おすすめの飲み方・飲み進め方
めちゃめちゃ味にバラつきがあって、評価もあまり高くなかったマイナーボトル「トバモリー」が息を吹き返したよ!
10年がデザインを一新し、3000円ちょっとでリリースされた際はそのレベルの高さに驚いたものです。
トバモリーでしか味わえないような、青く軽快な塩バニラ。地味ながらコツコツと一定のファンを獲得してきました。
12年はその系譜を受け継ぎ、しっかりとトバモリーらしさを残し円熟味を増しました。
飲み方のおすすめはストレート、ロック、ハイボールと万能です。
飲み口が軽く、その「しょっぱあまい」感覚についつい杯を進めてしまうことでしょう。お水もたくさん飲んでくださいね。
18年は12年の正統進化という感じでおいしいですが高いですね。そんなに大きい蒸溜所ではないので、やや価格帯が上がってきてしまっています。
グレンフィディックの18年くらいの価格だったら飛ぶように売れていたことでしょう。
個人的には12年を飲んでおいしかったら18年、20年と進みましょう。
溌溂さはないですが、オールドボトル10年などもBarでは置いているところも多いので試してみてください。
長熟ものは1972(32年熟成)などが有名で、評価が高いです。
2016年にはなんと42年物がリリースされています。
とんでもないお値段ですし、個人輸入になってしまうでしょうが、ファンとしては試してみたい!!
ボトラーズはオフィシャルと味わいがかなり異なるものも多いので、気を付けていただきたいブランドでもあります。
ネガティブな要素を拾ってしまうもの、無個性なもの存在するので、試飲した後買うのが良いでしょう。
トバモリーの発祥と歴史
どこでつくられているのか?
トバモリー蒸溜所があるマル島はスカイ島とジュラ島のちょうど中間地点にある大きな島。
蒸溜所はトバモリー漁港に面して建てられています。
マル島の西側には聖コロンバがキリスト教を布教させたアイオナ島があります。
修道院には歴代のスコットランド王の墓跡があるため、アイオナ島はスコットランド随一の巡礼の地として知られています。
アイオナ島へ向かうにはマル島を経由したルートしか存在しないため、観光客や巡礼客で賑わう島として知られています。
街の名前であるトバモリーとはゲール語で「メアリーの井戸」という意味を持ちます。
メアリーというのは聖メアリー、つまり聖母マリアのことかと思います。
トバモリー蒸留所の創業は古く1798年。スコットランドの中でも最も古い蒸溜所のひとつです。
はじめはビール醸造所として建てられ、その後間もなくウイスキー蒸溜所へと変えられました。(このあたりの経緯は来週更新予定の「レダイグ」にて紹介していきます)
トバモリーの歴史
創業者は当時海運業を営んでいたジョン・シンクレア氏。
彼はグラスゴーやリバプールに昆布を運び財を成した人物でした。
しかし蒸溜所は1837〜1878年まで稼働し、閉鎖。1890年にジョンホプキンス&カンパニーに売却されます。
1916年に当時の有力業者6社が結成した巨大組織DCL(Distillers Company Ltd.)へと吸収されます。
大企業に吸収され、ほっとしたのもつかの間、その後アメリカの禁酒法などの影響から需要が激減。1928年以降40年以上も閉鎖されてしまいます。
1972年に「Ledaig Distillery」として一瞬再稼働しますが、保管倉庫のスペース確保の諸問題などがあり、1975年から十数年再び閉鎖に追いやられます。
こう見ると設立後からほとんどの期間止まっていますね。
トバモリーの経営は茨の道で、幾度となくオーナーが入れ替わり、閉鎖・再稼働を繰り返してきましたが、1994年に現オーナーのバーン・スチュワート社が蒸溜所を買い取り、ようやく安定して製造を行えるようになりました。
ちなみに、トバモリーのウイスキーは、その昔タリスカーやジュラなどアイランズモルトを掛け合わせたヴァッテドモルトウイスキーでした。
当時のトバモリーは数多くの製造停止に加え、蒸溜所施設や熟成樽の経年劣化が激しく、味にばらつきがあったため、風味を安定化させるために他の蒸溜所の原酒をヴァッティングしていたのだとか。
