴイン
と変移したようです。
1965年にラング・ブラザーズ社がエドリントン傘下のロバートソン&バクスター・グループに蒸溜所が買収されると、設備の近代化と生産力拡大に向けた大規模な設備投資がなされ、ポットスチルが1基増設されました。
エドリントングループで堅調な経営が続くと思われましたが、2003年4月、ブレンダー兼ボトラーズであるイアン・マクロード社に蒸溜所本体と「グレンゴイン」と「ラングス」のブランド使用権を720万ポンドで売却し話題になります。
イアン・マクロード社はスコットランドで長年にわたりブレンドやボトリングを手掛けてきた老舗のウイスキー商で、この取引でウェアハウスにあった多くの熟成中の原酒も譲渡されました。
これまでグレンゴイン蒸溜所で造られたモルト原酒は、そのほとんどが「ラングス・シュープリーム」などのブレンデッドウイスキーに提供されておりシングルモルトとしてのリリースはほとんどありませんでした。
シングルモルトとしてのリリースが定着したのは1990年代になってからですが、数は決して多くはありませんでした。
しかし新オーナーとなったイアン・マクロード社はシングルモルトとしてのグレンゴインの生産量を倍増させます。
原酒のポテンシャルを見抜き、ブランド力を一気に高めようと奮闘しています。
生産量が倍増しても時間をかけた蒸溜スタイルやノンピートモルトの使用など、原料・製法を変えることなく伝統ある風味を守り続け、現在に至ります。
製造は引き続きイアン・マクロード社、日本での販売はアサヒビールが行っています。
グレンゴインの製法
グレンゴインの原料となる大麦は、以前はイングランド産のゴールデンプロミス種を使用していましたが現在はスコットランド産のオプティック種を使用しています。
麦芽は全てノンピートのものを使用。
仕込み水は蒸溜所北側、つまりハイランド側にあるグレンゴイン・バーンと呼ばれる水脈から採水しています。
セミラウター式のマッシュタンはステンレス製で容量は3.84トン。ここで毎週16回の糖化が行われます。
発酵槽はオレゴンパイン製で容量18,000Lのものが6槽あり、56時間かけて発酵。
ポットスチルは
- 初溜釜×1基(13,000L)
- 再溜釜×2基(各3,800L)
の計3基設置されており変則的な蒸溜スタイルとなっています。
ポットスチルはもともと2基でしたが1966~1967年にかけて行われた再整備計画で、3基めが加えられ現在の体制となりました。
3基ある蒸溜釜すべてに、銅との接触を増やす「ボイルボール」(首元の膨らみ)が取り付けられています。
スチルのラインアームは下向きで、これにより力強い風味が生まれるといわれています。
熟成庫は3段積みのダンネージ式が2棟あり、4,800本の樽を収容可能。
それとは別にラック式の貯蔵庫が3棟あり、ここではバット2,400本とホグスヘッド、バレルにすると約6,000本を収容することができます。
現在は年間で92万Lのスピリッツを精製しているようです。
グレンゴインの種類/ラインナップ
グレンゴイン 10年
10年もののグレンゴインのスタンダード品。
シェリー樽原酒30%、リフィルのバーボン樽原酒70%という割合で構成されています。
香りはオーク家具、フレッシュなリンゴ、スコーン、そしてナッツ。
味わいはやや甘くミディアムボディ、ジンジャーシロップ入りのアップルジュース、ブラウンシュガー中盤に硫黄、ウエハースの香ばしさ。
全体的にフレッシュで甘く優しい味わい、スムースな飲み口のボトルで食中にも利用できます。和菓子、洋菓子との相性も抜群に良いです。
伸びが良く、水割りもおいしい。普段飲みにも最適。
スルスルと入ってしまうので、飲みすぎ注意なボトルでもあります。
グレンゴイン12年
こちらは
- ファーストフィル・ヨーロピアンシェリー樽原酒20%
- ファーストフィル・アメリカンバーボン樽原酒20%
- リフィル樽原酒60%
とう構成で造られた12年もののグレンゴイン。
香りはココナッツやトフィーの中に赤リンゴ。フレッシュオレンジの柑橘感もありつつバニラクリームの芳香。
味わいは豊潤なリンゴ、メープルシロップの甘み、レーズン・プラムなどのドライフルーツ感、麦芽クッキーの香ばしさとシナモン、ジンジャーなどのスパイス。
バーボン樽とシェリー樽が絶妙なバランスで主張する、麦本来の味わいを楽しめる一本。
グレンゴイン15年
15年もののグレンゴインで、原酒構成は
- ファーストフィル・アメリカンバーボン樽原酒30%
- ファーストフィル・ヨーロピアンシェリー樽原酒20%
- リフィル樽原酒50%
という
香りはパインやマンゴーなどやや酸のある南国フルーツ、ベリーのドライフルーツからしっとりミルクキャラメル。