しかしスチュワート社が所有してから大規模な改修・修繕工事が行われ10年を筆頭に熟成年数が表記されたボトルがリリースされるようになりました。
そのためヴァッテッド時代のものと現在のトバモリーでは風味が大きく異なります。
本当にかなり違うので、トバモリーファンはぜひこの風味の違いを感じてみて下さい。
トバモリーの製法
トバモリーに使われる大麦はノンピートの麦芽のみ。
スコットランド本土のあらゆる製麦所から取り寄せたものを使用しています。
したがって荒々しい潮っぽい風味がイメージされやすいアイランズ系モルトとは一線を画します。
糖化槽は4.5トンの容量があり1回で22,000ℓの麦汁を作り出すことができます。
糖化槽はオレゴンパイン製のものが4基あり、ポットスチルは初溜2基、再溜2基の系4基が設置されています。
仕込みに使われる水は「レダイグバーン」と呼ばれるミニッシュ湖のものと、そのすぐそばにある湖から流れ出たものを使用しています。
以前のオーナーが過去の熟成庫をアパートに改築して売却していたため、トバモリーには熟成庫がありません。さんざんだな、トバモリー。
熟成は同じスチュワート社が所有するアイラ島のブナハーブン蒸溜所の熟成庫を借りて原酒を寝かせています。
ただ、ごくごく僅かの樽のみトバモリー蒸溜所の一角で熟成させているそうです。
この限定樽、、、、気になりますねぇ。
昨今のトバモリー蒸留所からは「PORT PIPE FINISH」や「PX FINISH」など様々なカスクフィニッシュも数量限定でリリースするようになりました。
ジンも製造しており、販売から半年で「ワールド・ジン・アワード」にて受賞するなど、過去の閉鎖時代を挽回するかのような活躍を見せています。
トバモリーの種類/ラインナップ
トバモリー12年
バーボンカスクにて熟成を行った12年もののトバモリー。
2019年初頭にトバモリー10年に継ぐ新たなフラッグシップボトルとしてリリースされたボトルです。
香りは10年同様やや青臭さはあれど、フレッシュでフローラル。
10年よりもオレンジや赤リンゴのフレーバーが強いか。心地よいバニラに少しの薔薇、ウッドスパイス。
味わいはオレンジやアプリコットなどのリッチなフルーツ感、バニラクリーム、キャラメルなどの甘味、グローブやシナモンのスパイス感も同居さます。
フルーツとスパイス感、そして繊細な塩気がうまくまとまった1本です。
2019年にはThe Scotch Whisky Masters にて(The Spirits Business)銀賞を受賞しています。
トバモリー10年(旧ボトル)
トバモリーの10年もの。以前のスタンダードラインです。
まだ日本の通販サイトでも見かけますが、徐々に12年に切り替わっていっています。
香りはノンピーテッドのはずですが、ピートを感じる方もいます。
オールドボトルの項で後述しますが、日本人は潮や海のフレーバーもピートと捉える傾向にあるようです。
スコットランド人はグアヤコール(グアイアコール)という成分からくる焦げ臭をピートと感じるので、このような差が出るようです。
潮の香りにバニラやシトラス、ミントといったフレッシュでやや青臭いアロマ。うっすらとカカオ。
スムースなのど越しで、味わいはかなりドライ。
潮っぽさとヨード、ミカン、紅茶などの風味が押し寄せ、後半にはっさくの皮のようなビターが訪れます。
ロックやハイボールにすると爽快感やバニラの甘みが増して飲みやすくなります。
トバモリー18年
こちらはバーボンカスクにて熟成を行ったトバモリーの18年もの。
ドイツ市場向け商品となりますが日本にも少量ですが出回っています。
香りはハチミツの甘やかさと柑橘、パイナップルのフルーツ感、やや青臭いバナナ。ハネジューメロン。後半はウッディでフローラルなノートです。
味わいはトフィー、チョコレート、マジパン。
白桃とバニラアイスの甘みから中間にはアーモンドやウッドスパイス、ナッツの香ばしさ、後半は黒胡椒やミントなどのハーブ感を感じられます。
フィニッシュはドライで、トバモリーのハウススタイルがよく表れているボトルといえます。
蒸留所ではハンドフィルもあるとか、、、、!