味わいはリンゴやバナナ・メロンなどのフレッシュ、ラムレーズン、ミルクチョコの濃厚な甘み、グローブやシナモンのスパイシーさ、後半にフワリとローズマリーなどハーブも感じます。
12年もののグレンゴインよりも円熟味が増し、グレンゴイン特有のリンゴっぽさをややミルキーな印象にした温かく風格のある一本。
終売になるという噂もあるのでお早めに。
グレンゴイン18年
こちらはホグスヘッドのバーボン樽原酒とシェリーカスクにて熟成を行った原酒を使用した18年もののグレンゴイン。
香りはバターを垂らした焼きリンゴ、熟したメロン、奥にひっそりとミント系のハーブ感。
味わいは最初はシロップに漬け込んだリンゴ、バタートースト、ナッツ、ジンジャースパイス、後半にカカオやダークチョコレート。
フルボディでリッチ。余韻も長くドライ。複雑な風味を持つ素晴らしき1本です。
肉料理との相性もよさそう。
麦たっぷりな食後酒を飲みたい!という場合にもおすすめできます。
グレンゴイン21年
こちらはファーストフィルのヨーロピアンシェリー樽で熟成を行なった原酒を100%使用した長熟のラインナップ。
21年という長き歳月をかけてシェリーカスクのみで熟成させた珠玉の1本です。
香りはヘーゼルナッツから濃厚なレーズン。ドライフルーツ、ドライプラム。うっすらとリコリス、ブラックベリー、なめし皮。
味わいはレーズン、ベリー、プラムなどのドライフルーツ、ジャム入りのスポンジケーキ、トフィー、グローブなどのスパイス、後半にタンニンの渋みも現れます。
目を閉じると脳裏に熟れた赤い果実が浮かんでくるようなシェリー全開の風味を纏ったボトル。
- 2013年 IWSC 金賞受賞
- 2014年 SWSC 金賞受賞
という受賞歴を持つ世界的にも評価の高いボトルで、近年でおいしいシェリー樽のウイスキーを飲みたいと思う時におすすめです。
グレンゴイン25年
シェリー樽熟成原酒100%で構成された、25年もののグレンゴインです。
同じ100%シェリー樽熟成の21年と比較しても明らかに格の違いを感じる素晴らしき1本です。
比較すると21年よりも風味が複雑で濃厚でかつナチュラルさのあるシェリーカスクの個性が極まっています。
香りはミックスベリージャム、プラム、ブラックチェリー、かりんとう、コーヒーキャンディ。
口に含むとボディは厚くとろみがあり、力強い口当り。
味わいは濃厚なベリー、カシス、中間にベイクドオレンジ、土っぽさ、ハーブやクローブなどのスパイス、淡く土っぽさ,心地よい渋味、完熟の柿、ジンジャーのスパイス感。
まさにリッチ&スウィート。
シェリー樽熟成ウイスキーの現行品の中でも、ハイエンドを担うにふさわしい見事な仕上がりのオフィシャルボトルです。
グレンゴイン カスクストレングス
こちらはカスクストレングスタイプのグレンゴイン。
やや若さはあれど濃厚なグレンゴインを飲みたい方におすすめです。
バッチ8の原酒構成はファーストフィルシェリー樽29%、ファーストフィルバーボン樽16%、リフィルオーク樽55%。バッチ7も30%がシェリー樽原酒だったので味わいにそこまで差異はないかなと思いました。
この蒸溜所の最大の特徴は、麦芽の乾燥に全くピートを焚きこまないところ。オークの香り、そしてたっぷりとシナモンを振りかけたアップルパイの香りがたまらない逸品。
味わいもキレイで、透明感のあるフルーツの果肉と、キャラメリゼバナナクレープ。
この価格帯でこの味わい。非常に使い勝手がよい万能品だと思います。初心者は10年を飲んでみて、気に入ったらいきなりカスクストレングスを買ってもいいかもです。
2012年に公開されカンヌ映画祭審査員賞を受賞した「天使の分け前」のロケ地としても有名なグレンゴイン。
甘やかな美酒を片手に映画鑑賞というのも素敵ですね。
ざっくり覚える!
グレンゴインはスコットランドのハイランド地方でつくられるシングルモルトウイスキーです。
しかしハイランドとローランドの境界線がちょうど蒸溜所内を通っているという珍しい蒸溜所で、どっちにするか揉めた蒸溜所でもあります。
1970年代まではローランドモルトとして販売されることもあったようですが、北側(ハイランド側)から仕込み水を引いていたため、現在はハイランドモルトとされています。
それほど大きくはありませんが風光明媚な蒸溜所で、ウイスキーを題材にした映画「天使の分け前」のロケ地としても使用されました。
ノンピート麦芽で仕込みを行い、熟成の3分の1をシェリー樽、残りをリフィル樽で行っています。
ラインナップはクリーンでなめらか、こと長熟品はバランスよく奥深い風味を宿しています。
昨今クオリティの高いシェリー樽が減ってきている中、とても健闘している蒸溜所と言えるでしょう。