トバモリー20年
こちらは主にシェリーカスクにて熟成を行ったトバモリーの20年もの。
18年同様、こちらもドイツ市場向けの商品となります。
香りはレーズン、イチジク、プラム、ベトナムコーヒー。
味わいはチョコレート、熟したプラムなどの甘み、ややブリニー、ジンジャーのスパイス感、バジルのハーブ、スコーンやスポンジケーキのふくよかな香ばしさ。
シェリーカスク由来のレーズン・イチジクなどの甘味とブリニーさが同居したバランスの良い1本です。
トバモリー23年
2020年にリリースされた商品で、蒸留所オフィシャルサイトから個人輸入も可能なボトルです。
バーボン樽で15年、その後、オロロソシェリーカスクで8年熟成させた、美しく深いローズゴールドのトバモリー。
香りからはあまり青臭い印象は感じられず、バニラと熟したオレンジが強い。シナモントーストにフルーツケーキ。カカオのビター。
口当たりはトロリとしており、スパイシーさが目立ち明らかなシェリー樽の影響を感じます。
ト塩キャラメルから流れ出るようなバニラ、アーモンドファッジ。砂糖をまぶしたドライオレンジ。
フィニッシュはトバモリーらしい塩味。バターシュガーのクレープ。シナモンとコリアンダーシード。
トバモリーはバーボン樽でしょ、からの脱却。最新トバモリーの方向性を占う可能ような一本。
オールドボトル、ブレンデッド
日本にトバモリーが輸入されたのは1983年から。
セラミックデキャンタの商品も含め、10年表記のないものは恐らく8年ものくらいではないでしょうか。
1989年以前のトバモリーは、”The Malt Scotch Whisky”と印字されていて、中身は、タリスカー、ジュラとのバッテドモルトではないかとも言われています。トバモリーにピートを感じたという人はこの頃のトバモリーを飲んでいたのかもしれませんね。
ちなみに、トバモリーの生産者が過去に「ノンピートなのにピートを感じるのはなぜなのか??」という質問に対し
「トバモリーはノンピートで、私達はピートを感じない。私達とピートの捉え方が違うのかも知れない。あなたは非常に繊細でイマジネーションのある素晴らしいテイスターなのですね。」
と回答したことがあります。
日本人は潮や海のフレーバーもピートと捉える傾向にあるように思いますが、スコットランド人は具体的にはグアヤコール(グアイアコール)という成分からくる焦げ臭をピートと感じるそうです。
トバモリーは潮の香りはありますが、焦げは確かにありません。
日本人とスコットランド人のイメージするピートの香りは違うのかも知れません。
スコットランドの方からしてみると、潮っぽさ=ピートというわけではないのですね。
上記を見てもわかるように、トバモリーはボトルデザインがとても美しく、特にタイポグラフィが秀逸です。
ボトルのエンボスデザインも含め、そのバランスの良さ、すばらしい。
オールドボトルに至っては、ぽってりとしたフォルムとレトロフォント。かすれてしまったシルクスクリーン印刷の文字は、ヴィンテージインテリア好きの心に深々と刺さります。
現行ボトルは背丈もこじんまりとしていておさまりがいいので、棚上部にレダイグと対にしてディスプレイしてあげましょう!
ざっくり覚える!
トバモリーはスコットランドのマル島にてつくられるシングルモルトウイスキーです。
トバモリー蒸溜所は創立1798年とかなり歴史が深いのですが、閉鎖している期間がとっても長く、日の目を浴びたのはここ数十年なのです。
スコットランドの島々でつくられる、いわゆる「アイランズモルト」は塩気やスモーク香が特徴的なのですが、トバモリーはノンピートの麦芽を使用しているため、島モノのイメージとはやや異なるすんなりとした飲み心地が信条です。
塩気はありますが、フルーティで爽快軽快な風味を持ちます。
同じトバモリー蒸溜所からはへビリーピートの「レダイグ」もリリースされているので、飲み比べながら楽しむのも一興でしょう。